書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

下段の香に名作あり

香の最遠打が好きだ。盤を端から縦に切り裂く香の利きはいつ見ても凛々しい。たまに遠くから打った方が得だからという理由で、ただの以遠打を最遠打で表記している解説があるが、あれはやめてほしい。

左右反転を考えると香の最遠打には19から59までの5パターンがある。その5パターンそれぞれで私が好きな作品を紹介したい。

2020年4月 原田清実

64馬、22玉、13桂成、同玉、31馬、22桂で、19香!

この香を近くから打つと23玉、43龍、24玉、42馬、25玉、15馬、36玉、28桂、27玉、47龍以下の変化が詰まなくなる。作意は15桂、同香と位置限定の中合で香を近づけてから23玉と逃げるが、13香成、同玉、25桂、23玉と香を桂に打ち替えて、15桂、12玉、14龍、同桂、13桂成、11玉、23桂生、同香、22成桂と捌き切って清涼詰となる。傑作。

原田さんの代表作と言っても過言ではなく、自分はこの年の看寿賞にも推薦したが、選考では一言も言及されていなかった。今年の全国大会の二次会で原田さんを捕まえて、あの作品めっちゃ好きなんですよ!と熱弁したけど、多分あのとき間違えてずっと29香と言ってたと思う。失礼な奴だ。

2016年8月 鈴川優希 (原図)

41角成、同飛、33銀成、同桂で29香!

28香だと14玉、24飛、15玉、25飛、16玉、26飛、17玉、16飛が詰まないというわけ。作意は27桂とこれまた位置限定の中合をして、同香、14玉、26桂、23玉、22飛、同玉、34桂、32玉、22香成まで。

作者は詰め上がりで61角が働いていないことが気に入らず、最後に角捨てが入った別の図で発表されたが、私は駒数の少ない原図の方がはるかに好きだ。61角も43に利いて詰め上がりに貢献しているし。

1992年6月 若島正

序奏は無く、初手から39香!35銀!言ってしまえばこの2手だけで、あとは収束だけど、収束も限定合2回から馬捨てまで入って緩むところがない。

同香、23玉、33香成、14玉、24銀成、同玉、13角成、同玉、35馬、24飛、15香、14桂、22銀、12玉、14香、同飛、13馬、同飛、24桂まで。

この作品も原田さんの19香も、収束がばっちり決まっているのは、収束からの逆算で香の最遠打を出しているかららしい。実力もさることながら詰将棋の女神に愛された 天賦の才、運の良さも感じずにはいられない。個人的にはこれも看寿賞。

1969年11月 山田修司

クイズ100人に聞きましたで「59香といえば」という問題を出したら98人がこの作品を答えたので企画が成立しなかったそうだ。

42飛、51玉、63桂、同金、59香!

このあとも同と、53香、同金で、金を53に戻すところが素晴らしい。63桂からの6手がこの作品の骨子であり、あとの手順は忙しかったら見なくてもいいくらいだ。59香最遠打はこの作品がマスターピースで、どうやっても二番煎じになってしまうが、それを承知の上で「63桂、同金、59香、同と、53香、同金」の本歌取りを誰かやってみてほしい。


5パターンを紹介すると言ったものの、実は49香の作品が思いついていない。本当は中編の作品で揃えたかったけど、ここではクイズ100人に聞きましたで「49香といえば」が出題されたときに1位に選ばれた作品を紹介しておく。

2018年8月 岸本裕真・山路大輔 「キラークイーン

71手目49香!

誰か中編手数で49香の傑作を作ってください。