書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

図巧を読み解く 第四番

35金、同金、46桂打、44玉、35角、同玉

ここまでは序。

ここから24角!と初形にいた角を再び打つのが筋の一手。34金があるので同香とは取れないが、残念ながらいまは同飛で後続手段が無い。そこで遠回りする。

17角

これも取ると34金があるので取れない。やむなく捨て合いするが

26歩、同角、24玉、15角、35玉

となり、ここで改めて24角!とすると、さっきの局面から1歩増えている計算。

24角、同飛

1歩増えたからなんだという局面だが、ここで続けざまに25龍!がこれも同飛と取れないことを見越した手。同玉と取らせれば26金と上から抑えつけられる。以下収束。

25龍、同玉、26金、14玉、15歩、13玉、22銀不成、12玉、
11銀成、13玉、14香、同飛、同歩、同玉、15飛、24玉、
25金、33玉、34金、32玉、12飛成、41玉、31と、同銀、
52龍迄39手。

24角、25龍と捨てる手は派手だが言ってしまえばただの焦点捨て。17角から1歩稼ぐのは構想というほどでもない。26桂合を防ぐために4桂配置してまで?という気もする。

図巧を読み解く 第三番

図巧を並べたのは詰将棋を始めた初期の初期で、当時はわけもわからず見ていた。いま改めて鑑賞してみようと思った。

第三番から始めたのは一番と二番が有名すぎるからだ。第三番は現代的に言えば広義の打診、不成強制といったところか。

77銀、95玉、96金、94玉

ここで95歩は打歩詰。かといって85金では同飛成で龍が強く全く詰まない。そこで86桂と打つ。

これを同飛成では打歩詰が打開されて95歩で早い。やむなく同飛生と取るが、それから85金とすれば龍ではなく生飛を残すことに成功し、以下収束である。

同飛不成、85金、同飛、
95歩、同玉、96歩、94玉、86桂、同飛、95歩、同玉、
86銀、同玉、83飛、76玉、85飛成、66玉、55龍、同玉、
56馬、64玉、65馬、73玉、83角成、63玉、74馬上、54玉、
65馬、63玉、74馬引、72玉、73歩、61玉、43馬、同歩、
51と、同玉、41馬、同玉、42金迄45手。

収束は現代の感覚すれば冗長。しかし途中55龍や

54歩の原形消去から43馬、41馬と切れ味鋭く仕上げてある。

打歩詰局面から桂捨て、同飛生というのは、いまやよく見る筋だが、短手数でまとめないところがさすが献上図式といったところだろうか。

森田手筋回避の移動合

森田手筋とは、合駒を発生させたあとに、その王手駒を消せば、合駒が自由に動けるようになって、それが取歩駒に使えるという手筋だ。

そこで攻方が王手駒を消しにかかるのと同じように、対抗して受方も合駒を消しにかかれば、森田手筋を回避することができるはずである。実際に作例もある。

2015年3月 第12回詰将棋解答選手権 武島広秋氏作

46銀、44玉、45銀、同玉、37桂、44玉、46飛、同桂、
43桂成、54玉、55歩、43玉、65角、54桂、34銀、44玉、
45銀、43玉、54銀、44玉、45銀、55玉、56歩、65玉、
57桂、同馬、66歩、同馬、74銀、
まで29手詰

この作品では合駒を消すのに玉の移動(いわゆる不利逃避)を使っているが、合駒自身の移動を使うという手段もありえる。それが7月号のデパートで発表された2題。

2016年7月 デパート 久保紀貴氏・井上徹也氏合作

74飛成、54角、35金、同玉、75龍、65角、26金、44玉、
64龍、54角、55龍、同銀、45歩、同角、43銀成、
まで15手詰

2016年7月 デパート 武島広秋氏作

56銀、46玉、47銀引、45玉、27角、同馬、15飛成、35角、
56銀、46玉、16龍、26角、同龍、同馬、47銀引、45玉、
54角、同桂、46歩、同桂、56銀、
まで21手詰

この構想を図化する際、収束は2パターンが考えられる。別の取歩駒を用意するか、逃げた取歩駒を元に戻すか。もちろん当初の打歩詰と全く関係ない別の収束を用意することもできるけど、そんなことをする作家はなかなかいないだろう。

別の取歩駒を用意するのは比較的簡単だ。合駒を取って、その駒を捨てて別の取歩駒を引っ張ってくればよい。角を捨てて桂を引っ張ってくるのは不利逃避の一号局でも使われているセオリーで、この構図でまとめた武島さんの作品は一号局らしくシンプルだが序奏の味付けが上手い。合駒で出す角を先に捨てるあたり自分も好きな作り方だ。

一方、移動合で逃げた取歩駒を再び元の位置に戻すのは少し難しいが、こちらを採用すると移動合を紐なし中合にしやすいというメリットもある(取ったら取歩駒が無くなるので、紐があってもなくても取れないからだ)。森田回避から再度の森田手筋に持ち込んだのは、さすが久保さんというところである。

さて、森田回避の収束には2パターンあるわけだが、冒頭に紹介した不利逃避バージョンの森田回避は別の取歩駒を用意するものだった。では「取歩駒を合駒で発生させたら、それを玉方が不利逃避して取らせにかかったけど、取らず手筋でやり過ごしてやっぱり取歩駒として使う」というパターンもきっと作れるだろう。

そう思って作ってみたのがこちらの作品。と言って図が用意できたらよかったのだが、あいにくまだ無い。

取らせ合駒に見えてきた

今年の全国大会には斎藤仁士さんが参加されていたらしい。

斎藤仁士といえば史上最高の香先香歩が有名だが

1976年2月 斎藤仁士氏作

氏の作品を見返していて気になったのはこの作品だ。

1995年9月 斎藤仁士氏作

初手59香に普通に55歩合としてみよう。

以下長いが64龍、45玉、44龍、36玉、35龍、27玉、29香、同と、37龍、16玉、17龍、25玉、15龍、34玉、35龍、43玉

ここで本当は55桂が一番早いけどとりあえず無視して44龍、32玉、42龍、同玉、33銀打、41玉としてみると(最後の41玉も本当は43玉の方が長いけど)

42歩が打てるので詰む。

2手目に56歩合としても58歩合としてもほとんど同じ結果だ。では57歩合なら?

先ほどと同様に64龍、45玉、55龍、36玉、35龍、27玉、29香、同と、37龍、16玉、17龍、25玉、15龍と追い回すが

先ほどとは違いここで36玉とする手がある。以下、35龍、47玉、37龍、56玉、57龍で57の歩を取らせることができて(その副作用で47桂も消えるのが惜しい)

45玉、55龍、34玉、35龍、43玉、44龍、32玉、42龍、同玉、33銀打、41玉となった局面、57歩を取らせた効果で歩が打てなくなっている!

これを今の私たちは「取らせ合駒」と呼んでいるような気がする。

作意は以下52香成、同玉、62角成、41玉、63馬、52金、同馬、同玉、53歩、同玉、44金、52玉、53歩、41玉、42銀成、同玉、33銀成、51玉、52歩成、同玉、43金、51玉、42金までの53手詰。

2016年詰将棋全国大会参加記(3)

二次会がお開きになったところで、もう片方のグループに合流しようと思った。なにせ向こうには宿をとっていない久保さんや鈴川さん、廣瀬さんがいるので、どうせ朝まで飲むに決まっているのだ。

今年の全国大会には地元の大学生である長谷川さんと藤井さんが参加されていた。この2人と若手作家を交流させるのが自分に課せられた使命だと勝手に思い込んでいた私は、彼らも三次会に連れていこうと思い、この後どうするのか聞いてみたが、返ってきたのは「そろそろ終電が」という弱気な言葉だった。困った。

ところで倉敷には夜の2時間しかやってないラーメン屋がある。

二次会と三次会のあいだに必ずこの店に行こうと思っていた私が「夜の2時間しかやってないラーメン屋があるんですよ!」と高らかに宣言したところ、ありがたいことに原田さんと児島さんが一緒に行くと言い出してくれた。おまけに大学生の2人も「児島さんが行くなら」みたいな感じでついてきてくれた。しめしめである。

ラーメンは普通の味だった。

食べ終えたところで原田さんと児島さんはホテルに戻り、残った自分たち3人は馬屋原さんに連絡をとって若手作家チームと合流した。三次会では馬屋原さんと鈴川さんに「連続合の意味付けの違いに興味は無い」みたいなことを言われ、広瀬さんに「意味付けこそ大事ですよね!」と話したりした(記憶が曖昧なので正確には違うかも)

一応、終電を逃させた手前、店の閉店時間である午前3時までは同席したものの、翌日に博多旅行を控えていた自分はついに残ったメンバーをカラオケ屋に押し込んでお先に失礼した。その後の顛末は知らないが、Twitterを見るに皆生きて帰ったようだった。

2016年詰将棋全国大会参加記(2)

握り詰めに詰め上がり「⊥」こんな形があったので、筒井さんに「ちんこ詰めに投票したんですか?」と聞いたら、案の定その理由で投票しようかと思っていたようだった。(結局投票はしてないらしいけど)

参加者コメントのときに女流棋士の山根ことみさんが「詰将棋を解くのが好き」とおっしゃっていたので、さっそく懇親会でデパートへの解答とゲスト解説を依頼してみたがにべもない返事であった。お母様も一緒に参加されていたので「お母さんはどうですか」と言ってみたがやはり芳しくなかった。

その後例年通りに筒井さんがきぐるみを着はじめたので、また山根さんのところに行って「きぐるみ着ませんか」と言ったけどこれもだめ。でもなぜか松山将棋センターの児島さんが着てくださることになった。久保さんや山路さん、水上編集長も入れて記念撮影をしたが、これをネットに掲載していいのかは不明である。

二次会は大きく二手に分かれているようだった。片方は始まりが遅いのと、いつものメンバーという気配だったので、趣向を変えて大会スタッフや中国四国地方のひとが多く参加してそうなグループに向かってみた。そこで竹村孔明さんに見せてもらった作品がこちら。

2014年6月 竹村孔明氏作

29桂、同と、28銀、同玉、46馬、18玉、36馬、28玉、
37馬、18玉、27銀、17玉、26銀、18玉、27馬、19玉、
18馬、同玉、17龍、
まで19手詰

取らず手筋の29桂〜28銀は一目思いつく手順。しかしその後ミニ馬鋸で近づく発想がなく、解くのに苦労した。「詰四会で発表したあの短編すごくいいですよね。並べてください」と話を振られて竹村さんが並べたのがこの図だったが、並べてほしかったのは別の図だったらしい。上図は作者お気に入りの作品とのこと。別の図の方は短編名作選に収録されるとかされないとか。

倉敷の夜はまだまだ続く。

2016年詰将棋全国大会参加記

おぼつかない操作の柿木将棋で作意をなぞるだけの解説。もし自分が2年後の東京大会で幹事をやることになったら、真っ先にあのコーナーから改善します。

握り詰紹介は良い企画だったけど、作品に恵まれなかったのが残念。駒種が悪かったかな。久保さんとは「柿木感が強い」という感想で一致した。

ミニ詰将棋解答選手権。作品の半分は 片山倫生作と聞いて「すごい!」と思ったけど、参加者紹介での片山さんの言葉を聞くに、あれは全部既発表作だったのかな。さすがに15題も新作用意できないか。しかしそう考えると全て新作を揃えてきた去年の大阪大会はすごい。

今回、書籍販売のコーナーで詰パラ約300冊が3万円で売られてたんだけど、誰にも買われてなくて、仕方なく第一部と第二部の間で柳田さんが「1万円に値下げします」って宣言したんだけど、なぜかマイクを使わずに喋ったせいで全然伝わってなくて、結局誰も買わなそうだったので、買った。買ったあと隣に置いてあった「盤上のファンタジア」を物欲しそうに眺めていたら竹村さんがおまけでつけてくれた。めっちゃ得した気分だったけど、そのあと配送でヤマトに3000円とられた。うーん。まあでも得。

それとは別に生まれ月のパラも100円で購入。生まれ年のワインみたいな感じで、生まれ月のパラを買うのが流行らないかなと密かに思っている。

この号の結果稿にめちゃくちゃいい作品が載っていたので我が物顔で紹介したい。

1984年10月 中原信治氏作

68角、25玉、45龍、35金、34龍、同金、69角、
まで7手詰

取られる位置の限定打から合駒動かしてこの枚数。しかも55歩は不要駒ときている。傑作。

懇親会の話はまた別で書く。