書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

名誉の味がする

1989年11月 行き詰まり「無への疾走」

「下段の香に力あり」の格言に従えば、初手は89香の一手だ。75玉と逃げる手に84銀と打ち捨て、これを同銀なら87銀まで詰むが、取らずに74玉とかわされると67銀には64玉、87銀には84玉で詰まない。

もう結論はバレてそうな気もするが気にせず続けると、次に考えたい初手は87香の短打だ。これなら75玉、84銀、74玉には89銀と香筋を遮らずに王手できるので詰む。ところが今度は84銀を平凡に同銀と取られて詰まない。

84銀に74玉は89銀まで、同銀は87銀までで詰ませたい。どうすればよいか。ここまで来たら簡単な話で、初手88香が正解である。

この構造、どこかで見た気がするだろう。お手元の誰も言わなかった詰将棋用語集の49ページを開いていただきたい。名誉手筋によく似ている。

「誰言わ」の定義には「利きを通すか閉じるか選択する」とあり、行き詰まり作の87銀は香筋を閉じるための手ではないので名誉手筋にはあたらないことになる。名誉手筋ではないが、30年も前に名誉手筋のような態度保留の一手を5手詰で実現したことを称えて、行き詰まり作には名誉名誉手筋の称号を贈りたい。