10年前に片山作が看寿賞を取ったとき、新規性や難解さを追い求めていない好形好手順の短編でも完成度の高さで看寿賞を取れるのかと、いい意味で驚いた。
たしかに、好形好手順には時を超える永遠の輝きがあるようにも思う。その系譜に自分の作品が加われるなら嬉しいことだ。
過去の看寿賞短編賞受賞作の中から使用駒10枚以下の作品を集めてみた。駒の数え方には盤上だけを数える馬屋原方式ではなく、盤上と攻方の持駒の合計を数える井上式を採用している。
10年前に片山作が看寿賞を取ったとき、新規性や難解さを追い求めていない好形好手順の短編でも完成度の高さで看寿賞を取れるのかと、いい意味で驚いた。
たしかに、好形好手順には時を超える永遠の輝きがあるようにも思う。その系譜に自分の作品が加われるなら嬉しいことだ。
過去の看寿賞短編賞受賞作の中から使用駒10枚以下の作品を集めてみた。駒の数え方には盤上だけを数える馬屋原方式ではなく、盤上と攻方の持駒の合計を数える井上式を採用している。
【問】大駒を2枚捨てる5手詰を作るとしたら、どういう作品にしますか。
柳原 飛の限定打×2。自作で言えばこれとかです。(1985年3月詰パラ)
久保 だいぶ縛りがきついですね。2枚大駒捨てるならでかい動きにするのかな。(受方11玉、19飛、31歩、攻方23銀、88飛、97角を置いて3分考慮)31歩がなくても飛成は香合で逃れてるのかな。完成!
31歩があるのとないのでは大違いで、これは運がよかったですね。気になる配置は最後に精査するのが大事です。
藤原 捨てるっていうのは相手に取られないとだめですか?相手に取られると面白くなりにくいんですよ。初手の意味付けが深いならいいんですけど、ただ捨てて取って捨てて取ってだと深みに乏しくなっちゃう気がします。攻方の妙手は捨て駒だけど、受方の妙手はそれを取ることではないので。
手順の雰囲気でいうと57金合だと47龍、同金のあと駒余りになるので、57馬、47龍、同馬で逆王手して38に何かを打って詰み。2手目は遠くから馬が来るより、近くにいて取れる飛を取らない方がいいですね。
馬屋原 激辛5手詰で見た作品が浮かんじゃうな。それを避けたら、じゃあこれで。これも前例あるだろうけど。
私は課題があると、その条件を満たす中で簡単に作れるものを作るんですよ。だからもっと難しい課題の方が得意です。表現を求められるのはちょっと。自分で作った課題だと、直接王手の歩不成を含む単玉の5手詰を最小駒数で作るというのがあります。私は11枚で作ったんですけど、弘中さんが8枚で作ってて弘中さんやばいなと思いました。
2024年2月キッズルーム 弘中祐希作
— ウマノコ@kisy門下 (@umanoko1525) 2024年10月27日
ウマノコチャレンジ(引用元参照)へのアンサーとのこと。わずか8枚とは驚き!!こんなところからも作者の実力を伺い知ることができる。 https://t.co/IpjVP0u6bh pic.twitter.com/CsAXvExjFu
他の人が「理論的に無理だろう」と言ったテーマを作るのも好きです。
井上 何も思い浮かばないですね。頑張れば作れるかもしれないけど、作風的に厳しい気がします。5手詰ってのがなあ……(5分雑談)いま思い浮かんだ構図はこれです。
作意は53角成、同玉、52角成、X、54龍まで。紛れで43角成、同玉、53角成はどう逃れるのか。53角成、65玉の変化で34角を43に捨てるのか56に捨てるのか。その違いで面白いことができないかな。
【問】第6回詰将棋創作キッズチャレンジA部門の課題「両王手が登場する3~9手詰」の最優秀賞に輝いた鈴木蒼大作をどう見ますか。
柳原 最初から持駒に桂があれば29桂~57龍の手順は真っ先に浮かぶような構図である。2手目同香には13龍の残像を見せておき、作意では桂合。よく計算されている。
久保 初手の龍に対して取る変化は金を捨てて角と龍の両王手、作意は龍を捨てて角と金の両王手なんです。作意と変化で2種類の両王手が出てくる。切り分けとして14桂は洒落てますし、手順は満点なんじゃないですか。パラの中学校に出てても、いいっすねってなると思いますよ。作者が武島宏明って書いてあったら、配置はもうちょっと整理できたんじゃないのって言うかもしれないけど。
香の品切れは惜しいですね。自分だったら72金を81馬にして、14合が前に利く駒だったら18に打って、同馬と取っちゃうと71への利きが外れて詰むという感じで作るかな。81馬が27に利いてるから23香も無くせるかも。とはいえ本作は良すぎるんでいじり甲斐がないですね。基本、褒めるところしかないですよ。
藤原 超短編を両王手という課題で作るとき、両王手は何手目にすべきか分かりますか?最終手です。この作品はまずそこをクリアしているのが偉い。どういうことかというと、例えば両王手が初手に来ちゃうと、2手目は玉を動かす手しか無理なんですよ。それは変化を削って1手無駄にしてるようなものなので、応手が存在しない最終手で両王手しないと超短編としての凝縮力に欠けます。
角と玉の間に3枚並んでる形をプロブレムではサードバッテリーと言うんですけど、3枚の駒をどの順番で動かすかで6パターン出せるんですよね。それを全部変化や紛れで出すのがサードバッテリーの究極の目標になります。この作品は初手の捨て方が2択になってて53龍を動かす手がないのが厳しく言うとウィークポイントですね。ただ、初手27金としたときに作意とは違うハーフバッテリーが出てくる。作意と紛れでハーフバッテリーを2通り出したのは良いなと思いました。サードバッテリーの前例には若島さんのフロンティア3番があります。
14桂は相当ひねってますよね。同香では応手を無駄にするだけなので、これは素晴らしいです。ただそれを同龍と取るのは違うような気がしますね。1桁手数で攻方の駒取りは普通やりません。全然無理な話をすると12龍を06に捨てて14桂を動かして13龍の両王手で決めると作意の一貫性は出ますね。9手じゃ収まらないけど。
もう一つ良い点を挙げると、14同龍は俗手で、29桂も捨て駒とはいえ俗手で、連続俗手になっちゃってるんですけど、29桂に26玉と逃げる変化があって、それは23龍という新たな開き方が出てくるんですよ。さらに36玉には34龍がぴったりだし、15玉には26角成がぴったり。この変化の作り方は好きですね。この作品は作意だけを見るんじゃなくて、変化紛れの絡み、作意との対比、全体像を見るべきなんです。
馬屋原 2手目同香には53龍を13に使って、作意は57に使うのが面白いですね。変化にまで気を使うのは意識的にやらないとできないですからね。はじめからサードバッテリーを知っていて作ったのか、間に龍を挟むと龍捨てが出るからやってみたのか。間に挟まってるのをどの駒から移動するのかっていうところで紛れが生まれるんだけど、作者としては余詰との戦いになるから大変ですよ。
配置はもう1枚くらい減りそうな感覚はありますね。開き王手はいろんな可能性がある中で一番意外な場所に移動したいっていうのがあるから、23香の過剰防衛はできれば外したい。とはいえ推敲どうこうよりも龍を縦横無尽に使う発想が非凡なので、そこを評価したいですね。
井上 14桂は面白い狙いだと思うんですけど、ちょっと惜しいなと思うのは、13龍を先に捨てると同香、12龍が両王手にならないという紛れは、作意とも関連してるので入れてほしかったですね。あとは龍を縦に動かす紛れが無いので、それができるとさらに面白くなるんじゃないかなとは思いました。14桂合も角の利きが無い方が疑似中合になって印象が良くなる気がします。
シナトラくん発案のイメージと読みの詰棋観をやってみました。
この企画を拡張した、「イメージと読みの詰棋観」、詰パラでやりませんか? https://t.co/7IIHcFNMjO
— シナトラ (@Sinatra57496354) 2024年9月23日
回答に協力していただいたのは柳原裕司さん、久保紀貴さん、藤原俊雅さん、馬屋原剛さん、井上徹也さん(回答順)の5名です。
柳原さんだけ回答をテキストで貰ったので、口頭で答えた他の人たちと違って常体かつ短文ですが、ひとり不機嫌なわけではありません。あしからず。
【問】この3手詰を逆算するなら、どういった方針で考えますか。
柳原 初手14に駒を打ち(桂か香)数手後、直接または間接で邪魔駒消去。
久保 パッと見は36桂打つか44角成るかだけど、36桂で作るのは作風じゃない気がします。44角成も茫洋として何をすればいいか分からないから選ばないですね。44角成はその先に良い手を入れようっていう逆算なんで、もし作ったとしても完成形では収束変えてると思います。犠牲を払わずにこの収束がそのまま使えたらいいけど、そこはこだわらないですね。
この素材で作る以上は41角を打って24の利きを外して14角と戻すのがいいのかな。21に受方の飛車を置いて41角、25玉、22飛、同銀とかができたら気持ちよさそうですけど、ちょっと無茶苦茶かも。
入選3回目の自作が同じ収束なんですよ。当時は捨て駒が好きだったから捨て駒中心の手順になってます。今もそういう作り方をしないわけではないけど、発表水準には至らないですね。
藤原 意味のある逆算をしようと思ったら、思いつくのはと金の翻弄とかなんですけど、最終手が同とに限定できないからあんまり意味ないかな。持駒を合駒で出して貰うみたいな逆算はしようと思わないんですよね。そういう作品は深みがあって紛れがあって複雑だと思うけど、自分は短編作家なんで気持ちは切れ味系なんですよ。合駒取るのも駒取りですから。
44馬とか36桂とかの逆算も舞台作りの手だから、短編的じゃないんですよね。捨て駒ならそれ単体でいい手だけど、捨て駒じゃない手を入れるなら先を見ないといけないんですよ。44馬、23玉、22馬、34玉の往復とか、15桂、同ととか、意味のある手順が先に見えてないと選べない。
14角は36が浮いてるところに捨てるから気持ちいいんですけど、36を浮かしたままだと逆算しづらいんで、36を塞ぐという手もありますか。14角は銀にできるけど、銀だと捨て駒の強度が低いんで飛車ですか。そうすると方向性ははっきりしてきて、限定打で12飛、25玉、34銀、同銀、14飛成みたいな感じですね。41角の限定打もできると思うけど、それだと14角が成生非限定になるんですよ。7手9手で作るときの成生非限定は罪が重いので飛車成にしたいですね。
馬屋原 逆算するときは極力駒は増やさず、駒取りも無しで、どこまでいけるか試します。駒数は基本的に盤上だけで考えてますね。私は逆算すると持駒が大量になる傾向があるんですよ。いのてつさんには持駒も含めた合計で考えた方がいいんじゃないかって言われたことがあります。いのてつさんの駒数の少なさは別格な気もしますね。
44馬みたいな素朴な王手も嫌いじゃないんですよ。包囲してる駒を動かすと全然違う展開になるので。中編や煙詰の感覚かもしれないです。
王様だけが動いてると単調なイメージがあるので可能なら受方の駒を移動させたいですね。今はと金しかいないので、と金の移動が難しいとなると、もう1個守備駒を置いて、それを動かすことになります。詰め上がりに関係ない駒を増やすときは受方の駒を増やすんですよ。歩や桂であっても攻方の駒は増やさないというマイルールがあって。逆算を続けるためには大駒で包囲網を築いておく方がやりやすいんですけど、それが詰め上がりに残っちゃったらしょうがないんで、龍で金合を出して交換する手はよく使ってます。
井上 詰将棋って自分の力だけでは作ってない気がしてて、素材が持ってる力と自分の力があわさったときに、良い詰将棋ができる感覚があります。この素材だと完全に自分の力だけで作らないといけないから、ここから逆算しようとは思わないです。
自分は正算で作ることの方が多いかもしれないですね。連続合が出る素材を、そのうち収束も思いつくでしょうみたいな感じでストックしてます。正算で収束をつけたら、構図が完全になるまで逆算を試みます。盤面が少なければ簡素ですよ教があるじゃないですか。盤面が少なければ持駒いくらあってもいい教。それに異を唱えたくて、自分は持駒含めて使用駒だろう教です。持駒をばーっと使っていくより、合駒で入手しながら進めていくのが好きなんですよ。
考えていたら、最後この詰の例題を作っていたのを追体験してデジャブを感じた。この詰と全く同じ図になった。https://t.co/TU1dE2GNC0
— ikiron (@boku_ikiron) 2024年11月23日
長考のフリーレン pic.twitter.com/A8LTCA9BxT
— 『葬送のフリーレン』公式 (@FRIEREN_PR) 2024年11月9日
に決まりました。