書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

取らせ合駒に見えてきた

今年の全国大会には斎藤仁士さんが参加されていたらしい。

斎藤仁士といえば史上最高の香先香歩が有名だが

1976年2月 斎藤仁士氏作

氏の作品を見返していて気になったのはこの作品だ。

1995年9月 斎藤仁士氏作

初手59香に普通に55歩合としてみよう。

以下長いが64龍、45玉、44龍、36玉、35龍、27玉、29香、同と、37龍、16玉、17龍、25玉、15龍、34玉、35龍、43玉

ここで本当は55桂が一番早いけどとりあえず無視して44龍、32玉、42龍、同玉、33銀打、41玉としてみると(最後の41玉も本当は43玉の方が長いけど)

42歩が打てるので詰む。

2手目に56歩合としても58歩合としてもほとんど同じ結果だ。では57歩合なら?

先ほどと同様に64龍、45玉、55龍、36玉、35龍、27玉、29香、同と、37龍、16玉、17龍、25玉、15龍と追い回すが

先ほどとは違いここで36玉とする手がある。以下、35龍、47玉、37龍、56玉、57龍で57の歩を取らせることができて(その副作用で47桂も消えるのが惜しい)

45玉、55龍、34玉、35龍、43玉、44龍、32玉、42龍、同玉、33銀打、41玉となった局面、57歩を取らせた効果で歩が打てなくなっている!

これを今の私たちは「取らせ合駒」と呼んでいるような気がする。

作意は以下52香成、同玉、62角成、41玉、63馬、52金、同馬、同玉、53歩、同玉、44金、52玉、53歩、41玉、42銀成、同玉、33銀成、51玉、52歩成、同玉、43金、51玉、42金までの53手詰。

2016年詰将棋全国大会参加記(3)

二次会がお開きになったところで、もう片方のグループに合流しようと思った。なにせ向こうには宿をとっていない久保さんや鈴川さん、廣瀬さんがいるので、どうせ朝まで飲むに決まっているのだ。

今年の全国大会には地元の大学生である長谷川さんと藤井さんが参加されていた。この2人と若手作家を交流させるのが自分に課せられた使命だと勝手に思い込んでいた私は、彼らも三次会に連れていこうと思い、この後どうするのか聞いてみたが、返ってきたのは「そろそろ終電が」という弱気な言葉だった。困った。

ところで倉敷には夜の2時間しかやってないラーメン屋がある。

二次会と三次会のあいだに必ずこの店に行こうと思っていた私が「夜の2時間しかやってないラーメン屋があるんですよ!」と高らかに宣言したところ、ありがたいことに原田さんと児島さんが一緒に行くと言い出してくれた。おまけに大学生の2人も「児島さんが行くなら」みたいな感じでついてきてくれた。しめしめである。

ラーメンは普通の味だった。

食べ終えたところで原田さんと児島さんはホテルに戻り、残った自分たち3人は馬屋原さんに連絡をとって若手作家チームと合流した。三次会では馬屋原さんと鈴川さんに「連続合の意味付けの違いに興味は無い」みたいなことを言われ、広瀬さんに「意味付けこそ大事ですよね!」と話したりした(記憶が曖昧なので正確には違うかも)

一応、終電を逃させた手前、店の閉店時間である午前3時までは同席したものの、翌日に博多旅行を控えていた自分はついに残ったメンバーをカラオケ屋に押し込んでお先に失礼した。その後の顛末は知らないが、Twitterを見るに皆生きて帰ったようだった。

2016年詰将棋全国大会参加記(2)

握り詰めに詰め上がり「⊥」こんな形があったので、筒井さんに「ちんこ詰めに投票したんですか?」と聞いたら、案の定その理由で投票しようかと思っていたようだった。(結局投票はしてないらしいけど)

参加者コメントのときに女流棋士の山根ことみさんが「詰将棋を解くのが好き」とおっしゃっていたので、さっそく懇親会でデパートへの解答とゲスト解説を依頼してみたがにべもない返事であった。お母様も一緒に参加されていたので「お母さんはどうですか」と言ってみたがやはり芳しくなかった。

その後例年通りに筒井さんがきぐるみを着はじめたので、また山根さんのところに行って「きぐるみ着ませんか」と言ったけどこれもだめ。でもなぜか松山将棋センターの児島さんが着てくださることになった。久保さんや山路さん、水上編集長も入れて記念撮影をしたが、これをネットに掲載していいのかは不明である。

二次会は大きく二手に分かれているようだった。片方は始まりが遅いのと、いつものメンバーという気配だったので、趣向を変えて大会スタッフや中国四国地方のひとが多く参加してそうなグループに向かってみた。そこで竹村孔明さんに見せてもらった作品がこちら。

2014年6月 竹村孔明氏作

29桂、同と、28銀、同玉、46馬、18玉、36馬、28玉、
37馬、18玉、27銀、17玉、26銀、18玉、27馬、19玉、
18馬、同玉、17龍、
まで19手詰

取らず手筋の29桂〜28銀は一目思いつく手順。しかしその後ミニ馬鋸で近づく発想がなく、解くのに苦労した。「詰四会で発表したあの短編すごくいいですよね。並べてください」と話を振られて竹村さんが並べたのがこの図だったが、並べてほしかったのは別の図だったらしい。上図は作者お気に入りの作品とのこと。別の図の方は短編名作選に収録されるとかされないとか。

倉敷の夜はまだまだ続く。

2016年詰将棋全国大会参加記

おぼつかない操作の柿木将棋で作意をなぞるだけの解説。もし自分が2年後の東京大会で幹事をやることになったら、真っ先にあのコーナーから改善します。

握り詰紹介は良い企画だったけど、作品に恵まれなかったのが残念。駒種が悪かったかな。久保さんとは「柿木感が強い」という感想で一致した。

ミニ詰将棋解答選手権。作品の半分は 片山倫生作と聞いて「すごい!」と思ったけど、参加者紹介での片山さんの言葉を聞くに、あれは全部既発表作だったのかな。さすがに15題も新作用意できないか。しかしそう考えると全て新作を揃えてきた去年の大阪大会はすごい。

今回、書籍販売のコーナーで詰パラ約300冊が3万円で売られてたんだけど、誰にも買われてなくて、仕方なく第一部と第二部の間で柳田さんが「1万円に値下げします」って宣言したんだけど、なぜかマイクを使わずに喋ったせいで全然伝わってなくて、結局誰も買わなそうだったので、買った。買ったあと隣に置いてあった「盤上のファンタジア」を物欲しそうに眺めていたら竹村さんがおまけでつけてくれた。めっちゃ得した気分だったけど、そのあと配送でヤマトに3000円とられた。うーん。まあでも得。

それとは別に生まれ月のパラも100円で購入。生まれ年のワインみたいな感じで、生まれ月のパラを買うのが流行らないかなと密かに思っている。

この号の結果稿にめちゃくちゃいい作品が載っていたので我が物顔で紹介したい。

1984年10月 中原信治氏作

68角、25玉、45龍、35金、34龍、同金、69角、
まで7手詰

取られる位置の限定打から合駒動かしてこの枚数。しかも55歩は不要駒ときている。傑作。

懇親会の話はまた別で書く。

迷宮の王にお言葉ですが(2)

「大崎くんが大橋さんに聞きたいことがあるらしいよ」と角さんが言って大橋さんと語る場が開かれた。そこで聞いた話。

kakikake.hateblo.jp

大橋健司氏作 平成3年度看寿賞中編賞「迷宮の王」

まず聞きたかったのは、初手が必要なのかということ。 その後の手順と比べると異質な初手は、いまの作家なら大半が省くのではないかと自分は思っているが、当時の大橋さんは初手58龍の紛れを入れたかったのだそうだ。

なるほど、まあ、入れたかったのなら仕方ない。仕方ないというか理解できる。入れたい手は入れるのが作家だ。 ただ、いずれ作品集を出すときは図を変えるかもしれないともおっしゃっていたので、やはり時代に応じた価値観の変化はあるのだろう。

もうひとつ聞きたかったのは歩でもよいはずの45がなぜ香なのかということ。

それの答えは面白かった。完成図を得たときに45には香がいた。それは創作や推敲の中で、ある瞬間には香でないといけなかったのだ。そして完成に至った。そのときに改めて45の駒を歩に変えて、再度頭から検討し直すだろうか。

これも柿木将棋のある現代なら別の話だが、やはり当時では大きなリスクだったに違いない。 (とはいえ投稿直前に魔が差して浅い検討で駒配置を変えることは、いまの作家でもよくやるミスで、そういう図はだいたい潰れている)

ところで「迷宮の王」の初手については久保さんの指摘がとても良かったので、それもついでに取り上げたい。初手を開き王手にする案だ。

初手45香の一間上がり。45だと後で邪魔になるが、45に上がるしかないのだ。43香も初手香成の防ぎに役立っており味がいい。さすが平成生まれ。

詰将棋解答選手権2016参加記

半期賞予想をしてる途中で早くも詰パラ4月号が届き、結果を知ってしまった。 大方予想通りだったけど、唯一外れたのは自作が半期賞じゃなかったことくらいだ。おかしいな半期賞だと思ったんだけど。


昨日、解答選手権に参加してきた。参加と言っても選手でも運営でもないので、ただの打ち上げメンバーだ。 エンジョイ勢も多い全国大会に比べて、解答選手権の打ち上げはガチ勢が揃っているなという印象だった。

一方自分はというと馬屋原さんとデパートの在庫をほとんど空にしたり、6月号で出題予定の知恵の輪作品をもらったり。 会場になぜか若い女性が2人もいたので聞いたら、女流棋士と女流アマ名人とのことらしく、寡聞にして存じあげず申し訳なかった。

打ち上げで出題された、次号の将棋世界に載る若島さんの作品が大問題。 伊藤果さんや行方さん、竹中さん含めみんなでよってたかって1時間くらい考えたのに、それでも解けなかった。 結局最後は竹中さんが詰ませたものの、難易度設定はたしか「10分で初段」とかそんな感じだったので、ぜひ来月の将棋世界で確認してほしい。

二次会を経て、伊藤果さん、若島さん、馬屋原さん、會場さんで三次会。午前2時まで詰将棋について語り、解散。馬屋原さんは今日無事に出社できたのだろうか。

ちなみに作品集のタイトルが読者に対して挑戦的であることは作者も自覚しており、それについてはあとがきでわけを説明しているそうなので、こちらも確認されたい。


解答選手権への応募は2作送っていずれも不採用。うち1作は難しすぎて、相馬作と並ぶと(時間配分の)バランスがとれないので最後に落ちたらしい。 来年は並んだときに逆に相馬作を落とすくらいの作品でまた挑戦したい。

自分の好みは⑩。じゃ当たり前すぎるので③。 肝心の初手の紛れが、解答選手権では読んでもらえないのが惜しいけど、若島さん曰く(解答選手権の場でも、紛れ筋と分かっていても)紛れを読むのは作品に対する礼儀とのこと。

2015年下半期賞予想 高等学校

高校は2.79が期末で2題。

2015年11月 高21 谷口均氏作

48銀、同玉、59角、58玉、68飛、47玉、49飛、同銀不成、
39桂、57玉、46銀、同玉、48飛、37玉、18飛、
まで15手詰

とどめ駒の59角をはじめに打つあたり丁寧な逆算。

2015年11月 高25 有吉弘敏氏作

45角成、66玉、76金、57玉、56馬、同玉、58香、同金、
55飛、同玉、57香、同金、56香、同玉、34馬、同飛、
66金打、
まで17手詰

気付きづらい初手から収束のたたみ込みまで。評価が高いのもうなずける。

しかし半期賞は次の作品と予想。

2015年8月 高7 片山知氏作

23銀、同飛、13歩、同飛、32飛、22銀、同飛成、同玉、
32と、同角、31銀、23玉、33馬、同玉、34金、
まで15手詰

つけいる隙のない完成度の高さ。初手に捨てた銀が、あとで合駒で戻ってくる構成。本当に初入選?

これ以外に良かった作品も挙げておこう。

2015年10月 高18 青木裕一氏作

46金、26玉、53角成、44歩、35角、16玉、28桂、同と、
17歩、25玉、52馬、34歩、14銀不成、同玉、41馬、同飛、
24金、
まで17手詰

作者の言葉には「打診?何ですかそれ?」とあるが、44歩中合は成駒に打診中合したと錯覚してしまう一手だ。 (実際には馬を近付けて52馬の合駒稼ぎを防ぐ手かな?)

2015年10月 高19 斎藤光寿氏作

47角、96玉、97歩、同玉、25角、96玉、97歩、95玉、
69角、94玉、95飛、同玉、96歩、94玉、95歩、同玉、
97飛、
まで17手詰

打歩詰回避のために飛車の横利きを止めるのを2回繰り返す。しかも角で。ダイナミックに。 収束を69角からにしたのも非常に上手いが、この形で47桂合を見落としたのは不思議だ。 43歩は61角成の防ぎであるとともに、47歩合の防ぎでもあるので、作者も47中合は読んでいたはず。

ところで手元のデパートの投稿用紙ではサイトウのサイは「齋」になっているが、本誌では簡略化されてしまうのだろうか。