1984年8月 岡本眞一郎氏作 修正図
45と、56玉、46と、同玉、43桂成、64歩、同角不成、55歩、 同角、35玉、46銀、36玉、38飛、37歩、同飛、26玉、 44角、16玉、36飛、同角、17歩、25玉、14銀不成、同玉、 13と、25玉、26歩、34玉、35歩、43玉、53角成、 まで31手詰
73の角はあとで62から26のラインでも使いたいので、まず邪魔な44とを消すところから始まる。5手目43桂成の局面。
素直に35玉としてみよう。以下、46銀、36玉、38飛、37歩合、同飛、26玉、62角生。
これは打診中合の頻出形。35歩合は同角生なので、一度44に打診中合を放ち、同角生なら16玉で、同角成なら改めて35歩合を打って不詰だ。
しかしこの局面も例によって44歩が二歩で打てない。ここまでくるともう打診ができずに早く詰んでしまうので、戻って事前に打診しておく必要がありそうだ。再び5手目43桂成。
ここで55歩合という手が見える。これを同角成(または生)と取れば、以下、35玉、46銀、36玉、38飛、37歩合、同飛、26玉、44馬(または角)となり、
先ほどの二歩で打てなかった44歩をあたかも打った(そして先手が53の角でそれを取った)かのような局面に誘導されている。
55歩合を間接打診と呼ぶ人もいるだろう。44の代わりに55で間接的に打診した手になっている。たしかに間接打診だ。 しかし個人的にはこれは間接打診というよりは、効果が現れるまでに時間がかかるだけの直接的な打診中合といった方がしっくりくる。
糟谷作や久保作の間接打診合は三段目に放たれており、それを取った瞬間はまだ成生を確定しなくてよい。 にも関わらず、のちの局面の打診に効いてきているところに間接打診という印象を受けるのだ。
本作は55歩合を取った瞬間に成生が確定するために、間接的というよりは直接的に思えてならない。 (もちろん、55歩合を間接打診と呼ぶ人の感性を否定するものではなく、あくまで個人的な意見だ)
さて、本作、実はまだこれで終わりではない。 先ほどの手順には嘘があって、55歩合を同角成と取ると、以下、35玉、46銀、36玉としたときに、
作意同様の38飛ではなく45馬とする手があって、これは見るからに早い。受方はもうひとつ工夫する必要があるのだ。三度戻って5手目43桂成。
55歩合は同角成で馬をつくられて早詰。ところがその馬をどうにか35まで運べれば、16玉に17歩の打歩詰が解消できずに詰まなくなる。 そこで飛び出すのがもうひとつの打診中合6手目64歩。これは完全に直接的な打診中合だ。
同角成と取れば、55歩合とはせずにそのまま35玉と逃げ、以下作意をなぞって26玉、53馬のときに35歩合で打歩詰に持ち込める。
したがって攻方は64歩合を同角生と取り、のちの53角生を用意するほかないが、続いて55歩合とされると今度は角成では取れなくなっている。
二度の打診中合を直列で繋いだ64歩合、55歩合が、久保作「位置エネルギー」の63歩合、54歩合にリンクしていることに気付くのは容易いだろう。 「位置エネルギー」は岡本作の連続中合を(内容としても配置としても)一段上げた構想になっており、そのおかげで歩を取る手が二つとも角生になっている。 (岡本作の二枚目はただの同角で取るが、久保作は同角生で取る) 先行作に糟谷作があったとはいえ、連続打診中合の一枚目は三段目の可成域で行えると見抜いた久保さんはまさに慧眼。
間接打診の先行作に本作と糟谷作があることは久保さんも認識していた。 ところが年末の忘年会での糟谷さんの指摘により、間接打診を、しかも三段目でやった作品が過去に存在することが判明したのだ。次がたぶん最後。