書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

第3回 詰将棋サイコロトーク 酔鯨編

今日は酔鯨を読む会です。

酔鯨」はまず表紙がいいんですよ。書名もいいし、色もいいし、フォントもいいです。
フォントは普通でしょう。
いま見たら「からくり箱」と一緒でした。
べた褒めですね。
つみき書店から出た新刊3冊と一緒に買ったんですけど、酔鯨は群を抜いてますね。
方向性が違くないですか。
橋本樹さんは当時としてはアクロバティックなことをしてますよ。
いまだと武島さんが洗練バージョンをやっちゃってるので印象としては辛いですけど、先達者ですよ。
時代背景も含めて読めばいいんですけど、いま手元で酔鯨と比べちゃうと。
芹田さんは現代の作家ですからね。
現代の作家なのにもう作品集出すんだとは思いました。まだまだ現役なのに。
それは思いました。第一弾ってことなんですかね。
若島さん上田さんみたいなことですか。

酔鯨読んでて気付いたことがあって、同じ段に玉と飛車と角置いたバッテリーの構図がちょくちょく出てくるんです。10番とか11番とか。
それは解いていて思いました。
芹田さんの手癖というか、ネタが無いときについつい置いちゃう配置なのかなとは思うんですけど、もしかしたらこの1冊の中でこの形から七種中合出してて、そういう趣向なのかもと思って調べちゃいました。違いましたけど。
まあ、好きな形なんでしょうね。私も何も思いつかないときはよくある打歩詰の構図並べて考えてます。

この構図は最高ですよ。角の使い道が無いところも最高で、段が限定されるのだけが欠点です。玉が斜め下に下がったらと金寄れるのもいいんですよ。

ありがち打歩詰構図は自分もよく使うんですけど、武島さんとか最近の森長さんとかは見たこともない打歩詰の構図で収束する作品出してて、よくそんなん思いつくなあって思ってます。
分かります。私も思ったことあります。
あれはよくある打歩詰構図で破綻したからひねり出したのか、はじめからこんな打歩詰もあるだろうと思って作ってるのか、どっちなんでしょうね。
さすがに前者だと思ってます。
武島さんに歩打ったあと馬捨てる作品があって、これいいなあと思ったんです。
私も武島さんの作品の打歩詰構図で1個よく覚えてるのがあって、この詰でパクりました。第三の選択も優秀な構図ですね。よくある打診の構図とは違ってて。

いのてつさんの短評が採用されてた27番も、飛角バッテリーで中合の作品でしたね。桂合珍しいなと思いましたけど、そんなことないですか?
桂合の珍しさよりは、見るべきは最後の3手じゃないですか?桂中合して角捨て同桂くらいは原田清実さんとかにありそうですよ。
桂合が珍しいっていう意識は無かったです。
逆に桂合ならこの収束になる感じはしません?
普通に作ったら35金までとか24金までとかになりそうだけど、飛車まで捨ててるのに新鮮味を感じました。具体例出せないですけど、短コン全部見ていったら原田さんが桂合出してますよきっと。

35番はどうですか。何年か振りに詰工房行ったときに、二次会で芹田さんに「なんでこれが看寿賞じゃないんだ」って話をされて、自分の芹田さんの第一印象はそれなんです。
それは多くの人が持ってる印象かもしれないです。
でもその気持ちも分かるなあとも思って、看寿賞でよかったんじゃないのと。
35番はこれ単体で見るとめちゃくちゃいい作品なんですけど、後半11手がまったく同じ作品があるんですよね。それをどこまで評価するかって結構難しくて。


1980年5月 柳原裕司

あの飲み会で「看寿賞は前例に厳しい」と刷り込まれたので、去年の馬方さんの作品が前例あるのに受賞したのは意外でした。
馬方作とボンバーマンは構図が違いますからね。でも35番は同じ構図の前例があったとしてもいい作品ですよ。この年は何が取ったんでしたっけ。
該当なしです。
該当なしにするくらいなら、とは思うなあ。
中編が芹田さんです。
自分の好きな作品が取れないのに、他の作品がもらえるっていうのは、何も取れないよりある種辛いですよ。
蟻銀と同じ年の話だったんですね。この年短編を取り逃して、数年後蟻銀で雪辱を果たしたのかと勝手に思い込んでました。同時だったんだ。芹田さん充実した年ですね。長編賞はいのてつさんですか。
一緒に名古屋大会に参加した記憶があります。35番は會場さんが論考で取り上げてますけど、會場さんの文章はさすがですね。
さすがですけど、1個だけ嘘書いてるなとは思いました。「依然として26の中合は有効なように見える」と書いてるんですけど、26中合は圧倒的に有効で、26中合が有効だからこそ変化が膨大になってるんですよ。
自分は違和感なく読んじゃってました。會場さんのレトリックもありますね。
こう書いた方が一般の人には分かりやすいのかもしれないけど、それは會場さんの職業病出ちゃってますね。全体としては芹田さんの良さを分かりやすく伝えてくれるいい文章です。「いい作品だけどこれはある筋だから」のあたりとか。物語を描こうとしがちな最近の作家に対する芹田さん像が描かれていて、すごくいいです。
色々な評価軸があっていいですからね。

ただ、どの作品もいいんだけど、作風がホームラン狙いじゃないから、とにかくこの1作を見てくださいという紹介にはなりづらいですね。
イチロー的な?
この中から1作選ぶなら80番を選びます。
私も1作選ぶなら80番です。これは芹田作品の真髄ですよ。って、論考に書きましたね。これ書き終わるまで論考だと知らなくて普通に手順の解説書いちゃいました。これがあったらこの筋のミニ趣向はもう作れないですね。こういうのが好きなんです。看寿賞というテイストの作品ではないですけど、ちなみにこの年の看寿賞は何だったんでしょう。
私の歩の連続中合です。
あれはめちゃめちゃいい作品なので仕方ないですね。

論考で取り上げられた作品と受賞作以外では54番と89番が好みです。変化紛れのバランスがちょうど良くて、初形も良くて、収束も綺麗に決まるっていうのが芹田さんの特徴をよく表しているなと思って。
いのてつさんが54番好きなの意外です。
盲点に入って解くのに苦労したっていうのもあります。
私は長い方が好きです。芹田さんの逆算の特徴は、既に置いてある駒をいかに有効活用するかだと思っていて、そこが他の逆算作家と違うところですけど、長い作品になればなるほど有効活用の度合いが高まってると思うんですよね。ひとつの駒が複数の働きを持っていくので。
自分は90番が好きでした。
90番も特に色が強いですね。この詰め上がりの無駄の無さはなかなかやばいです。ここからこの序が入るとは思わない。
画家YouTuberの柴崎さん分かります?
分かりますよ。

芹田さんもこんな感じだなと思ってて①この収束ユニットを逆算してみましょう②24に利かせたら角合が出ますね③46角を置いたら香打も限定されて味がいいです④90番完成、みたいな。
言ってる意味は分かりますけど、そこまでの共通項があるかというと。
この収束ユニットから、角合は自分も思いつくかもしれないけど、その後90番にはならないんですよ。
これは芹田さんじゃないとできませんよ。

現代作家の多くは、手を先に考えて、この手を入れたいと思って逆算してると思うんです。芹田さんは入らない手を追いかけないというか、いまある駒で頑張れる範囲をとにかく突き詰めてますね。
私はこんな手が入ったら面白いなと思ったら、すぐそっちいっちゃうんですけど、芹田さんは配置が最優先、駒を増やさないことが最優先で、その中で一番を目指してる印象です。
鈴川さんなんかは逆算する中で、広げながら狙いをひねり出していきますもんね。
駒は増えるけど、手順も膨らんでいくよっていう逆算ですね。

だから芹田さんの作品にはもどかしいところもあって、どうしても技術的な評価になっちゃうんですよ。駒が1枚減ったり駒効率が上がったりして喜ぶのは作家なんで。
え、でも解答者受けもいいんじゃないですか?
収束決まりますからね。ただ、最近は多少駒が多くても、1局を支える1手や全体を通してのストーリーが重視される傾向にありますよね。蟻銀はそこがうまく噛み合った作品ですけど、蟻銀が芹田さんの真髄という感じもしないです。

この作品集後半が特に濃密なんで、久保さんが長い方が好きというのも分かります。作品集2冊出す予定なら、1冊目は上田さんの極光みたいに50局でもよかったのかもしれないです。
他の人の作品集読んでて「100局じゃなくてもよかった」なんて言わないですよ。
芹田さんの最高レベルが高いから期待しちゃうってことですね。
これが作れる作者なんだから、これを100局揃えてほしいとは思っちゃいますね。
現役作家だからもう何年かしたら揃いますよ。そういう意味では次回作に期待ですか。
最初のべた褒めから打って変わりましたね。
一番嬉しくない短評ですよ。次回作に期待。
酔鯨」は出色の作品集です。次回作にも期待ということで。

第2回 詰将棋サイコロトーク いのてつさんの再帰連取り講座編

前回の続きです。


1995年12月 今村修 天月舞

まず何が大変かっていうと歩を全部消す意味付けを作るのが大変なんです。例えば25歩が消えたとして、普通の連取りだと25が消えたら収束に入れるはずなんですよ。香の利きが通るとか、桂が取れるとか。再帰連取りってそれじゃ満足できなくて25が35に行って収束じゃだめなんです。
余詰もはらんでますよね。1歩消費型でもない限り45歩でも収束できるので。
なので25歩が35、45、55と移動して、最後は消えた状態で収束に入らないといけないんです。あとは75まで呼び出した歩を剥がして元に戻すのが結構大変なのと、中合が残る変化を処理するのも大変なんですね。それを解決するのが14玉です。

65手目55飛と歩を取ったところ。ここで作意は65飛合だが、受方には96玉と逃げて64歩を盤上に残す選択肢がある。一見すると盤上に歩が残るのは受方有利にも思えるが、この変化を受方不利の早詰にしなければならない。

64歩が残ってると94飛合が逆王手にならないんだ。
これが発想の転換で当時は新しかったんですよ。
14王は64歩を残しておくと玉方にとって不利になる意味付けのためだったんだ。
この天月舞すごいところいろいろあるんですけど。まず双玉の発想がすごい。あと25歩を消し切るのもスマートに実現していて、75に残った状態で収束に入ろうとすると95に逃げられて75がブロックするんです。ここもエレガントに作ってるんですね。

収束で307手目26飛と桂を取ったところ。このあと作意は95玉、25飛と続くが、攻方が剥がしをさぼって5段目に歩を残しておくと、25飛が王手にならない。

なんでアルカナの方が楽かというと、天月舞は中合の歩が擬似的に移動していたけど、アルカナはと金が直接移動するんですね。だから中合の処理を考えなくていいし、と金でできるからたくさん置いて手数が伸びるのも利点です。


1999年8月 橋本孝治 アルカナ

さっきの課題を天月舞型で全部根性で解決したのが近藤真一さんです。双玉なんですけど攻方は金銀の代わりに使ってるだけで、中合が残ったときの変化とかの意味付けは逐次設定してやってます。


2004年7月 近藤真一

陽炎は何がポイントなんですか?


2013年2月 添川公司 陽炎

まずは単玉でやってるのが技術的にはポイントだし、飛車打ち飛車合の間に新世界っぽい飛車成の手順を入れることで手数をちょっと伸ばしてます。


1981年3月 森長宏明 新世界

陽炎は83飛にすぐに84飛合とせず94玉、93飛成、85玉、83龍としてから84飛合とする。この一度よろけて飛車を成らせて手数を稼ぐ手順が新世界っぽい。

構造的には一緒なんだ。
中合が残ったときどうしようとかには9筋はあんまり関係してないんですか。
細かく言えば関係してますが、それは別の理屈で作ってあります。
天月舞みたいに双玉で処理をしない場合は変化で必ず歩のある方に追わないといけないんですか。
実は別の意味付けもあるんですけど、それをやってる人はまだいないですね。
いのてつさんの最近の作品も変化処理は歩のある方に追っていくんですよね。
そうです。


2023年4月 井上徹也 静かの海

こういうのよく作るよなって思いますね。
4段目に歩が残ってるときは全部詰まさないといけないし、5段目に残ってると詰まないっていう変化を作らないといけないんです。
やりたくねー。
それをやりつつ収束も作らないといけない。結構大変なんです。
だいぶ大変でしょうね。あんまり空間使いたくないんですよね。なんでそんなところで変化作るの。めんどくさい。って思っちゃいますよね。
思っちゃう。
ばちばちに縛りたいんですよね。
長編の場合は空間で作らないと駒が足りなくなるので。
でも空間で変化をがんばらない再帰連取りのスマートな意味付けをいのてつさんは持ってるってことですか。
そうなんです。この前の詰工房で新ヶ江さんも同じことを言っていてびっくりしました。天月舞の意味付けは今はまだ双玉型と根性型しかないんですけど、考えたら他の意味付けもありそうな気がします。
新ヶ江さんが考えてるっていうのが意外でした。
長編趣向作のイメージもないし、そこに興味があったことすら意外でした。
逆算系の作品作ってるイメージでしたね。
新ヶ江さんは結構いろんなこと考えてます。

長編は作るの大変ですね。1作1作が重い。
検討が大変なんですよ。
自分からするとアイデア出しから別世界だなって感じなんですけど、アイデア出しと図化だと、それでもやっぱり図化の方が大変なんですか。
ものによりますね。
イデアだけなら、再帰趣向とか、できるかどうかは別として、発展させてみようって思ったときの選択肢はいろいろありそうな気がします。構想作がよくやる組み合わせでよければネタは困らなさそうかなって気はしました。
組み合わせだとあんまり現実感のないネタも多いですね。まあ、それでもやってみたらできる場合もあるんですけど。
馬鋸で再帰連取りも組み合わせっちゃ組み合わせじゃないですか。あれを思いつけるかは別としても。
言葉にするのは組み合わせでよければ出るかもしれないですね。
そんなにネタに困らなそうかなっていう印象はあります。作らないで言うのもあれですけど。でもその中には絶望的に難しいやつが混ざってたりするんだろうな。それこそ田島秀男が手掛けるものもありますしね。トリプル七種合だってネタ自体はなんてことない、なんてことないって言っちゃうとあれだけど、みんな言ってたって言う方が正しいかな。
言うだけなら誰でもできるってやつですね。
やっぱり手順にするのが大変ですね。
手順にするのと、手順ができたものを最後詰将棋にするのが大変です。手順にするのと詰将棋にするのどっちが難しいかはなんとも言えないところですね。

いのてつさんからすると800手超えのプロットはまだまだあるだろうって感じですか?
全然分からないです。手数でどうとか思ってないんで。
最近は超長手数はあんまり盛り上がってないですよね。
記録狙いはありますね。
最近すごいなと思ったのが吉田京平さんの連続捨て駒の記録作なんですけど、いのてつさんどうですか。
すごいのかどうかも分からなかったです。すごいっていうのは記録をぎりぎりのところで実現していてすごい?
よく作るなっていう。
それはそう。
記録作は、がんばったら作れるなっていうのが多いんですよ。過去にここまでできていて、そこにプラス1しましたっていう。あの連続捨て駒は、よくその記録を目指そうと思ったなっていうのもあるし、よく作るなあと思います。詰将棋としていいかは置いといてね。私が記録作好きなのは一歩一歩進んでる感じがいいなと。
詰将棋を前に進めた感じがする?
再帰趣向でもなんでもいいんですけど、何かのジャンルの歴史を振り返ったときにそこに入る作品に惹かれます。

久保さんはいつか煙詰1個は作っとこうと思ってるタイプじゃないんでしたっけ。
不純な動機としてはありますよ。作れることを証明しておいたほうがいいのかなみたいな。でもそのために煙詰のノウハウを学んでまでやりたいとは思わないですね。もっとみんなすごいの作ってるから。どうせ作るなら岡村孝雄さんみたいなのを作りたいんですよ。
岡村孝雄さんみたいな煙詰ってどういう意味ですか。
歴史に残る煙詰です。「七種合煙の中ではこれが一番いい」っていうのには興味がなくて、歴史上これが初めてですとか、そういうところに価値を感じますね。煙詰の最高峰はこれですっていうのが完璧に打ち立てられるなら作りたいですけど、そんなことはありえないので。大崎さんはどうなんですか。
馬屋原さん的な方で歴史に残らなくていいから1個作っておきたいなって思ってます。それと同じくらい800手も作ってみたいと思ってます。
どっちかっていうとそっちの方があるかな。800手となると何か新しいアイデアが必要だと思うんです。でもどうせ作るなら1525手超えたいですね。せっかくアイデア出してがんばって作っても800手じゃ歴史に残らないんで。
超長手数の歴史を語ったら、寿があり新扇詰がありメタ新世界がありミクロコスモスがあり、4作で語れちゃうじゃないですか。この中に入りたいんですよ。狙った結果800手なら仕方ないけど、どうせがんばって作るんならそこ狙いたいです。
いのてつさんは手数気にしてないってことは1525手超えたいっていう気持ちもそんなにないんですか。
記録を目指して作れるもんでもないと思ってるんで、新しい構造の長編を作っていくなかで、運が良ければものにできるんじゃないかなあと思ってます。冷静に考えて1500手って長いんですよ。

記録を目指して面白い趣向作が作れるイメージ無かったんですけど、幻日環が出てきて、そういう方法もありなんだなと思いました。
高い山を目指せば面白いものができるんでしょうね。
登るルートは違っても登るところは同じですか。

第2回 詰将棋サイコロトーク 私のバカせまい史編

前回の続きです。

いのてつさんの発想法について、せっかくなのでこの作品についても教えてください。


2011年3月 井上徹也

龍追いしながら受方の置き駒を剥がしていく作品。初形で62に歩があるが、龍追いを1周すると72に歩が移る。もう1周すると62に戻る。72歩のときしか駒が剥がせないので、駒を1枚剥がすのに2周必要となる。2分の1手龍追いとか微分龍追いとか呼ばれている構造。

8筋9筋の追い方がまず珍しいですよね。
そうですね。
さらに微分龍追いもしていて、どうやって思いつくんですか。
それは完全に駒の軌跡から思いついたんですよね。左側を龍鋸で追っていく部分が思いついて、回転龍追いで趣向作にできないかなっていうのが始まりでしたね。で、追っていくと72歩62歩の切り替えは必然というか、他に追い方があまりないんですよね。
72歩62歩が切り替わるようなのを作ろうと思って作ってるわけじゃないんだ。
これは全然そうじゃなくて、駒のイメージから作ってるんですよ。趣向作って2パターンあって、この構造を作ろうっていう言葉から作る場合と、駒のイメージから作る場合があって、この作品は龍鋸の軌跡から作りました。
後付け微分なんですね。
きょういち意外でした。実は72歩62歩みたいに歩の位置が切り替わるのは、最小公倍数作るとき最初に考えてたんです。でも龍追いがうまく繋がらなくて結局諦めたんです。切り替わるロジック自体は作ったんだけど、うまく龍追いに接続しなくて。


2016年11月 久保紀貴 LCM

龍追いを繰り返す意味付けは置き駒消去になるんですけど、単純に取っていくだけじゃつまんないなとも思ったんで、もっと回転たくさん増やせたら面白いよなあっていうので、ひねりだしたのが72歩62歩の違いで歩を取れる取れないの仕組みなんですよね。
でもあの作品のテーマはあそこですよね。そうはいっても。
テーマはあそこプラス新しい龍追いの手順。どっちかではない合わせ技です。
そこもあるんだ。
趣向作も構想作と同じで背景を知ってないとなかなか見えてこない部分もありますよね。龍追いを見たときにこれは新しいよねってなるのは背景を知ってるからなんですよね。そういう見え方がなかなかパンピーにはできない。詰将棋に限らずですけど。
知識もだし、作ったことがないと分からないこともありますね。添川さんの阿吽は龍追いの軌跡自体は普通なんですよ。


2008年11月 添川公司 阿吽

1周ごとに48歩と49歩の位置が切り替わる。49歩のときだけ桂が手に入るので、1枚の桂を手に入れるのに2周かかる。初の2分の1手龍追いとされる作品。

私なんかは2分の1持駒変換なんだなあとしか思わない。こういう作品では龍追いは手段だと思っていて、阿吽の龍追いが類型的なのは気にならないです。

長編も面白いっすね。
長編面白いとは思うんですけど、作るにも見るにもカロリー消費するんですよ。
見るのも?
詰パラがkifファイルで読めるならまだ読みやすいんだけど。頭のなかで並ばないし、盤に並べるにも駒が多いし。私が長編やらないのは、中高生の頃に頭の中でパラ読んでると大学院だけ並ばないから読まなかったんです。
え、読みもしないんんですか。
上っ面だけ読んでるというか。手順は1回も並べてないです。だから長編やってないんですけど、見ると面白いんですよ。
創作のカロリーも高いですけどね。
大崎さんは並べてました?
盤駒で並べてはないですけど、最初から結構好きでしたね。
頭の中で並べて?
そういう意味では並べきれてないんで、ロジックを読んでるんでしょうね。看寿賞作品集を初めて読んだときは赤兎馬でめちゃくちゃ感動しました。
私の知識レベルでは赤兎馬と言われてもどんな作品か分かりません。
え、ご存じない?
名前は知ってます。馬鋸関係ですよね。
赤兎馬っていうくらいだからね。複合馬鋸で超長編をつくった最初みたいな作品です。


1979年7月 山崎隆 赤兎馬

前に馬屋原さんにも言ったんですけど、超長編の歴史を紐解く本が欲しいです。2017年の全国大会の前夜祭で連続合の作品を過去から見ていったときに思ったんですよ。ああいう見方をするのが一番分かる。この作品はこういうところで歴史を前に進めたんだ。じゃあ次は何を作らないといけないんだ。っていう話になるんですよ。
それ面白いですね。
でもこれができる人って相当限られてるはずで、それこそいのてつさんとか馬屋原さんが書いてくれないと成立しない企画だとは思うんです。この本があったら私ももうちょっと長編いけると思います。
鑑賞する上でもそういう本があるといいよね
構想作って歴史が新しいというか、そんなに昔から段階的に進化していった感じでもないじゃないですか。今思えば。
んー?森田手筋の歴史とか長いは長いですよ。
森田手筋の歴史っていったときにそんないっぱいあるのかな。そんなバリエーションに飛んでる気しないですよ。
不利合の歴史も語ったら長いでしょう。
所詮昔やられてたのは普通の不利合じゃんって感じになりそうだけどなあ。
久保さんが不利合に詳しいからだいたい同じに見えてるっていうのもあるんじゃないですか。
詳しい方が細かい違いは分かりますよ。

それぞれどれくらいの分量になるか分からないけど長編の歴史もほしいし構想作の歴史もほしいな。
プロパラから著者いのてつさんで。
難しいのは例えば複合馬鋸も構造は同じだけど趣向は違うっていうのもあるし。
全部は触れなくてよくて、これは歴史にインパクトに与えたんだとか、これがあって次の作品に繋がってるんだみたいなのを、繋げたらそれでいいんじゃないですか。この作品はここが良くてとか言い始めると大変だけど、すべての作品にいいところがあるのは前提として、その中からかいつまんで。
ひとつ書いてみたいなと思ったのは、再帰趣向の歴史というか仕組みは一度どこかで整理したいなと思ってます。
そういう狭いので全然いいと思います。

いのてつさんが最近発表した飛車と歩の再帰連取り。あれはまだ系譜に乗ってるんで理解はしやすいんですけど、合駒を飛ではなく角にして馬で追って途中で歩を取ればいいって、こんこんと考えてたどり着くんですか?
最初に並び歩の再帰連取りを馬鋸で実現したらどんな手順になるんだろうなっていうのを言葉で思いついたんですよね。
じゃあ最初は天月舞型でもなかったんですか。
形は天月舞型でした。それで成立する条件を整理していくと、飛車に角合は出るんでしょう。で、馬鋸でいったら飛合をするんでしょうっていうのはなんとなく分かってくるんですけど、そのあとどういう趣向手順でいくのか、どこに馬鋸を置くのかっていうのが分からなくて悩んだんですよね。そもそも中合で連取りさせるっていうのが大変なんですよ。
アルカナ型の方が簡単ってことですか?
そうそう。
前提知識で語られるとついていけないんですけど。
有名作しか出てきてませんよ。
アルカナは分かるんだけど、アルカナを構造的に理解してないんです。アルカナの私の理解は再帰連取り。終わり。
1号局の天月舞を見てみますか。この趣向作るのいろいろ大変なんですよ。

まだ続きます。

第2回 詰将棋サイコロトーク 最短距離で駆け抜けるよ編

前回の続きです。

相馬さんの歩の連続合が看寿賞じゃないのが驚きでした。


2022年6月 相馬慎一

85飛成に55歩と普通に受けると45馬左、24玉、62桂成と進み、15玉は16馬、同玉に96龍引があるので受方は歩中合で94龍の位置をずらしたい。44と55は二歩で打てず、85龍との交点に84歩と打つしかないが、これにはどちらの龍でも取らずに74龍!と入るのが好手で、以下、15玉、16馬、同玉、76龍、56歩、同龍、同と、27金、15玉、16歩から詰む。74龍と入ったところで84龍左や84龍行と歩を取ってしまうと4段目に龍の利きが残って最後の16歩が打歩詰で打てなくなる。戻って受方の最善は85飛成に75歩!と龍に近づけて中合する手。こうしておくと45馬左から先と同様に74龍まで進んだときに75歩が邪魔で76龍と引けなくなっている。同じ論理で75同龍にも65歩が最善で、65同龍、55歩と3連続の歩合を経て収束する。

去年の受賞作とロジックが被る部分があるのが嫌われたんですかね。


2021年7月 相馬慎一

馬をダブらせるための連続合。

去年の作品はすごすぎたけど、相馬作が去年から今年にジャンプした幅と、これまでの連続合の作品がそれまでの作品からジャンプした幅を比べたときに決して劣ってるとは思わないです。

玄人じゃないと理解できないところがあるんですよ。
選考委員は玄人でしょう。背景を理解しないと「連続合ですね」で終わっちゃいます。
作品としては今年の方が好きです。構造が伝わりやすいので。
去年は何やってるか分かんなかったです。
去年は収束の繋がりもタイミングがずらされて、関係ないところで悩みました。今年の作品はロジック通りに最大限繰り返して収束に入るので表現として伝わりやすいなあと。
岩村作が2作受賞するなら片方相馬作にしても良かったと思うんだけどなあ。私はこれが去年のベストワンだと思ってました。連続合で新しいことをするのがどれだけ難しいか。
合駒も去年は2連続で今年が3連続ですしね。
去年は破調があるので1.8くらいの印象です。
荒野の七人は特別賞に回して相馬作が受賞してほしかったな。


2022年11月 岸本裕真 幻日環

7種合x3

幻日環は言わずもがな
これが取らないとなんのための看寿賞か分からないですよ。よく手順構成を考えましたよね。
特にこの57角がすごいです。
いやでも正直全部すごいですよ。作れって言われても途方に暮れそうです。
2周してもすごいのに。
2回やれば十分だと思ってたけど3周目いくのはさすが執念ですね。2回は趣向ではないけど一応あるから。


1981年12月 深井一伸 七対子

7種合x2

全然違いますよ2と3では。
それはそう。
やってる途中で2に妥協しようと思った日もあったと思うんですよね。
逆にここまですごい作品だから妥協したくなかったのもあると思いますよ。最後なんて詰んでるだけですごいんだから。
逆算で合駒だしていったらしいですね。
部分部分で見せてもらってて、香合桂捨ての部分を見たときは、完成はまだ先かなと思ってたら、いつの間にか全部うまいことくっついてました。
不思議だよね。なんで七種出るのか。
素晴らしいです。誰もが文句なしの受賞でしょう。


2022年9月 井上徹也・馬屋原剛

龍追いで発生した歩合を遠くから馬鋸で取りに行く趣向作。

趣向のところはいのてつさんに聞いてた気がします。
うまくんに合作をお願いするときに久保くんもいたかも。
自分もなんかの会合で見せてもらった記憶があります。
2014年ののんびり会とかですね。
そんな昔?
結局作りきらないで10年くらい放っておいたんですけど、お蔵入りにするのもなと思って、ちゃんと作り上げてくれるだろう馬屋原さんにお願いしました。
責任感と作図力のある。
一度複合馬鋸で取った歩が復活するという新しいテーマで、なんでぼくがこんなに苦労したかというと、この作品は2回繰り返すんですけど、3回できると思ってたんですよ。そこがうまくいかなくて、2回で妥協する踏ん切りがつかないというのもあって。
結局2回で妥協したということですか。
そうしないと収束できないんですよね。趣向はポテンシャルがあって、自分でも面白いと思ってます。
馬鋸で取る歩が龍追いで復活するのは初めてなんですか?
初めてですね。収束も龍とか馬を捌いて、うまくんの作図力で素晴らしい収束をつけてくれたんで、完成度もあるかなっていう感じですかね。
例年なら文句なく満票の看寿賞でしょう。


2022年2月 石本仰

14歩の打歩詰を巡り、角打香合、香打角合で盤面が少しずつ変化していくなかに13歩邪魔駒消去や29香最遠打といったキーが仕込まれた知恵の輪作品。

石本さんの作品が2票。
石本さんは長編の中で手数が短いので損してると思うんですよね。いつもいい作品なんだけど、長編の枠だから看寿賞取れてないんじゃないか疑惑があります。
長編と超長編でわけてくれてもいいですよね。
この作品もすごいです。中編賞間違いなしぐらいの感覚です。
29香のタイミングとか面白いし、62飛が最後32に動くんですけど、62にいるときじゃないと角が打てないってのがあって、飛の利きで56角が限定打になってるんです。そういう細かい作りもかなりこだわっていて。
これ傑作でしょう。さっきの2作が取ってこれが取らないのは分かるけど、もったいないというか、別のジャンルとして評価してあげないといけないんじゃないのっていう作品には感じますよね。単純にどっちが上といえる作品ではないじゃないですか。
風みどりさんも心の中で中編枠を拡張しての投票でした。
他には天動説もあったのか。


2022年3月 岸本裕真 天動説

55の攻方王が2回動く双玉煙。

一次投票では候補になってましたね。
今年は対抗馬が強かったですね。そのなかで石本作2票入るくらいなんだからって気はしますよね。わりと奇跡的な出来だった気がします。なかなかこう上手くキー入んないんじゃないのっていう。
手数帯が厳しいんですよね。
いまの制度上はしょうがないけど、こういう作品が出るたびいつも思ってます。
8手削るわけにもいかないもんなあ。
看寿賞のために手を削るっていうのはないでしょうね。

ぱっと見は今年受賞作多いなと思ったんですよ。いままで渋ってたのもあって。でもこう見てみるといい作品多かったですね。

いのてつさんも趣向作で岩村さんみたいに過去の作品の系譜にない作品を作るじゃないですか。ああいうのってどうやって考えてるんですか。
今回の長編でいうと起点となったのは伏線的に歩合を発生させておくのにどういう意味付けがあるかっていうのを考えていて、前に作ったのがあったんです。


2015年8月 井上徹

23歩成、14玉、13と、同香、47馬、36歩、同馬、23玉、32飛成、24玉、35龍、23玉に24歩と打つと収束ルートだが、打たずに45馬から玉を追い回して26歩合を発生させ、再び局面を戻して24歩と打つ。

すぐに収束に入ると21歩合が利いて詰まないんですね。なのでちょっと回り道をして26歩合を発生させておくと収束できますよと。この作品を作っていて、他に歩合を置いておくと有利になる意味付けとして馬鋸で取るのはどうだろうと考えたのがきっかけですね。
そこを考えたとしてもなかなか繰り返しの中に入れられないですけどね。そこにはだいぶ隔たりがあるじゃないですか。序で発生させておくのとサイクルの中で発生させるのはわけが違うから。
単に発生させるだけだと駒場さんも作ってるし、新しくするには繰り返すしかないかと。


1998年6月 駒場和男 秘宝

序盤に96龍、98歩合の2手を入れ、その歩をあとで馬鋸で取りにいく。


1985年2月 近藤真一 完全犯罪

序盤に99龍、98歩合の2手を入れ、その歩をあとで馬鋸で取りにいく。煙詰。

さすが長編作家だなと思うのは、繋ぎの趣向手順が何も無い空間を追うじゃないですか。知恵の輪みたいな追い方は分かるんですよ。龍とか馬とか使って空間を追っていくのってなかなか難しくて、それはいつ作れるようになったんですか。
うーん
馬鋸部分も飛車合が入って複雑ですよね。右下に追っていく手順との兼ね合いもあるんでしょうけど、その辺がなんでうまいこといってるんでしょう。
無数の可能性がある中でなぜこれが選び取れるんですか。
実は無数は無いんですよ。歩合を馬鋸で取って、また発生させようと思ったら、まず歩合の位置は27でしょうと。
そこはまだいいです
そこから馬鋸できるように左辺に追っていく手順を想像すると、おのずと決まってくるんです。
おのずと?
(笑)
合駒が無いことを利用して追ったりするじゃないですか。その辺が分からないんですよ。
普通は合駒あるからね。
歩合させるのは馬しかないじゃないですか。
馬しかないわけじゃないけど、まあ、はい
歩合発生のために38に馬置いたら馬鋸始めるために55まで戻さないといけなくなってるじゃないですか。それはまあ戻せるだろうってことですか?
戻せるというか戻さないといけないというか、戻せないこともあるんですけど、今回は戻せたんですね。
38馬、27歩合には龍引くしかなくて15玉、37馬、24玉、せっかく歩合あるし26龍かなあみたいな。
そのとき25合が効かないのは当たり前に頭はそっちに働いてるんですか。自分なんかは25金合されたらどうしようってよぎっちゃうんですよね。
そこは考えなくていいでしょう。
答え見たらまあそうかなんですけど、右上3x3の配置と追い方の選択肢はもっとあるじゃないですか。26龍のところで一旦35龍するとか。46馬、23玉とか
それでもできるかもしれないけど遠回りしすぎてる気がしますね。
最短でいこうとしたらこうなるよっていうのを結んでるんですか。
馬鋸のスタート地点の55に馬が行かないといけないから、47桂は配置するでしょうとか。そういうところから全体の手順をイメージしてます。
どうやって55馬とするんでしたっけ。
45龍に44飛合が出るんです。
そこにまた発想の飛躍がありますね。
取って取って55馬、34玉、35飛、43玉、45飛に34玉と戻られて構想が破綻する可能性もあるんですけど、今回はうまくいったんで。それで63玉まで行ったら馬鋸の構図じゃないですか。
繋ぎは遠回りせずシンプルでも、馬鋸は複雑に作ってありますよね。飛車取ったり龍捨てたり。
これはたまたまなんですよ。最初は普通の馬鋸で作ってたんですけど55桂の筋とかで余詰が厳しかったんです。
逆にね。そういうことはありますね。
じゃあ飛車取らせちゃったらいいじゃんってことで、馬鋸の複合化はたまたま入りました。
追うなかで飛車合を出したことで常に飛車合の変化がつきまとうようになったじゃないですか。それって苦労しつつやっていくんですか。毎回ここで飛車合されたらどうしようかなって、それとも飛車合くらいならどうにでもなるだろうって感じですか。
中編作家の感覚からしたら飛車ならどうにかなる感覚ありますよね。香車とかは厄介そうですけど。
あんまり気にしたことなかったですね。飛車合されてもまた取って使えばええやんって思っちゃいますね。
飛車合ならあんまり苦労しなそうな感覚ではあるけど、ただ自分ならめんどくさいから避けれるなら避けたいなって思いながら作るだろうな。
飛打飛合が好きなんですよね。シンメトリーなんかでも使ってますけど。相馬康幸さんの影響もあって。
そんな影響があるんですか。
影響というか好きですよ。あの人の趣向作は。

まだ続きます。

第2回 詰将棋サイコロトーク 岩村凛太朗は細マッチョ編

サイコロトークで集まったけど、せっかくなんで看寿賞について喋りますか。


2022年7月 相馬慎一

馬方作の方が新しい気がします。


2022年5月 馬方四季

合駒を2枚出して動かすのは太刀岡さんの裏短コンに前例がありますが、馬方作は初形がきれいなのと、変化と紛れで桂馬の跳ね違いがあったりで手順に厚みがあります。
相馬作は手順が派手だけどスイッチバックなんですよね。馬方作は大げさにいうとエポックメイキングです。
自分も双玉より単玉を評価したくなります。
相馬作はロジックを紐解けば、そんなに不思議な手順ではないんですよ。
25龍、16玉の仕組みを誰も見つけてないので、ある程度の発想力は必要かと。
みんながこれを目指していればそうだけど。動くと逆王手っていうのは他でも活用されている形なので、そこまで感動しなかったですね。両作受賞でもいいけど、馬方作が上かと思いました。
検索しても太刀岡作が見つけられないです。
それは私が結果稿を上げてないせいですね。
え、じゃあ裏短コンは匿名出題だから太刀岡作かどうかも本当は分かってないってこと?
動画配信で発表はしました。
もしかしてちゃんと結果稿あげてたら前例ありで受賞しなかったとかないですか?
その場合は私のおかげで受賞したみたいなもんですね。
そこは選考の中でちゃんと議論されているので、結果稿の有無は関係ないかと。
看寿賞は前例に厳しいイメージがあったけど今回はセーフだったんですね。まあでもちゃんと見ると太刀岡作は香合香合で打歩詰も絡まないから差はあるか。
合駒制限と双玉も使ってますからね。


2019年11月 太刀岡甫「ボンバーマン

89龍、83香、65角、56香打、47桂、89香成、59龍、同香成、55桂。

相馬さんと馬方さんが同一人物なのってパブリックなんですか?
受賞コメントも別々でやってますね。でも相馬さんのTwitterでは馬方作を自作として紹介してるので、公にはなってると思います。
馬方作は歴史に残りますね。シフマンの話をするときに必ず出てきます。3票しかないのはびっくりしました。他に強い対抗がいるなら別だけど。
他だと鈴川さんの作品とか。


2022年1月 鈴川優希

8筋9筋で小さく角の開き王手を繰り返し、最後に59角とダイナミックに引いて詰み。

これは好きです。受賞してても文句ないです。
あとは斎藤さんの。


2022年4月 齋藤光寿

27桂、24玉で15桂と飛車が取れるところ35金、同飛と逃してから15桂と跳ねる。同じことをもう一度やる。

これもいいですね。好み次第では馬方作よりこっちかもしれないです。駒数は少ないとはいわないけど個人的には妥当な駒数に見えます。
89角は67角にも置けそうという話がありましたけど、構図的に89の方がよくないですか?
自分は67に置けるなら67に置きます。
67の方が小さい意味合いはあるけど、89の方が幾何学的にはきれいですよ。
きれい?
89の方は直角三角形なんですよ。67はいびつな三角形で。ぱっと見たときの印象ですけど。
うーん?これは作者に聞きたいなあ。なんで89に置いたのか。
あまり気にしてないと思いますけどね。
気にしてなかったらコンパクトに67に置くと思うんですよね。詰パラって6筋に収めると図がちょっと小さくなるんで、6筋に収まるなら収めたくなります。
私は勝手に6筋表示にしないでって思ってます。9x9のデザインで作ってるので。


2022年4月 岩村凛太朗

初手87王に88桂成、同角、77桂成、同角、66桂と受方が3枚の桂を跳ねる。作意後半で攻方も同じように3枚の桂を跳ねる。

テーマは置いておいてもテイストが新しいですね。狙うところそこなんだみたいな。みんなが見てるところと違うところを見てる感じがします。やろうとすると相当難しいけどきれいに作ってありますね。
最初の桂捨てはよくあるけど、これを先手にもやらせようと思うのがすごいですね。
繋ぐ手順構成をうまく作りましたね。
受賞の言葉の半沢直樹ってどういうことですか?
桂馬の三段跳びの倍返しってことですかね。
ちょっと論理の飛躍がありますよ。
そこが天才のゆえんですね。

こっちの作品の受賞の言葉では「いないいないばあ装置」という謎のワードが出てきます。


2022年9月 岩村凛太朗 攻野に並ぶ七人

33歩成、同成桂が21の角による逆王手で、そこで43歩と打つ手は攻方の合駒とみなせる。以下、歩から飛まですべての駒を順番に攻方が合駒で打つ。攻方七種合。

攻方七種合はいつもなんのこっちゃと思ってるんですけど、この作品は見れます。
条件達成しただけだとだからなんなんだですけど、この作品はいないいないばあ装置が詰将棋として面白くないですか。
ここがないとただ流れで出しましたになっちゃいますからね。
七條さんや駒場さんの作り方とは違いますね。
私は、岩村凛太朗は現代に蘇ったスマートな駒場和男だと思ってます。テーマの選び方が駒場和男っぽいんですよ。ロジカルじゃないところにテーマを見出しに行ってるところが。
選考ではトリプルジャンピングアタックは繋ぎの手順が弱いという評もありました。
弱いんだけど、あれで繋がるなら山田修司の59香ばりの上手さだと思いますね。これだけ自然に繋がれば上出来でしょう。
スマートだけど剛腕でもありますよね。繋げていくのは。
剛腕なんだけど力こぶ見せてないんですよ
駒場和男は?
ばりばりに力こぶ見えてますよ。だから岩村さんは細マッチョで駒場さんはゴリマッチョです。


2022年7月 山葉桂

この作品は初めに見たときに看寿賞だなと思ったのを思い出しました。だって七種中合ですよ。
私は最初の仕組みで最後の飛車まで出してほしかったです。いないいないばあ装置だけで七種合は無理そうだけど、山葉作は惜しいので、惜しいがゆえに思ってしまいました。最後の飛車もここで出ないかなって。

中編はどれも受賞級だけど3作受賞は意外でした。どれか外れるかなと思ってました。
會場さんが3作投票したので會場さんのおかげといっても過言ではないです。

長くなったので続きは別の記事にします。

第1回 詰将棋サイコロトーク 山梨富士山編

サイコロを投げて出た目に書かれている詰将棋用語について喋るという、合コンで大盛りあがり間違いなしの企画を思いついたので、いのてつさんとくぼさんを呼んでトライアル開催してみた。カピバラアイコンがいのてつさんで、ネズミアイコンがくぼさん。詰将棋用語は「誰も言わなかった詰将棋用語集」の見出し語を使った。

最小公倍数原理
いきなり重いやつだ。
何すればいいんでしたっけ。
テーマに合う作品を語ったり、無かったら作ったり。せっかくなんで駒種のサイコロも振りましょう。
最小公倍数原理は何作品あるんですか?
伝統ルールだと2つです。
2作目はどういう公倍数なんでしたっけ。
右の飛車の位置と左の飛車の位置ですね。


2017年11月 中村宜幹 ヘミオラ

受方の飛車が63→73→63と往復している間、攻方の飛車は24→14→34→24と動く。73飛・24飛のときだけ収束に入れるが、飛車の動く周期がずれてるので2x3の6回同じ手順を繰り返さなければならない。

あ、これと金知恵の輪だからテーマの「最小公倍数原理+金」になってますね。
「金」と「と金」は一緒なんですか?
「と金」の目も用意してあるので別でした。
実は自分も最小公倍数原理考えてるんですよ。まだ構想段階ですけどxxxがxxxでxxxになって。
それ実現できたら面白いですね。
最小公倍数じゃなくても、3サイクルや4サイクルの趣向って珍しいんですよ。
合駒パクリながらぐるぐる回して品切れ狙うやつは?


柏川悦夫 駒と人生 第18番

86桂、95玉、74桂、94玉~82桂成、74桂合、86桂を4回繰り返して桂を品切れにする作品。

あれは循環しないので。無限に回し続けられないとだめです。
4サイクルで無限ループといえば香4枚の持駒を桂4枚に変えて、また香4枚に戻す田島さんの作品を思い出します。
あれは状態としては香4と桂4の2状態だと思ったけど、香4・香3桂1・香2桂2・香1桂3・桂4の4状態とも見ることもできますか。そういう意味では4サイクルの作品もまあまああるのかな。
この作品が特殊で、あまりないとは思います。


2005年11月 田島秀男

攻方の持駒桂4枚を香4枚に持駒変換して馬鋸を1つ動かしたら、今度は香4枚を桂4枚に持駒変換して馬鋸を1つ動かす作品。馬鋸は合計4回動くので、4枚の持駒変換も4回行われる。収束余詰。

この作品はえぐい。
次のテーマいきましょう。
モデルメイト
手が広いので駒種ではなく、もうひとつ詰将棋用語を出してみますね。
不利逃避
ちょうどパラの今月号(2023年5月号)にモデルメイトの話出てましたね。
「モデルメイトは、玉周辺のマスに攻駒の利きが重複しない詰上りのこと」と書いてあります。
モデルメイト兼不利逃避なんてあります?


誰も言わなかった詰将棋用語集 P16モデルメイトの説明図

44歩を不利逃避で取らせて45歩と打ち返すとか?
フェアリールールにしてみるのはどうですか。モデルメイト以外は詰みと認めない。
ばかならやりやすそうですね。かしこでやったら不利合が簡単に出せそう。45に銀を打たせた方がモデルメイトにならないみたいな感じで。でも作るのは難しそうですね。一見無理な方に逃げてもモデルメイトじゃないからと逃げられちゃいそう。
変化もモデルメイトで詰まさないといけないんですね。
我々、フェアリーに走っちゃいましたけど、(伝統ルールの)モデルメイトも好きな人は好きですよね。逆に不利逃避の方はどうですか。
不利逃避で駒種を決めてみますか。
例えば44玉13金に22馬でヤケクソ不利逃避みたいな感じでどうですか。35玉、13馬、44玉、22馬、33合、同馬、同玉、13飛成。あんまり簡単にできてもつまらないけど。

どうせ取られる駒を先に取らせるのが、どんだけ不利なのかですね。
手数があけば不利感でるけど、すぐ取っちゃうとどうせ取るんじゃんってなりますね。
連取りで歩が並んでるんだけど途中の歩を序盤に不利逃避で中抜きさせておく方が長いみたいなのはどうですか。
ロジックは、連取りで歩1枚取ると攻方が2枚儲かるから連取りではないところで先に取らせておくみたいな?
あとは連取りでは歩が2枚同時に取れるので、片方はあらかじめ不利逃避で取らせておくとか。でもこれ広瀬さんの馬鋸にかなり近いな。


2010年12月 広瀬稔

初手99角に33歩は同角成、同桂、同角成から馬鋸に入り、87歩を取って戻って詰み。43・54・65・76の歩は道中取られるだけの駒なので、2手目から77歩、同角、66歩、同角、55歩、同角、44歩、同角と取らせておく方が手数が長い。

ヤケクソ以外の不利逃避の意味付けとしては退路開けとか打歩詰とかがありますね。
取歩駒の金を不利逃避で取らせても、それで攻方が金を持っちゃうからなあ。
金は打歩詰では無理ですね。一番高くて山梨富士山の角ですよ。
なんですか山梨富士山って。
え、1号局の51角取らせる作品です。
あれ山梨富士山って言うんですか。
はい。作者が。
あ、山田修司さんか。

高木手筋みたいになってて、不利逃避で金をもらえると、逆に別のところで別の駒がもらえなくて、道中金を消費させられちゃうっていうのは?
面白いとは思うけど構図が思いつかないですね。
単なる退路開けなら簡単にできそうですよ。35金15玉で24角に同玉は33銀、15玉、24飛成で詰むことにして、26玉、35角、15玉、24角、同玉、あんまり不利感ないかも。

不利逃避難しいな。
あんまり不利じゃないんだよね。
若島さんも「口が悪いやつは有利逃避と言う」って何かに書いてました。
それを言い出すと不利合も有利合ですね。
次のテーマ出しますね。これサイコロより詰将棋用語カードの方が便利だな。
発売しますか。バンダイナムコから。
誰が買うのそれ。
酒井手筋
酒井手筋のどこの役割を飛車にするんでしょう。
飛車の成生?
久保さんの角成生も酒井手筋ですか?
酒井手筋の定義があいまいっちゃあいまいなんですよ。
いつかの短コンに馬屋原さんが酒井手筋の最短手数を出してましたよね。あれは作者自ら酒井手筋と言っていた気が。


2021年12月 馬屋原剛

初手から46馬、54玉、53銀成は同飛左と43の方で取られて不詰。かといって初手66馬は53銀成に同飛右で詰まない。そこで馬の態度は保留して初手56歩とする。以下54玉、53銀成と先に受方に態度を決めてもらうのが後出しじゃんけんとも言われる酒井手筋。

この方がオリジナルの酒井作には近いと思います。自作が酒井作っぽくないのは、行って戻らないところで、どっちがプラス・マイナスというわけではなく原作とは違う雰囲気になってますね。
久保作は打診ですよね。


2014年9月 久保紀貴

23銀、同玉、14角、13玉、32角成は15角生で打歩詰、32角生は15角成で詰まない。14角を打つ前に26飛と捨てて受方の成生を先に決めさせる。26同角成には14角、13玉、32角成で、26同角生には14角、13玉、32角生で詰む。

打診の目的が相手に先に成生を決めさせることになってます。
この角対角の打診は最近どこかで見た気がするなあ。
森長さんの個展?


2023年2月 森長宏明

54金、同歩に44銀成は13角、66飛、同銀成で逃れ。44銀生は13角、66飛、同銀生で逃れ。44銀の開き王手より先に66飛として受方銀の成生を決めさせておく。

ほんとだ。銀対銀になってるんだ。
この作品が面白いのは飛車捨ての意味が同銀成で取ったときは取歩駒の発生で、同銀生で取ったときは55への飛車の利きの消去なんです。55への利きは44銀成と対応していて。
好きな作品だと思ってたけどそういう意味付けが隠れているのか。
これは成生に明確な大小関係がある角ではできないんですよ。いや、45角不成でできるのかな?まあでも面白い作品です。
森長さんの個展は4番も面白かったです。


2023年2月 森長宏明

初手84飛は73玉、82飛成、64玉、69龍、67桂合、62龍、63歩合で逃れる。初手から79龍、76桂合としておけば69龍、68歩合で次の62龍に63歩合が二歩禁になる。

桂合は若島さんにもあったと思うけど面白いのは禁則ルールを全部使ってるところ?
若島さんは角を逃さない意味合いじゃないですか?
若島さんじゃなかったかもしれないけど、桂合を挟むことで合駒位置を8段目に持っていく作品は見たことがあります。
それこそ森長さんの作品にありますよ。


1992年12月 森長宏明

初手53金は41玉、49飛、47桂合で逃れ。最初に59飛、56桂合の交換を入れておくと49飛に48桂合ができない。作意は48桂成、同飛と桂を捨てて47桂合を実現するが、1枚多く桂が手に入るので詰む。

(個展の作品は)桂合だけ切り出すと禁じられた遊び手筋だけど、それをなんでやるかというと62龍のときに歩合させないためで、なんで歩合が困るかというと歩合だとそのあと75歩が打歩詰になる。連鎖してるんですね。
初手84飛だと69龍、67桂合に62龍、63歩合で逃れなのか。
あれ?67桂合だとそもそも打歩詰にならない?
78龍、76歩合で稼げますよ。
67桂合、63桂合のときは桂が品切れだけど、67桂合、63歩合のときは76桂合ができるから、そうすると打歩詰にならないですね。連鎖してるのは二歩禁までかも。

やろうとしてることは面白いのに鍵が79龍なのが残念なんです。この初手を指すための何かがないと演出としては物足りなくて。

次を最後にしますね。
成香
偶然にも。
いまでたやつだ。
禁じられた遊び手筋好きなんですよ。ほどよいマイナー感というか。将棋指してる人は打歩詰は知ってても、8段目に桂が打てないことは気にしたことないと思うんですよね。
それでいうと上田さんの17角37角が好きです。
8段目桂合不可は打歩詰級に詰将棋のためのルールだと思ってます。
将棋のルールは桂合不可とは言ってないですからね。行きどころのない駒はだめですよと言ってるだけで。
そのルールが結果的に8段目に桂だけが打てない状況を作ったわけですね
上田さんの17角はどこから思いついたのか分からない感じが好きです。このまえシナトラくんと上田吉一論やったんですけど、好きな作品が一致してて良かったです。短編だとこれとか。
短編だとどれですか?
51玉に24角から始まるやつ。


1978年11月 上田吉

それをシナトラくんと2人だけで?濃いなー。
他には若島正論とか相馬慎一論とか。
濃いなー。

禁じられた遊び手筋ってあんまり作られないですよね。
大掛かりになりがちですからね。
でも最近やさしい大学院でありましたよ。割りとオーソドックスで、禁じられた遊びが桂を捨てるところで角を捨てるんです。それ自体は長い伏線になってないんですけど、角を捨てるために香を消去しておくところが伏線になってて。
表現が古典的で自分も好きです。
序の伏線の部分はよくできてますよね。
本人はあまり気に入ってないと詰工房で言ってましたけどね。


2022年12月 中丸哲

普通に進めると49飛に47桂合で逃れるので、あらかじめ68角、同龍の2手を入れて48歩合を引き出したいが、初形のままでは77香が邪魔で角を引けないので序盤に色々やって香を動かしておく。

いのてつさん詰工房行ってるんですか。
いのてつさんは常連ですよ。
最近のメンバーだとかいりゅーさんとか気になってます。
かいりゅーさんは芹田さんのお気に入りです。
よく絡んでますよね。
2人でよく三次会に行ってますね。

大崎さんは詰工房来ないんですか。
自分にとって詰工房は居酒屋で誰の横に座るか勝負なところあります。
最近は人も少ないから勝負もないですよ。
6月行きますか。
詰将棋について喋るなら、この会で十分でした。
話してみるとネタは思いつくもんですね。
やっぱり詰将棋用語カード作ろうかな。
違う創作意欲が湧いてますね。作ってゲームマーケットで売りましょう。
今日やらなかったけど符号も使いたかったんですよ。45とか29とか。
今日のテーマが難しいんですよ。駒種や符号と組み合わせるならもうちょい簡単なやつがいいです。
誰も言わなかった詰将棋用語集から選んでるから馬屋原さんのせいですね。
あれは名前が面白い用語を選んでるらしいですよ。
セルフピンとかバッテリーとか簡単なのも載ってたんでそれが出たらよかったんですけど。
最初が最小公倍数だったんできつかったですね。
駒種はブルータスとかならいけるんですけど。
かえって漠然としたネタが出たから良かった面もあるかも。
意外とテーマだけでも話せましたね。
これサイコロでもカードでもいいから詰工房の2次会もっていったら盛り上がりそう。
すべらない話みたいな感じで。カード引いた人が小ネタを出すとか。
詰まらない話?
いいですね。詰まらない話カードつくりましょう。
詰将棋用語集ってたまに誰かが作るけどまとまりきらず終わっちゃいますよね。
そうですね。ウィキとかあったけど。
鈴川さんに発注したらおしゃれなカードにしてくれるのかな。

また第2回やりましょう。
これあんまり一般向けではないですね。一般向けに説明しようとするとめんどくさいので、配信とかではなくて身内でやるのがよさそう。
あいばさんが解説しながら編集してくれたら普通の人も見れるかもしれません。
マイナビでやってもらいましょう。

名誉の味がする

1989年11月 行き詰まり「無への疾走」

「下段の香に力あり」の格言に従えば、初手は89香の一手だ。75玉と逃げる手に84銀と打ち捨て、これを同銀なら87銀まで詰むが、取らずに74玉とかわされると67銀には64玉、87銀には84玉で詰まない。

もう結論はバレてそうな気もするが気にせず続けると、次に考えたい初手は87香の短打だ。これなら75玉、84銀、74玉には89銀と香筋を遮らずに王手できるので詰む。ところが今度は84銀を平凡に同銀と取られて詰まない。

84銀に74玉は89銀まで、同銀は87銀までで詰ませたい。どうすればよいか。ここまで来たら簡単な話で、初手88香が正解である。

この構造、どこかで見た気がするだろう。お手元の誰も言わなかった詰将棋用語集の49ページを開いていただきたい。名誉手筋によく似ている。

「誰言わ」の定義には「利きを通すか閉じるか選択する」とあり、行き詰まり作の87銀は香筋を閉じるための手ではないので名誉手筋にはあたらないことになる。名誉手筋ではないが、30年も前に名誉手筋のような態度保留の一手を5手詰で実現したことを称えて、行き詰まり作には名誉名誉手筋の称号を贈りたい。