書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

高木手筋と青木手筋

1955年3月 高木秀次氏作(不完全)

初手から65龍、同玉、66金、54玉、98馬とした局面が問題。

詳しい話はこの詰2010や若島さんのブログを参照してほしいが、ざっくり言ってしまえば、ここで玉方は歩ではなく金を渡せば打歩詰に誘致できる状態になっている。

ところが持駒に金は無い。そこで盤上の96金を87金と移動中合するのがいわゆる高木手筋。

同馬と取ると、45玉(、78馬、同歩成)で金を渡されてしまう攻方は、これを取らずにひねって65金、45玉、89馬としてみるが、これにも78金!と移動合で応じる手があり、どうしても金を取らされてしまう。

もう少しわかりやすい若島さんのサンプルが下記。

玉方は角を合駒したいのに角が品切れになっている。そこで31角には53馬!と応じ、84金、66玉、22角成に44馬!を用意するのがまさに高木手筋である。

いずれの作品も後で特定の合駒を打ちたいのにそれが品切れで打てないので、盤上の駒を活用していくところが肝だ。

しかし後で合駒が打てないというのは、何も品切れだけが理由ではない。

8段目に桂は打てないという意味付けを利用しているのが次の作品。 (この時期、詰将棋に全く触れていなかったので、この論理の初出がどの作品かは不明)

2013年7月 中5 宮原航氏作

88馬、77桂成、同馬、66桂、65馬、46玉、58桂、同桂成、
55馬上、同飛、36金、
まで11手詰

ここからさらにひねってきたのが青木さん。

2015年3月 中13 青木裕一氏作

73香成、77銀、同馬、53玉、62銀、52玉、53歩、41玉、
51銀成、同玉、52銀、
まで11手詰

本作は成駒は打てない(当たり前)という意味付けを利用している。

つまり86に成銀を合駒できれば詰まないので、前段で77銀と中合して97馬に86銀成を用意しているというわけだ。

ここまでくると盤上の駒を活用して移動中合する高木作から大きく外れだしており、(先のツイートでイキロンさんも言及しているが)これも高木手筋と呼んでいいのかは怪しくなってきている。

これでやっと本題に入れる。10月号のデパート解説。

2015年7月 デパ3 青木裕一氏作

35金、56歩、17歩、同玉、18歩、16玉、56飛、46桂、
同飛、同馬、17歩、同玉、29桂、16玉、17歩、15玉、
25金、
まで17手詰

オリジナルの高木作では、平行な二つのラインのいずれかで合駒が1枚取れることは保証されていて、その合駒が発生するラインの差分が強調される作りになっている。

これはどうだろう。オリジナルの高木作でも合駒をどっちのラインで取るかはたいした問題ではないと個人的には感じている。 (青木作も合駒は一応どちらのラインでも取れる。後で取る手を作意にすると、先に取って捨てる手がめちゃくちゃ消しづらい非限定になるので、先に取る手を作意に設定する方が創作は楽だろうけど)

とはいえ結論は同じで、やっぱり青木作は新構想だと思う。

要するに、これは「成駒を合駒するため、あらかじめ盤上に発生させておく」という青木氏オリジナルの構想といって差し支えないのではないか。


10月4日追記。