書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

君は看寿賞渡辺作の凄さを知っているか

全国大会でやった看寿賞の渡辺作と井上作の解説が思いのほか好評だった。せっかくなのでここに記録しておく。

令和6年度看寿賞中編賞 渡辺直史

この作品の構造を理解する手助けとして、詰ナビさんが先月YouTubeで発表された作品が絶好の素材なので、まずはそちらを見ておこう。

www.youtube.com

2025年6月 詰ナビ

初手は33と。普通は12玉、56角と進むが、ここで受方がやりたい最善の受けは45歩打合である。しかし二歩で打てない。

そこで戻って初手33とのときに、54歩と先に紐なしで中合をしておく。

もちろんただで同角と取られてしまうが、そうしてから12玉とすれば角を引いての合駒請求ができなくなっている。作意はそれでも45角と引いて、同歩、13歩と進むが、これは先の手順で45歩打合をして同角、同歩と進んだときと同じ結果だ。

あとで合駒すると二歩になるので、先に別のラインで歩を中合しておくのが詰ナビ作の構造である。これを踏まえて渡辺作の5手目76馬の局面。

ここで普通の応手は58歩だが、38銀、同玉、65馬と進んだときに、さっき打った58歩のせいで56歩が二歩で打てない。歩以外の駒を合駒すると取って簡単に詰んでしまう。

ではどうするか。詰ナビ作にならって、76馬のとき、先に67歩が最善手だ。

これに38銀としても、同玉、65馬に56歩合が効く。

では3手目85馬のときはどうするか。

これにも67歩は有効で、以下38銀、同玉、74馬に56歩と進んで受けきったようにも見える。

ところが39金、27玉に63馬と3本目のラインから王手する手があり、このとき54歩が二歩で打てない。

54歩も詰ナビ作と同じように、先に中合しておかないといけないのだ。そこで戻って85馬に正着は76歩。

取らずに38銀は、同玉、74馬、65歩、39金、27玉、63馬、54歩と進んで逃れている。

最後に初手94馬を見る。

いままでの流れから作意が85歩なことはなんとなく分かるだろうけど、一応76歩としてみよう。

以下、38銀、同玉、83馬、65歩、39金、27玉、72馬、54歩と、さっき学んだ手順で進み、歩合が間に合ったようにも見えるが

28香、16玉に61馬と4本目のラインの王手が飛んできて、やっぱり52歩が二歩で打てない。

この52歩合も先にやっておく必要があり、初手94馬には85歩としなければならない。

これなら38銀とされても、同玉、83馬、74歩、39金、27玉、72馬、63歩、28香、16玉、61馬、52歩がぴったりだ。

作意は85歩、76歩、67歩を全部取って、58歩まで進め、以下収束。

連続合の作品を作るときに必ずついてまわる問題が収束だ。作者はここからの手順で攻方の3歩を消費しなければならない。しかも玉位置は下段。これが上段なら歩を成り捨てて使えるのでまだましだが、下段で歩を使い切るのは難しい。そこで作者が用意した答えが銀歩送りだった。

前半が理知的な論理に裏打ちされた前例のない連続合だったことに比べると、後半は牧歌的で見慣れた凡庸な手順である。しかしこの銀歩送りこそが、狭いスペースで舞台装置の2枚の馬も捨て去り、連続合で得た3歩も使い切り、この作品の完成度を高めて看寿賞をもたらせた要因と言っても過言ではないだろう。