書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

第6回 詰将棋サイコロトーク 詰将棋の誕生から墓場まで

 

詰将棋の誕生」まだ全部読めてないんですけど、どうでした?
面白く読みましたよ。ただ、やっぱり自分はそこまで古典に興味持てなくて。本には後世の人に昭和の詰将棋史を再評価してもらいたいと書かれてましたけど、読みたいのはどちらかといえばそっちでした。昭和の詰将棋史。上田さんと若島さんが当事者として振り返ってくれたら最高です。
詰将棋の誕生ならぬ詰将棋の成長ですか。次のこの詰のテーマにできそう。
詰将棋には誰でも使えるデータベースが無いから研究がやりづらいって話もありますよね。全詰連が月額500円とかのサブスクでやってくれないかな。
昔、趣向作の前例調べるのに国会図書館行ってました。
私はくるくるおもちゃ箱を一通り見ます。
くるくるおもちゃ箱なんだ
簡単にアクセスできるところがそれくらいしかないので。でも400作くらいあって意外と網羅的ですよ。
いのてつさんの作品ってオリジナリティありすぎて人との衝突を心配する必要なくないですか。初期いのてつですか。
そうです。10代の頃。詰パラのバックナンバーは柳原さんに貰ったんですけど、イオニゼーションとかは近代将棋なので国会図書館で読みました。
いのてつさんにも図書館に通う下積み時代があったんだなあ。柳原さんは初期いのてつの才能をよくぞ見抜きましたね。

 

若島さんは古典を勉強しなければいけないというけど、古典を勉強して伝える人と、アイデアを考える人と、作る人が別でもいいのかなとは思ってます。
詰将棋創作カンパニーだ。
自分の経験や最近の若い人を見てると前例を知らなくてもインスピレーションで新しいものを作れるので、過去の作品と比べて新しいのかどうかは本人がやらなくても周りの人が判定してあげればいいのかなとは思います。
知ってる方が自分の身は守れますよ。昔、取らせ短打を知らない頃に森田手筋を見て、短打にアレンジして投稿したら「取らせ短打ですね」と一蹴されて悲しい思いをしたので。もちろん知らずに新構想になる可能性もあります。
勉強するにしても、作りながら勉強してほしいです。若い人には創作にハードルを感じないでほしい。
若いときは作れますもんね。今でこそインプットがないとなかなか作れないですけど。若い人は作ることを大事にした方がいいですね。
知らないから作れることもありますからね。
幻日環もある意味。
メガロポリスに引っ張られなかったが故に成立しましたね。
LCMも。
あれは偶然の産物で、龍追いでガチャポンをパクろうとしてたらガチャポンの構造を2個作る方が簡単なように見えてきて、最初は右と左でやってたんですけど、お風呂入ってるときに下は大火事、上は大水で上下でやるのを思いつきました。いままでの発想に引っ張られない方がいい場合もあります。
岩村くんも前例詳しくないと思うんだけど、意外と詳しいのかな。

 

詰将棋の昭和期を語るとして、どういう切り口になるんでしょうね。
「上田若島の影響」という軸がひとつあるのかなと。
それはありますね。いま思いついた仮説なんですけど、構想作でも収束決めないといけないってなったのって割りと最近ですよね。その理由は、ファンタジアに影響を受けた人たちがファンタジアの価値観で構想作作るようになったからじゃないですか?
自分は10年前くらいに解答選手権に作品を出して、世界のハシモトさんに「収束がなあ」と言われてそこから意識しました。
じゃあ違うか。
詰将棋の誕生」に看寿は最少枚数で作っていて近代的と書いてあったんですけど、最少枚数で作るのを良しとする価値観も看寿から上田若島まで飛ぶような印象があります。
上田さん若島さんより前だと巨椋鴻之介さんとかもそういう系統な気もするし、山田修司さんもある意味それに近いんじゃないですかね。
山田修司さんこそ最少枚数にこだわらない作家だと思ってました。でも実際に「夢の華」開いてみると意外と駒数少ないな。
洗練されてる方だと思いますよ。
山田修司さんは最少枚数ではなく演出にこだわる作家だと思ってます。若島さんはもっと原理主義的で「これもひとつの作品」という言い方をされますよね。
私も元の狙いが無茶なことをしてるから駒数多いイメージありますけど、その狙いの中では最少枚数にしようとは思ってますよ。
馬屋原さんは2000年代の作家として最少枚数を意識してると思うんですけど、ファンタジアが2001年の本なので、90年代の作家にもそういう意識があったのかどうか。

 

看寿以来、後世に影響を与えた作家は上田若島になるのかもしれないですね。私が影響を受けたから言ってるだけかもしれないけど。
私はおもちゃ箱です。
現代的だな。
上田さんから影響を受けたっていう話はよく見ますよね。持駒変換の抽出とか。
持駒変換と、「五月晴れ」「モザイク」の遠くから駒をはがしていく連取りの組み合わせで新世界系の超長編が生まれたので、影響大きかったですね。
現代の作家にはもう上田若島の直接の影響は無いんですかね。
仲村勇之助くんはシナトラくんが先生だって言ってました。
それは新しすぎるな。あと何年かして言われるなら分かるけど。少し前だと好きな作家宮原航って人多かったですよね。
宮原くんを好きな作家に挙げるのは年配の人も多かったから、影響を与えたかは別の話な気もする。現代は分野も細分化されてるから影響をはかるのは難しいですね。久保さんは若島さんですか。
かなり若島さんです。構想作を作ろうと思ったのも若島さんがきっかけなので。ただ、新しい時代の若島さんの作り方にはあまり共感しないです。
新時代だと相馬さん?
相馬さんは同じところを志して、より先を行かれてる印象ですね。一番やばいなと思う作家です。肩の力を抜いた短編は私も作るんですけど、相馬さんはそれもクオリティ高いんですよ。私の完全上位互換と言われても認めざるを得ない。感性が合うので作品出してくれるのは嬉しくて、刺激されるところがあります。
相馬さんこそ将来「詰将棋の成長」で取り上げられる作家ですよね。
現代の構想作を語る上で外せない作家は誰と言われたら満場一致で相馬さんでしょうね。
でしょうね。
でも大崎さんがいるから言うわけじゃないけど、大崎さんもすごいなと思ってて、昔はあんま思ってなかったんですけど。いろんな構想を考えたときに、大崎さんの作品を参照することが多いんです。将来、構想作を語ったときに、大崎作が節目節目に入ってくる可能性はあるなと思ってます。
人の作品をパクって作ることが多いので、そういう意味では詰将棋の成長に貢献してるかもしれないです。
パクるって大事ですからね。パクるっていうとネガティブなイメージあるけど、構想作はパクった上で何を付加するかですから。
自分の弱みはゼロイチがないところです。
私は変なところでゼロイチ目指してます。最近だと「八方塞がり」とか。
変なところじゃなくても名誉手筋とか馬屋原原理とかありますよ。
名誉はまだブルータスの発展と言われたら分かるけど、原理の方はみんなが見てるところと違うところを見てる感じはしますね。
馬屋原原理が「パラレル」に至るまでの流れ好きなんですよ。
私や大崎さんの創作姿勢を如実に示してますよね。ゼロイチの馬屋原さんから始まり、大崎さんがアレンジして、私もアレンジして。
決定打を出してくるのが久保さんですね。
「パラレル」は収束もこだわってます。あれがゼロイチで作れたらよかったんですけど。
誰か好きな作家で大崎を出してくれてもいいのにな。
名作選で好きな作家を聞かれた頃は大崎さん冬眠してましたからね。いまならいてもおかしくないんじゃないですか。でもわかりますよ、私も名作選の好きな作家アンケートに入ってないので。いのてつさんと馬屋原さんはありましたね。
次また好きな作家アンケートがあったら共謀してお互いに名前出しましょう。
ひどい談合だ。

全国大会(懇親会)の思い出

「長谷川さん」が2人いることを知った。「トコロさん」も2人いるらしい。

宮田七段がオセロにはまっているらしく対戦相手を募集していた。勝てるわけないと思って誰も手を挙げないのを見かねて宮田七段が「大丈夫ですよ。自分も定石全然知らないんで。中終盤の読みの力でやってるだけです」と言っていた。全然大丈夫じゃないと思った。

いのてつさんに煙詰を作らない理由を聞いたら「煙詰は作者の実力がそのまま表れるけど、趣向作はギャンブルの要素があって、たまに作者の実力以上の物ができるんですよ」と思いのほか博打打ちの答えが返ってきた。

久保さんが半期賞を3つも出した異例の期に、水上さんは「大崎くんのは半期賞ちゃうんや」と思ったらしい。

原田さんの2020年の19香遠打の作品。自分は看寿賞だと思っていたけど、原田さん本人はそこまでの高評価はしてないらしい。ちなみに天月さんも高評価。 シナトラさんもいい作品だと言っていた気がする。

【詰将棋】2020年印象に残った作品と看寿賞予想 - YouTube

馬屋原さんのツバがかいりゅーさんのガチャポンにちょっと飛んでしまったとき、謝る馬屋原さんに「サインだけじゃなくDNAもついて記念になりました」とすごいフォローをかいりゅーさんがかましていた。

二次会で宮田さんがポケットオセロの駒を床に大量にぶちまけるのを3回くらいやっていた。

馬屋原さんが単玉でロジックが成立している構想作で、駒を減らすためだけに双玉を使っていたので、シナトラさんの誘導尋問もあって「双玉は邪道」と言ったら隣のテーブルの中村宜幹さんと加藤徹さんがこっちを見ていた。

かいりゅーさんは同棲初期は彼女がお風呂に入った隙にこっそり詰将棋配信をやっていたらしい。AV見るときのやり方だ。

馬屋原さんのプラ駒は、馬が酷使されている。

22時に解散したのでホテルに戻ったら、一緒に来ていた妻と子供に「早!」と言われた。自分も戻るのは26時くらいかなと思っていた。

第5回 詰将棋サイコロトーク 2023新人賞 北陸はまとめ上手編

 

今日は2023年に詰パラに初入選した人の中から勝手に新人賞を選びましょう。

2023年1月 仲村勇之助

これ実際解くと結構難しいんですよ。この方は芹田さん系の作家ですね。
密度上げていくタイプの。

2023年2月 澤野友太

意外に面白いなと思いました。意外にっていうとあれだけど、意外に見たことない手順です。35香の設置から入ってるのはなかなかポイント高い。
設置してから遮る不成。なかなかの感覚。
34歩の開き王手から入ってるのもいいですよね。対比になるんで。
詰将棋の呼吸を会得してる感じですね。収束もさっぱりしてて好きです。
私も好きです。53に桂置いたのはセンスありますね。でもやっぱり序の4手が大きいな。

2023年2月 吉田響太

鈴川くんに以前こんな感じのあったなと思って探したら思ったより違う作品でした。

mycube.blog

33角限定打で入ってるのは偉いですね。34角成も捨て駒になってますし、43馬が帰ってきて。いい作品です。
石黒さん好み。
私も好きですけどね。こういうの作ろうと思ってもなかなか作れないですから。

2023年2月 中尾悟志

中尾さんは私のイチオシです。まとめ方がうまいんですよ。普通この枠内ではまとまりませんよ。
柏川作を思い出しました。

2023年12月 中尾悟志

検索したら、この方、1979年の将棋世界に入選してますね。新人ではないのか。
復活を喜びましょう。

2023年4月 井上凱生

実戦であったんでしょうね。普通にいいなとは思いました。詰将棋としてはさておき、実戦の手順としては。
初手が鋭いですね。
この形でお尻から手をつけたくはないですよね。95金が捌けるのも偉い。有望ですね。
あえて改善点を述べるなら?
こういう作品は改善難しいですけど、詰将棋として見るなら67金、78金が出番待ち感ありますね。
欲を言えば67金は打ちたい。

2023年4月 生川康太朗

解くといいなと思う作品でした。順番を限定させる仕組みがなかなかうまいです。
この手順やろうと思ってもなかなかできないですね。

2023年4月 積楢裕太

誰かのペンネームですか?
この苗字、「つみます」じゃないんですよ。つみなら。
つみならでもペンネーム感あるけどなあ。「つみならひろた」は?
この将棋ひろたで!もろたで!みたいな?
苗字に「つみ」があるとペンネームを疑ってしまう。

2023年4月 弘中祐希

弘中さんってよく見るなあ。
弘中さんは初入選組で2023年一番活躍されていた方といっても過言ではないです。半期賞取られてますし。不成に凝ってるみたいです。この作品もまとめ方がうまいんですよ。
33角不成は逆算で出したんですかね。
正算で作ってこうはならんよね。
受賞コメントを見ると先に後半19手があって、飛車不成を増やそうと思って角不成も入っちゃったみたいです。
増やし方がセンスありますね。追っかけて増やすんじゃなくて同じ箱の中で増やすのは話が変わってきますから。

2023年9月 弘中祐希

この作品めちゃくちゃ好きです。決定版。
初形見たときはつまらないのかなと思ったんです。ここから4段跳するとは思わないから。
35は普通に金にしてほしかったな。
なんで?
こんなところにと金いないでしょ。
そういうタイプでしたか。
これはと金でしょう。
21桂25桂も実戦的なのに、35とだけ異質。
自分ならと金かなあ。金でもいいですけど、この金は詰め上がりに残りますからね。
金なら指し将棋派の人も納得じゃないですか。
と金派の人は金でも気にしないけど、金派の人はと金だと気にするんですよね。そこに非対称性があって。
と金派の人も金にしようとするとそんな重たい駒はやめてくれって言わない?
他人の作品には言わないですよ。金派の人は他人の作品にも言うんですよ。特に自陣成駒。どっちがいいとかではなく、そこに非対称性があるから、作者のこだわりが無いなら金にしておいた方が一般受けはしますね。
こだわりがあるんでしょうね。こうしたってことは。
若島さんの作品見て育った人はと金にしやすいんじゃないですか。私もその類ですけど。
手順を並べてみると確かに金でもいいですね。2回動くし。
作者の選択を尊重しましょう。
それはもちろんそうなんだけど、もし詰工房とかで作者に会ったら言っちゃうな。作品集出すときは金にしてくれって。芹田さんと一緒に言っちゃうな。
芹田さんも結構と金使ってますよ。そもそも大崎さん詰工房来ないじゃないですか。
弘中さんは福岡の人なんで詰工房では会えないですね。

2023年10月 弘中祐希

25桂は打診ですけど、私が好きなのは初手。初手を入れておかないと25桂を同飛不成と取られて、31角成の場合は24桂に同飛、31角不成の場合は同銀とされます。作意では13に利かすかどうか攻方が打診していたのに、この紛れでは受方が保留できちゃうんです。この16馬面白いでしょ。
面白い。
これは自分で作りたかったです。31角も捨て駒になってるし、桂中合も入って。
でもなあ。45は金でいいよなあ。
使用駒種を減らしたいんですよ。

2023年7月 渡辺麻莉子

これは?
これは初手94飛と打つ紛れがあって、それだと攻方王がいいところに行けないからということなんです。
個人的には93馬がちょっと面白いかなと思いました。83飛といきなり打てるけどそれだと91玉で詰まないから。
93歩を発生させるための捨て駒ってことか。

2023年9月 車谷瞭文

やってること結構すごくないですか?まず51飛から21飛成がえぐくて、以下きれいに詰むだけなんですけど、きれいに詰むだけで100点。

2023年10月 一梨透

これはかわいい。新人かくあるべし。いいところとしては意表を突きますよね。13金とか打ってみたくなる形で。あとは角がスイッチバックしてます。
スイッチバック気付きませんでした。
将棋系Vtuberやられてる方でした。Twitterに違う作品が。

こっちの方がいいですね。

2023年10月 仲原輝

これ結構好きなんです。
いいですよね。今までなかったのが不思議なくらいだけど。初手といい3手目といい古典プラスアルファ感ありますね。
将棋世界でも表紙でもいいな。
発表は新人コンクールでした。表紙で良かった感はあります。
もったいないなあ。
表紙には良すぎるけど、指し将棋派にも受けそうだから表紙でもいいですね。
最近の表紙難しいからこれくらいがいいよね。
将棋サロンに出して何かの賞をもらってもよかったです。

2023年11月 拾井令

これもと金にしてるなあ。
たしかに、これは金でいいですね。きっと馬屋原理論ですよ。
どんな理論ですか?
自陣成駒であってもと金の方が軽いという。
使用駒種も減るし?
金にしても一緒ですよ。
と金と歩は別で数えるのか。
この作品の何がいいって47歩と捨ててるのがいいんですよ。序もいいけど、そのあとが名作たらしめてます。
32飛置いたら最後角捨てられるっていう感覚は何者なんでしょう。
この作り方はベテラン感ありますね。武島くんとかがやってるような作り方。
結構前から詰将棋メーカーで活躍されてたみたいです。
この作者も注目ですね。

全員見たので新人賞決めましょう。基準は特にないです。総合的に見て。
総合点なら澤野さんですかね。新人らしさと作品のレベルの高さ。弘中さんとか拾井さんとかは初入選だけどコメント見てると何年も前から作ってるみたいなので。

すんなり決まっても面白くないので対抗を出すと弘中さんの16馬、吉田さん、拾井さん、車谷さん。生川さんも新人らしさがあっていい作品ですし、仲原さんも覚えておきたい作品です。
詰将棋年鑑に載ってほしいです。
指し将棋派に出したいですもん。
これは指し将棋派でも15と金でいいな。初形他に金銀なくて、金派のぼくでもこれはと金にしそう。
17で成って引いてきたように見えるからですね。大崎さんの考え方が分かってきました。
使用駒理論なら金の方が種類少ないですね。
持駒は含めないんです。持駒に成駒は入らないですから。

この会やる前は拾井さんが新人賞だろうと思ってたんですけど、他の作品も見てみると決めるの難しいですね。
花の2023年組ですよ。2022年の初入選作家はどういう顔ぶれだったのかな。
パラ見てみましたが、2022年の初入選リストは柴田さんが入院していて載ってませんでした。

新人だと思ってた中尾さんが隠れベテランなのがちょっとびっくりでした。
それを知ってから作品見ると、テーマもすごいし、まとめもすごいし、全然新人の作品じゃないですね。
うますぎますよ。
北陸の人ってまとめ方うまいんですよ。
なにその鳥取の人は看寿賞取るんですみたいなの。
斎藤仁士さんとか。
鈴川くんも北陸でしたね。

新人賞は決められないですね。
全員受賞ですか。
大崎賞が拾井さんで、井上賞が澤野さんだとすると、久保賞は?
車谷さんにしようかな。それか仲村さん。仲原さんもいいけど、新人賞というよりは作品賞なんですよね。
なんでこんないい人たちが出てきたかというと、藤井聡太の影響?もしくは若島さん?
大穴で會場健大。
では2023年の新人賞は會場さんのTwitterアカウントということで。

第4回 詰将棋サイコロトーク 2023詰将棋ウラ10大ニュース編

 

2023年の詰将棋界のウラ10大ニュースでも決めましょうか。どの作品が良かったとか作品集が出たとかはオモテだから抜きで。
斎藤慎太郎結婚。
それは将棋界じゃないですか?
詰将棋界との積集合に入ってます。
結婚したの知りませんでした。山根ことみ結婚は見たけど。もうちょっとゆるめのニュースがいいです。
浦野先生の猫の缶バッジ発売とか?

ハンドブックシリーズが今年20周年らしいです。
駒テラスでイベントやってましたね。20周年と缶バッジのどっちを10大ニュースに入れるか迷いますね
缶バッジは20周年記念じゃないんだ。
その前に森先生のインコやってたんで別じゃないですか。

springsさんの動画はどうですか。歌詞に共感できます。

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歌詞が結構ニッチなところいってますよね。

11月号の編集室に2023年に初入選した人の名前が出てましたね。私は中尾悟志さんがおすすめです。

會場さん陣屋に行くは10大ニュース?

それなら将棋世界編集部に異動したことの方がニュースですね。

将棋世界詰将棋コーナーの充実が期待されます。
そのために呼ばれた可能性ありますよ。

詰将棋配信が活発なのって今年からですか?詰将棋YouTuber、かいりゅーさん、鈴川さん。
詰将棋配信元年ですね。久保さんはやらないんですか?
1回やったんですけど、面白くないんですよね。エネルギー貯まるどころか使う一方だったんで。
詰将棋の配信だとspringsさんと堺健太郎さんの創作配信が楽しいし見てて勉強になります。そうやって考えるんだって。

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2人とも言語化ができる人だから話聞いてるだけでも面白いですよね。何が分からないか言語化できる初心者って超希少なんですよ。
詰将棋の作り方ってみんなまず逆算とか正算とか言い出すけど、作家が実際に作るときに考えてることって違うじゃないですか。それを知れる稀有な配信だと思います。
ある手順を与えられたときに、どこから埋めていけばいいのかっていうのを見える化してくれてますね。すごい勉強になります。
え、でもそこで見える化される情報は2人も知ってる情報ですよね。
もちろん知ってることですけど、私は創作初心者が何を分からないのかが分からないので、そこを言語化してくれてます。意外とできない人多いと思うんですよね。詰将棋作家は感覚派が多いと思う。
詰将棋言語化でいうと久保さんすごいですよね。
自分でも得意だと思います。他にやってる人は若島さんくらいしかいないですね。理屈で作る人間からすると大事な要素だと思ってます。宮原くんとかはよく分からないところから面白い手順を思いついてきて作るんだけど、私はそれができないんで。
いないいないばあ装置的な世界?
岩村凛太朗の作るものはなんであんなに独創的なんでしょうね。
匈奴愛とかね。煙詰は何を表現するにしても手順の流麗さを上げてきた歴史があるじゃないですか。それとは全然違うベクトルで、まず盤面にでかいハートを描こうって思うのがすごい。しかも手順を見るとはじめからハートを描こうとして作ってるとしか思えないんですよ。
誰もが夢としては語るものを作るのと、誰も目指してないものを作るのは違いますね。10大ニュースに入れておきますか。
え、どれをですか?
匈奴愛を。今後のバレンタインのスタンダードになるかもしれません。

10大ニュース他にありますか?
小池さんのブログを読み返して見つけました。きゅりあんの復活。自分は詰工房がきゅりあん開催じゃなくなってたことすら知りませんでした。ずっと蒲田でやってたんですね。
蒲田の二次会で使う中華料理屋けっこう好きでした。
分かる!
去年チェスの解答選手権が蒲田であったんですけど、その二次会もその店にしました。

tabelog.com

えー行ってみたいな。
特別おいしいとかはないですよ。
安いし落ち着くんです。ピーナッツ炒めとかいいですよ。
普通にね、普通においしいです。

2023年はkisy留年というニュースは無かったですか?
もう就職決まってますよ。XXXXに。
え、そうなんですか。それ個人的に2023年のニュースの中で1位です。
kisy呼んでみますか。
授賞式ですね。
それで呼ばれたんですか。内定式より手厚い待遇ですね。
kisyが内定式出てたの気付かなかったな。10月頃のkisyのTwitter見返すと内定式の匂わせ的なことも書いてありますか?
書いてないです。会社のことSNSに書くの良くないかなと思って。
賢明ですね。ちなみにkisyだけが知ってる詰将棋10大ニュースありますか?
ありますよ。看寿賞の賞状と賞金を全部ホテルに忘れて、あとで送ってもらったんですけど、賞状だけ届いて賞金は消えてました。
現金は郵送したらダメですからね。
そういうホテル側の気遣いだったんですかね。
レターパックで現金送れは全て詐欺です。

まとめると2023年の詰将棋ウラ10大ニュースは

  • 浦野八段愛猫缶バッジ発売
  • 詰将棋ハンドブック20周年
  • 好きな詰将棋発表ドラゴン
  • 中尾悟志さん初入選
  • 會場さん将棋世界編集部に異動
  • 詰将棋配信ブーム
  • 岩村凛太朗盤上にハートを描く
  • 来富市場に行けなくなっていのてつさんがっかり
  • kisy就職決まる
  • kisy看寿賞の賞金紛失

に決まりました。

細かすぎる。

第3回 詰将棋サイコロトーク 酔鯨編

今日は酔鯨を読む会です。

酔鯨」はまず表紙がいいんですよ。書名もいいし、色もいいし、フォントもいいです。
フォントは普通でしょう。
いま見たら「からくり箱」と一緒でした。
べた褒めですね。
つみき書店から出た新刊3冊と一緒に買ったんですけど、酔鯨は群を抜いてますね。
方向性が違くないですか。
橋本樹さんは当時としてはアクロバティックなことをしてますよ。
いまだと武島さんが洗練バージョンをやっちゃってるので印象としては辛いですけど、先達者ですよ。
時代背景も含めて読めばいいんですけど、いま手元で酔鯨と比べちゃうと。
芹田さんは現代の作家ですからね。
現代の作家なのにもう作品集出すんだとは思いました。まだまだ現役なのに。
それは思いました。第一弾ってことなんですかね。
若島さん上田さんみたいなことですか。

酔鯨読んでて気付いたことがあって、同じ段に玉と飛車と角置いたバッテリーの構図がちょくちょく出てくるんです。10番とか11番とか。
それは解いていて思いました。
芹田さんの手癖というか、ネタが無いときについつい置いちゃう配置なのかなとは思うんですけど、もしかしたらこの1冊の中でこの形から七種中合出してて、そういう趣向なのかもと思って調べちゃいました。違いましたけど。
まあ、好きな形なんでしょうね。私も何も思いつかないときはよくある打歩詰の構図並べて考えてます。

この構図は最高ですよ。角の使い道が無いところも最高で、段が限定されるのだけが欠点です。玉が斜め下に下がったらと金寄れるのもいいんですよ。

ありがち打歩詰構図は自分もよく使うんですけど、武島さんとか最近の森長さんとかは見たこともない打歩詰の構図で収束する作品出してて、よくそんなん思いつくなあって思ってます。
分かります。私も思ったことあります。
あれはよくある打歩詰構図で破綻したからひねり出したのか、はじめからこんな打歩詰もあるだろうと思って作ってるのか、どっちなんでしょうね。
さすがに前者だと思ってます。
武島さんに歩打ったあと馬捨てる作品があって、これいいなあと思ったんです。
私も武島さんの作品の打歩詰構図で1個よく覚えてるのがあって、この詰でパクりました。第三の選択も優秀な構図ですね。よくある打診の構図とは違ってて。

いのてつさんの短評が採用されてた27番も、飛角バッテリーで中合の作品でしたね。桂合珍しいなと思いましたけど、そんなことないですか?
桂合の珍しさよりは、見るべきは最後の3手じゃないですか?桂中合して角捨て同桂くらいは原田清実さんとかにありそうですよ。
桂合が珍しいっていう意識は無かったです。
逆に桂合ならこの収束になる感じはしません?
普通に作ったら35金までとか24金までとかになりそうだけど、飛車まで捨ててるのに新鮮味を感じました。具体例出せないですけど、短コン全部見ていったら原田さんが桂合出してますよきっと。

35番はどうですか。何年か振りに詰工房行ったときに、二次会で芹田さんに「なんでこれが看寿賞じゃないんだ」って話をされて、自分の芹田さんの第一印象はそれなんです。
それは多くの人が持ってる印象かもしれないです。
でもその気持ちも分かるなあとも思って、看寿賞でよかったんじゃないのと。
35番はこれ単体で見るとめちゃくちゃいい作品なんですけど、後半11手がまったく同じ作品があるんですよね。それをどこまで評価するかって結構難しくて。


1980年5月 柳原裕司

あの飲み会で「看寿賞は前例に厳しい」と刷り込まれたので、去年の馬方さんの作品が前例あるのに受賞したのは意外でした。
馬方作とボンバーマンは構図が違いますからね。でも35番は同じ構図の前例があったとしてもいい作品ですよ。この年は何が取ったんでしたっけ。
該当なしです。
該当なしにするくらいなら、とは思うなあ。
中編が芹田さんです。
自分の好きな作品が取れないのに、他の作品がもらえるっていうのは、何も取れないよりある種辛いですよ。
蟻銀と同じ年の話だったんですね。この年短編を取り逃して、数年後蟻銀で雪辱を果たしたのかと勝手に思い込んでました。同時だったんだ。芹田さん充実した年ですね。長編賞はいのてつさんですか。
一緒に名古屋大会に参加した記憶があります。35番は會場さんが論考で取り上げてますけど、會場さんの文章はさすがですね。
さすがですけど、1個だけ嘘書いてるなとは思いました。「依然として26の中合は有効なように見える」と書いてるんですけど、26中合は圧倒的に有効で、26中合が有効だからこそ変化が膨大になってるんですよ。
自分は違和感なく読んじゃってました。會場さんのレトリックもありますね。
こう書いた方が一般の人には分かりやすいのかもしれないけど、それは會場さんの職業病出ちゃってますね。全体としては芹田さんの良さを分かりやすく伝えてくれるいい文章です。「いい作品だけどこれはある筋だから」のあたりとか。物語を描こうとしがちな最近の作家に対する芹田さん像が描かれていて、すごくいいです。
色々な評価軸があっていいですからね。

ただ、どの作品もいいんだけど、作風がホームラン狙いじゃないから、とにかくこの1作を見てくださいという紹介にはなりづらいですね。
イチロー的な?
この中から1作選ぶなら80番を選びます。
私も1作選ぶなら80番です。これは芹田作品の真髄ですよ。って、論考に書きましたね。これ書き終わるまで論考だと知らなくて普通に手順の解説書いちゃいました。これがあったらこの筋のミニ趣向はもう作れないですね。こういうのが好きなんです。看寿賞というテイストの作品ではないですけど、ちなみにこの年の看寿賞は何だったんでしょう。
私の歩の連続中合です。
あれはめちゃめちゃいい作品なので仕方ないですね。

論考で取り上げられた作品と受賞作以外では54番と89番が好みです。変化紛れのバランスがちょうど良くて、初形も良くて、収束も綺麗に決まるっていうのが芹田さんの特徴をよく表しているなと思って。
いのてつさんが54番好きなの意外です。
盲点に入って解くのに苦労したっていうのもあります。
私は長い方が好きです。芹田さんの逆算の特徴は、既に置いてある駒をいかに有効活用するかだと思っていて、そこが他の逆算作家と違うところですけど、長い作品になればなるほど有効活用の度合いが高まってると思うんですよね。ひとつの駒が複数の働きを持っていくので。
自分は90番が好きでした。
90番も特に色が強いですね。この詰め上がりの無駄の無さはなかなかやばいです。ここからこの序が入るとは思わない。
画家YouTuberの柴崎さん分かります?
分かりますよ。

芹田さんもこんな感じだなと思ってて①この収束ユニットを逆算してみましょう②24に利かせたら角合が出ますね③46角を置いたら香打も限定されて味がいいです④90番完成、みたいな。
言ってる意味は分かりますけど、そこまでの共通項があるかというと。
この収束ユニットから、角合は自分も思いつくかもしれないけど、その後90番にはならないんですよ。
これは芹田さんじゃないとできませんよ。

現代作家の多くは、手を先に考えて、この手を入れたいと思って逆算してると思うんです。芹田さんは入らない手を追いかけないというか、いまある駒で頑張れる範囲をとにかく突き詰めてますね。
私はこんな手が入ったら面白いなと思ったら、すぐそっちいっちゃうんですけど、芹田さんは配置が最優先、駒を増やさないことが最優先で、その中で一番を目指してる印象です。
鈴川さんなんかは逆算する中で、広げながら狙いをひねり出していきますもんね。
駒は増えるけど、手順も膨らんでいくよっていう逆算ですね。

だから芹田さんの作品にはもどかしいところもあって、どうしても技術的な評価になっちゃうんですよ。駒が1枚減ったり駒効率が上がったりして喜ぶのは作家なんで。
え、でも解答者受けもいいんじゃないですか?
収束決まりますからね。ただ、最近は多少駒が多くても、1局を支える1手や全体を通してのストーリーが重視される傾向にありますよね。蟻銀はそこがうまく噛み合った作品ですけど、蟻銀が芹田さんの真髄という感じもしないです。

この作品集後半が特に濃密なんで、久保さんが長い方が好きというのも分かります。作品集2冊出す予定なら、1冊目は上田さんの極光みたいに50局でもよかったのかもしれないです。
他の人の作品集読んでて「100局じゃなくてもよかった」なんて言わないですよ。
芹田さんの最高レベルが高いから期待しちゃうってことですね。
これが作れる作者なんだから、これを100局揃えてほしいとは思っちゃいますね。
現役作家だからもう何年かしたら揃いますよ。そういう意味では次回作に期待ですか。
最初のべた褒めから打って変わりましたね。
一番嬉しくない短評ですよ。次回作に期待。
酔鯨」は出色の作品集です。次回作にも期待ということで。

第2回 詰将棋サイコロトーク いのてつさんの再帰連取り講座編

前回の続きです。


1995年12月 今村修 天月舞

まず何が大変かっていうと歩を全部消す意味付けを作るのが大変なんです。例えば25歩が消えたとして、普通の連取りだと25が消えたら収束に入れるはずなんですよ。香の利きが通るとか、桂が取れるとか。再帰連取りってそれじゃ満足できなくて25が35に行って収束じゃだめなんです。
余詰もはらんでますよね。1歩消費型でもない限り45歩でも収束できるので。
なので25歩が35、45、55と移動して、最後は消えた状態で収束に入らないといけないんです。あとは75まで呼び出した歩を剥がして元に戻すのが結構大変なのと、中合が残る変化を処理するのも大変なんですね。それを解決するのが14玉です。

65手目55飛と歩を取ったところ。ここで作意は65飛合だが、受方には96玉と逃げて64歩を盤上に残す選択肢がある。一見すると盤上に歩が残るのは受方有利にも思えるが、この変化を受方不利の早詰にしなければならない。

64歩が残ってると94飛合が逆王手にならないんだ。
これが発想の転換で当時は新しかったんですよ。
14王は64歩を残しておくと玉方にとって不利になる意味付けのためだったんだ。
この天月舞すごいところいろいろあるんですけど。まず双玉の発想がすごい。あと25歩を消し切るのもスマートに実現していて、75に残った状態で収束に入ろうとすると95に逃げられて75がブロックするんです。ここもエレガントに作ってるんですね。

収束で307手目26飛と桂を取ったところ。このあと作意は95玉、25飛と続くが、攻方が剥がしをさぼって5段目に歩を残しておくと、25飛が王手にならない。

なんでアルカナの方が楽かというと、天月舞は中合の歩が擬似的に移動していたけど、アルカナはと金が直接移動するんですね。だから中合の処理を考えなくていいし、と金でできるからたくさん置いて手数が伸びるのも利点です。


1999年8月 橋本孝治 アルカナ

さっきの課題を天月舞型で全部根性で解決したのが近藤真一さんです。双玉なんですけど攻方は金銀の代わりに使ってるだけで、中合が残ったときの変化とかの意味付けは逐次設定してやってます。


2004年7月 近藤真一

陽炎は何がポイントなんですか?


2013年2月 添川公司 陽炎

まずは単玉でやってるのが技術的にはポイントだし、飛車打ち飛車合の間に新世界っぽい飛車成の手順を入れることで手数をちょっと伸ばしてます。


1981年3月 森長宏明 新世界

陽炎は83飛にすぐに84飛合とせず94玉、93飛成、85玉、83龍としてから84飛合とする。この一度よろけて飛車を成らせて手数を稼ぐ手順が新世界っぽい。

構造的には一緒なんだ。
中合が残ったときどうしようとかには9筋はあんまり関係してないんですか。
細かく言えば関係してますが、それは別の理屈で作ってあります。
天月舞みたいに双玉で処理をしない場合は変化で必ず歩のある方に追わないといけないんですか。
実は別の意味付けもあるんですけど、それをやってる人はまだいないですね。
いのてつさんの最近の作品も変化処理は歩のある方に追っていくんですよね。
そうです。


2023年4月 井上徹也 静かの海

こういうのよく作るよなって思いますね。
4段目に歩が残ってるときは全部詰まさないといけないし、5段目に残ってると詰まないっていう変化を作らないといけないんです。
やりたくねー。
それをやりつつ収束も作らないといけない。結構大変なんです。
だいぶ大変でしょうね。あんまり空間使いたくないんですよね。なんでそんなところで変化作るの。めんどくさい。って思っちゃいますよね。
思っちゃう。
ばちばちに縛りたいんですよね。
長編の場合は空間で作らないと駒が足りなくなるので。
でも空間で変化をがんばらない再帰連取りのスマートな意味付けをいのてつさんは持ってるってことですか。
そうなんです。この前の詰工房で新ヶ江さんも同じことを言っていてびっくりしました。天月舞の意味付けは今はまだ双玉型と根性型しかないんですけど、考えたら他の意味付けもありそうな気がします。
新ヶ江さんが考えてるっていうのが意外でした。
長編趣向作のイメージもないし、そこに興味があったことすら意外でした。
逆算系の作品作ってるイメージでしたね。
新ヶ江さんは結構いろんなこと考えてます。

長編は作るの大変ですね。1作1作が重い。
検討が大変なんですよ。
自分からするとアイデア出しから別世界だなって感じなんですけど、アイデア出しと図化だと、それでもやっぱり図化の方が大変なんですか。
ものによりますね。
イデアだけなら、再帰趣向とか、できるかどうかは別として、発展させてみようって思ったときの選択肢はいろいろありそうな気がします。構想作がよくやる組み合わせでよければネタは困らなさそうかなって気はしました。
組み合わせだとあんまり現実感のないネタも多いですね。まあ、それでもやってみたらできる場合もあるんですけど。
馬鋸で再帰連取りも組み合わせっちゃ組み合わせじゃないですか。あれを思いつけるかは別としても。
言葉にするのは組み合わせでよければ出るかもしれないですね。
そんなにネタに困らなそうかなっていう印象はあります。作らないで言うのもあれですけど。でもその中には絶望的に難しいやつが混ざってたりするんだろうな。それこそ田島秀男が手掛けるものもありますしね。トリプル七種合だってネタ自体はなんてことない、なんてことないって言っちゃうとあれだけど、みんな言ってたって言う方が正しいかな。
言うだけなら誰でもできるってやつですね。
やっぱり手順にするのが大変ですね。
手順にするのと、手順ができたものを最後詰将棋にするのが大変です。手順にするのと詰将棋にするのどっちが難しいかはなんとも言えないところですね。

いのてつさんからすると800手超えのプロットはまだまだあるだろうって感じですか?
全然分からないです。手数でどうとか思ってないんで。
最近は超長手数はあんまり盛り上がってないですよね。
記録狙いはありますね。
最近すごいなと思ったのが吉田京平さんの連続捨て駒の記録作なんですけど、いのてつさんどうですか。
すごいのかどうかも分からなかったです。すごいっていうのは記録をぎりぎりのところで実現していてすごい?
よく作るなっていう。
それはそう。
記録作は、がんばったら作れるなっていうのが多いんですよ。過去にここまでできていて、そこにプラス1しましたっていう。あの連続捨て駒は、よくその記録を目指そうと思ったなっていうのもあるし、よく作るなあと思います。詰将棋としていいかは置いといてね。私が記録作好きなのは一歩一歩進んでる感じがいいなと。
詰将棋を前に進めた感じがする?
再帰趣向でもなんでもいいんですけど、何かのジャンルの歴史を振り返ったときにそこに入る作品に惹かれます。

久保さんはいつか煙詰1個は作っとこうと思ってるタイプじゃないんでしたっけ。
不純な動機としてはありますよ。作れることを証明しておいたほうがいいのかなみたいな。でもそのために煙詰のノウハウを学んでまでやりたいとは思わないですね。もっとみんなすごいの作ってるから。どうせ作るなら岡村孝雄さんみたいなのを作りたいんですよ。
岡村孝雄さんみたいな煙詰ってどういう意味ですか。
歴史に残る煙詰です。「七種合煙の中ではこれが一番いい」っていうのには興味がなくて、歴史上これが初めてですとか、そういうところに価値を感じますね。煙詰の最高峰はこれですっていうのが完璧に打ち立てられるなら作りたいですけど、そんなことはありえないので。大崎さんはどうなんですか。
馬屋原さん的な方で歴史に残らなくていいから1個作っておきたいなって思ってます。それと同じくらい800手も作ってみたいと思ってます。
どっちかっていうとそっちの方があるかな。800手となると何か新しいアイデアが必要だと思うんです。でもどうせ作るなら1525手超えたいですね。せっかくアイデア出してがんばって作っても800手じゃ歴史に残らないんで。
超長手数の歴史を語ったら、寿があり新扇詰がありメタ新世界がありミクロコスモスがあり、4作で語れちゃうじゃないですか。この中に入りたいんですよ。狙った結果800手なら仕方ないけど、どうせがんばって作るんならそこ狙いたいです。
いのてつさんは手数気にしてないってことは1525手超えたいっていう気持ちもそんなにないんですか。
記録を目指して作れるもんでもないと思ってるんで、新しい構造の長編を作っていくなかで、運が良ければものにできるんじゃないかなあと思ってます。冷静に考えて1500手って長いんですよ。

記録を目指して面白い趣向作が作れるイメージ無かったんですけど、幻日環が出てきて、そういう方法もありなんだなと思いました。
高い山を目指せば面白いものができるんでしょうね。
登るルートは違っても登るところは同じですか。

第2回 詰将棋サイコロトーク 私のバカせまい史編

前回の続きです。

いのてつさんの発想法について、せっかくなのでこの作品についても教えてください。


2011年3月 井上徹也

龍追いしながら受方の置き駒を剥がしていく作品。初形で62に歩があるが、龍追いを1周すると72に歩が移る。もう1周すると62に戻る。72歩のときしか駒が剥がせないので、駒を1枚剥がすのに2周必要となる。2分の1手龍追いとか微分龍追いとか呼ばれている構造。

8筋9筋の追い方がまず珍しいですよね。
そうですね。
さらに微分龍追いもしていて、どうやって思いつくんですか。
それは完全に駒の軌跡から思いついたんですよね。左側を龍鋸で追っていく部分が思いついて、回転龍追いで趣向作にできないかなっていうのが始まりでしたね。で、追っていくと72歩62歩の切り替えは必然というか、他に追い方があまりないんですよね。
72歩62歩が切り替わるようなのを作ろうと思って作ってるわけじゃないんだ。
これは全然そうじゃなくて、駒のイメージから作ってるんですよ。趣向作って2パターンあって、この構造を作ろうっていう言葉から作る場合と、駒のイメージから作る場合があって、この作品は龍鋸の軌跡から作りました。
後付け微分なんですね。
きょういち意外でした。実は72歩62歩みたいに歩の位置が切り替わるのは、最小公倍数作るとき最初に考えてたんです。でも龍追いがうまく繋がらなくて結局諦めたんです。切り替わるロジック自体は作ったんだけど、うまく龍追いに接続しなくて。


2016年11月 久保紀貴 LCM

龍追いを繰り返す意味付けは置き駒消去になるんですけど、単純に取っていくだけじゃつまんないなとも思ったんで、もっと回転たくさん増やせたら面白いよなあっていうので、ひねりだしたのが72歩62歩の違いで歩を取れる取れないの仕組みなんですよね。
でもあの作品のテーマはあそこですよね。そうはいっても。
テーマはあそこプラス新しい龍追いの手順。どっちかではない合わせ技です。
そこもあるんだ。
趣向作も構想作と同じで背景を知ってないとなかなか見えてこない部分もありますよね。龍追いを見たときにこれは新しいよねってなるのは背景を知ってるからなんですよね。そういう見え方がなかなかパンピーにはできない。詰将棋に限らずですけど。
知識もだし、作ったことがないと分からないこともありますね。添川さんの阿吽は龍追いの軌跡自体は普通なんですよ。


2008年11月 添川公司 阿吽

1周ごとに48歩と49歩の位置が切り替わる。49歩のときだけ桂が手に入るので、1枚の桂を手に入れるのに2周かかる。初の2分の1手龍追いとされる作品。

私なんかは2分の1持駒変換なんだなあとしか思わない。こういう作品では龍追いは手段だと思っていて、阿吽の龍追いが類型的なのは気にならないです。

長編も面白いっすね。
長編面白いとは思うんですけど、作るにも見るにもカロリー消費するんですよ。
見るのも?
詰パラがkifファイルで読めるならまだ読みやすいんだけど。頭のなかで並ばないし、盤に並べるにも駒が多いし。私が長編やらないのは、中高生の頃に頭の中でパラ読んでると大学院だけ並ばないから読まなかったんです。
え、読みもしないんんですか。
上っ面だけ読んでるというか。手順は1回も並べてないです。だから長編やってないんですけど、見ると面白いんですよ。
創作のカロリーも高いですけどね。
大崎さんは並べてました?
盤駒で並べてはないですけど、最初から結構好きでしたね。
頭の中で並べて?
そういう意味では並べきれてないんで、ロジックを読んでるんでしょうね。看寿賞作品集を初めて読んだときは赤兎馬でめちゃくちゃ感動しました。
私の知識レベルでは赤兎馬と言われてもどんな作品か分かりません。
え、ご存じない?
名前は知ってます。馬鋸関係ですよね。
赤兎馬っていうくらいだからね。複合馬鋸で超長編をつくった最初みたいな作品です。


1979年7月 山崎隆 赤兎馬

前に馬屋原さんにも言ったんですけど、超長編の歴史を紐解く本が欲しいです。2017年の全国大会の前夜祭で連続合の作品を過去から見ていったときに思ったんですよ。ああいう見方をするのが一番分かる。この作品はこういうところで歴史を前に進めたんだ。じゃあ次は何を作らないといけないんだ。っていう話になるんですよ。
それ面白いですね。
でもこれができる人って相当限られてるはずで、それこそいのてつさんとか馬屋原さんが書いてくれないと成立しない企画だとは思うんです。この本があったら私ももうちょっと長編いけると思います。
鑑賞する上でもそういう本があるといいよね
構想作って歴史が新しいというか、そんなに昔から段階的に進化していった感じでもないじゃないですか。今思えば。
んー?森田手筋の歴史とか長いは長いですよ。
森田手筋の歴史っていったときにそんないっぱいあるのかな。そんなバリエーションに飛んでる気しないですよ。
不利合の歴史も語ったら長いでしょう。
所詮昔やられてたのは普通の不利合じゃんって感じになりそうだけどなあ。
久保さんが不利合に詳しいからだいたい同じに見えてるっていうのもあるんじゃないですか。
詳しい方が細かい違いは分かりますよ。

それぞれどれくらいの分量になるか分からないけど長編の歴史もほしいし構想作の歴史もほしいな。
プロパラから著者いのてつさんで。
難しいのは例えば複合馬鋸も構造は同じだけど趣向は違うっていうのもあるし。
全部は触れなくてよくて、これは歴史にインパクトに与えたんだとか、これがあって次の作品に繋がってるんだみたいなのを、繋げたらそれでいいんじゃないですか。この作品はここが良くてとか言い始めると大変だけど、すべての作品にいいところがあるのは前提として、その中からかいつまんで。
ひとつ書いてみたいなと思ったのは、再帰趣向の歴史というか仕組みは一度どこかで整理したいなと思ってます。
そういう狭いので全然いいと思います。

いのてつさんが最近発表した飛車と歩の再帰連取り。あれはまだ系譜に乗ってるんで理解はしやすいんですけど、合駒を飛ではなく角にして馬で追って途中で歩を取ればいいって、こんこんと考えてたどり着くんですか?
最初に並び歩の再帰連取りを馬鋸で実現したらどんな手順になるんだろうなっていうのを言葉で思いついたんですよね。
じゃあ最初は天月舞型でもなかったんですか。
形は天月舞型でした。それで成立する条件を整理していくと、飛車に角合は出るんでしょう。で、馬鋸でいったら飛合をするんでしょうっていうのはなんとなく分かってくるんですけど、そのあとどういう趣向手順でいくのか、どこに馬鋸を置くのかっていうのが分からなくて悩んだんですよね。そもそも中合で連取りさせるっていうのが大変なんですよ。
アルカナ型の方が簡単ってことですか?
そうそう。
前提知識で語られるとついていけないんですけど。
有名作しか出てきてませんよ。
アルカナは分かるんだけど、アルカナを構造的に理解してないんです。アルカナの私の理解は再帰連取り。終わり。
1号局の天月舞を見てみますか。この趣向作るのいろいろ大変なんですよ。

まだ続きます。