ツメガエルさんのブログで自作が取り上げられた。
「単なる手数伸ばしだと思われると、妙手感が薄れてしまうので、手数伸ばしと思われない対策が必要になる」と書いてある。
7月発表の自作は玉方の応手の結果、攻方に余計に駒が渡っているので、単なる手数延ばし以上の意味がある。つまり妙手性が高まっている。 と、好意的に評価していただいているのだが、詰将棋なんていうひねた趣味をもつ天邪鬼な私はこれを読んでこう思った。
単なる手数延ばしだと本当に妙手感が薄れるのか。
そこで単なる手数延ばしなのに妙手感のある手順というのを考えることにする。 すぐに思いついたのは次のパターン。
2015年7月 山路大輔氏作
34馬、11玉、61龍、21香、同龍、同玉、61龍、31飛、 25香、23桂、同香不成、12玉、22香成、同玉、33と、同飛、 14桂、32玉、52龍、42桂、22桂成、同玉、42龍、32飛、 12馬、同玉、32龍、22金、14飛、13桂、24桂、11玉、 13飛成、同金、23桂、同金、12龍、 まで37手詰
作品の本質と関係ない話で引用してしまって申し訳ない。取り上げたいのは9手目25香と打ったところ。
ここで22桂合とすると同香成、同玉で作意に2手早く短絡する。 23桂合と中合すれば、同香生、12玉、22香成で2手稼げるというわけだ。
桂をタダで渡すので、妙手感があるといえばある(かもしれない)。
ヤケクソ中合 - Wikipedia
19香、18桂成、同香、25玉、26金、24玉、36桂、 まで7手詰
2手目25玉と逃げると26金と桂を取られて作意に短絡するので、どうせ取られる26桂を18桂成と捨てることで2手稼いでいる。
ヤケクソ中合自体が陳腐な手筋(?)なので、今となっては妙手感はあまり感じられないが(新出当時は不明)ところがこれを繰り返すと途端に創意が出てくる。
それで思い出した作品が、偶然なのか必然なのかは分からないがツメガエルさんの作品だった。しかも初入選作! (はじめ手順だけ思い出して作者名が思い出せなかったのを岡村さんに教えていただいた)
2010年12月 やさ院1
99角、77歩成、同角、66歩、同角、55歩、同角、44歩、 同角、33歩、同角上成、同桂、同角成、21玉、43馬、11玉、 44馬、21玉、54馬、11玉、55馬、21玉、65馬、11玉、 66馬、21玉、76馬、11玉、77馬、21玉、87馬、11玉、 77馬、21玉、76馬、11玉、66馬、21玉、65馬、11玉、 55馬、21玉、54馬、11玉、44馬、21玉、33桂、31玉、 32歩、42玉、43歩、51玉、52歩、61玉、62歩、71玉、 72歩、81玉、82歩、91玉、92歩、同玉、93歩、同玉、 66馬、92玉、65馬、91玉、81歩成、同玉、82桂成、同玉、 83桂成、91玉、92成桂、 まで75手詰
初手99角に33歩合とすると、同角、同桂、同角成、21玉で以下作意同様の馬鋸に入り、43から87まで並んでいる歩を馬鋸が拾うことになる。
ところが、初手99角に77歩、同角、66歩、同角と1枚ずつ捨てていけば、それぞれがヤケクソ中合になっていて1枚につき2手、合計8手稼げるというわけだ。
加えてこの作品が面白いのは、87の歩はヤケクソ中合せずに残さないといけないところで、馬鋸から一番遠い歩だけは残しておかないと、馬鋸の手順をカットされてしまう。87の歩を残すこと自体が26手の手数延ばしになっているとも言えよう。
これを「妙手感がある」と言うと、また主観の問題になってしまうので難しいが、少なくともただの手数延ばしでも、まだまだ面白いことはできそうだ。
@sasikake 手数伸ばしを目的として、何か新しい手筋ができないか考えてみるのはそれはそれで生産的かもしれませんね。
— 飼い鼠 (@ikiron) October 29, 2015