書きかけのブログ

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質駒を狙う馬屋原手筋

連続合のロジックは手筋ではなく原理と呼んでいたような気もするけど、馬屋原手筋が浸透しているので、ここでも手筋としておく。

連続合駒の意味づけのひとつに、王手駒の利きに利かせるものがある。

例えばこんな感じの仮想図で

91飛に81銀合と近接合すれば、12歩は同玉、92飛成、同銀で詰まないというもの。

連続合駒が狙いということは近接合をサボれない仕組みが必要になってくる。

81銀合に代えて71銀合なら12歩、同玉、92飛成、82歩合となって、これがなぜか詰むというわけだ。

これは取られず生き残った92龍を活用したり、82の合駒が攻方に有利な駒種しか打てない仕掛けを用意することで解決できるが、馬屋原手筋は前者である。

2015年11月 馬屋原剛

93角、84飛、同角成、75飛、同馬、46玉、55銀、同玉、
54飛、同玉、44飛、63玉、64馬、62玉、73銀、71玉、
82銀不成、62玉、73馬、53玉、45桂、同角、64馬、62玉、
73銀不成、71玉、41飛成、61桂、同龍、同玉、62歩、71玉、
83桂、81玉、82銀成、
まで35手詰

93角に75飛合と近接合をサボったとしよう。すると58歩、46玉、82角成、73歩合で82馬が取られずに生き残るので

55銀打、36玉、72馬と角が取れて詰む。もし72馬を同Xと取り返されても45角でやはり詰む。72角を取られたら終わりなので、その一歩手前の82で馬を消しておかないといけない。そのために近接合がサボれないというわけだ。

84飛合なら詰まなかったのにの図。

馬屋原手筋の面白いところは、72角という1枚の質駒を巡って近接合が2回起こることだ。

つまり、84飛合を同馬と取ったあと、

ここで66桂合と近接合をサボると、58歩、46玉、73馬と再び質駒を狙われて

64桂合、55銀打、36玉、72馬までである。

72角を取りに行くルートが82からと73からの2つあるので、近接合も2つ出るということだ。

それでは質駒が2枚あったら近接合が4回出せるのではないか。そうして作ったのが次の自作である。

2016年10月 自作

98馬、87香、同馬、76香、同馬、65香、同馬、54香、
35桂、34玉、26桂、同歩、24と、35玉、39龍、38歩、
同龍、同と、25と、同玉、47馬、34玉、35香、同玉、
36馬、34玉、35香、23玉、45馬、13玉、14歩、同玉、
36角、25桂、同角、同玉、17桂、14玉、15歩、同玉、
16香、同玉、34馬、15玉、25馬、
まで45手詰

馬屋原作を上下反転させた形で、飛合の代わりに香合が出るようになっている。質駒は79銀と57銀だ。普通に考えたら79銀を取るときは57銀が邪魔で79馬とはできないのだが、48龍、同銀と攻方が自由に57銀をどかすことができるので、2枚ともが質駒化されている。ここが工夫であり、先行作から発展しているところである。

この作品を見た久保さんが、さらに別の発展をさせた。

2017年10月 久保紀貴 「パラレル」

88馬、77香、同馬、66香、47香、同馬、66馬、55香、
同馬、35玉、36香、同馬、45馬、同馬、47桂、44玉、
53銀不成、43玉、44香、同馬、52銀不成、同玉、51飛成、43玉、
35桂、同馬、45香、同馬、53龍、
まで29手で詰

馬屋原手筋で香合が連続で出るところは自作と同じだが、質駒は69馬1枚に戻っている。どういうことか。

連続合の途中で47香、同馬と動かすことで、1枚の質駒に2役もたせているのだ。質駒2枚相当なので4連続合にすることも理論上は可能そうにも思えるが、作者の検討によると馬と香では3連続が限界とのことであった。

3連続合に収めた代わりに簡潔な構図と手順でまとまっている。また、言うまでもないが質駒が生角から馬に変わったことで、質駒を取りに行く変化が同馬と取られる形になっているのも新たな発展である。