書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

成るための最遠合

2003年7月 濱田博

35桂、27飛、22歩、31玉、43桂不成、41玉、51桂成、同玉、
42成桂、まで9手。

2手目27桂合の逆王手は品切れで打てない。他の何を合駒しても同香とは取れないので、普通は24歩合くらいで済ませたいところだが、以下22歩、31玉、23桂生の詰み。代わりに24飛合や金合としておけば23桂生を同飛と取り返せるものの、それでも32成桂まで7手で詰んでしまう。正解は27飛合!これに22歩、31玉、23桂生と進めるのは同飛成!と取る手があって詰まない。作意は43桂生と逆に跳ねる。

のちに成る手を用意するために可成域に合駒をする2手目27飛合が新種の合駒。

2018年4月 岩村凛太朗

98角、87角、同角、11玉、12歩、同玉、78角、11玉、
12歩、21玉、98角、43桂、11歩成、31玉、21と、同玉、
12角成、同玉、89角、同歩成、23金打、11玉、22金、まで23手。

15年の時を経て岩村作。89金に狙いをつけた角の最遠打に、普通に43桂合と受けると22歩、11玉、12歩、同玉、89角、同歩成と首尾よく金を入手して、23金打、11玉、21歩成、同玉、22金まで。43角合とすれば21歩成を同角と取れるが、それでも22金までの詰み。ここで21歩成を同角成!と取れれば詰まないことに気付けば2手目は87角合!が正しいことが分かるだろう。おそらく岩村さんは濱田作を知らずに作っていると思うけど、これが2号局。飛を角にしただけではなく、合駒がただで取れるところに進歩がある。

このスマートさで飛合を作ったらどうなるだろう。何を隠そう私もそれを考えていた人間だ。岩村作を素直にパクるなら受方18金と31玉を置いて、38飛!37飛合!という感じだろうか。しかしこれは茫洋としていて、だいぶ先が思いやられる。

そうしてまごまごしているうちに、家島さんがさっと作ってしまった。いや、さっと作ったのか、大変な思いをして作ったのかは知らないが、とにかく作ってしまった。それがこの作品。

2025年9月 家島直暉

35桂、27飛、28龍、32玉、24桂、同飛成、33角成、同龍、
21龍、同角、44桂、同龍、23香成、まで13手。

まず28飛合と27飛合の切り分けが上手い。私はその非限定を避けるために38飛と打とうと思っていたよ。27飛合に28龍と二段ロケットを作り、そこからすべて捌き切るのも良い。この内容で13手。濃厚。岩村作のただの飛車合バリエーションに留まらない新作になっている。

作者の言葉によれば29香は打ちたかったとのことで、たしかにこの香が打てたら最高だ。将来、作品集に載せるときはぜひ29香を打つ図にしてほしい。

藤井聡太の合駒動かし

昨日のポストで、藤井聡太の合駒動かしがなかなか見つからなかったと書いたところ、これもあるぞと早速教えていただけた。

まずは芹田さんに教えてもらった作品。

2016年11月 藤井聡太

愛知県知事に手渡した色紙に書いてあった作品。合駒動かしを意図して作ったわけではなく、正算で作ったら自然と合駒が動いた、という感じかな。それにしても完成度の高さがすごい。

続いて馬屋原さんに教えてもらった作品。

2017年5月 藤井聡太

「2回の合駒をどちらも不成で動かすのが狙いです」と作者も書いている通り、合駒動かしを狙って作った文句なしの合駒動かし作品だ。そして驚くことにこの作品が発表されたときの担当者は馬屋原さんと私。それを忘れてどうする。

詰将棋マニアクイズ

Twitterに書いた詰将棋マニアクイズを書き留めておく。


【問題】歴代の看寿賞受賞作のなかで、タイトルに「帰」の字が入る作品を3つ挙げよ。

正解は「父帰る」「帰去来」「百千帰」の3つ。まず超有名作の「父帰る」、あとは世代によって1984年発表の「帰去来」か、2014年発表の「百千帰」のどちらかが思いついて、そこで詰まるのでは。というのが作意だったけど、「父帰る」が思いつかない人もいるのは意外だった。


【問題】「稲村ヶ崎」「妻籠宿」など、詰将棋には地名から命名された作品も多い。井上徹也氏の作品から、地名がタイトルになっているものをひとつ挙げよ。

正解は「静かの海」で、地球ではなく月の地名というわけ。この問題はほぼいのてつさん本人発案。ひねりがある。


【問題】同じ年に将棋世界の年間最優秀賞と看寿賞を受賞した作家を大崎以外で3人答えよ。

まず分かりやすいのが1つの作品が2つの賞を受賞したときで、2003年の斎藤夏雄さんと2011年の谷口源一さん。これまでの詰将棋2冠はその2人しかいなくて、なんと別々の作品で2つの賞を1つの年に獲ったのは自分だけでした。すごいでしょ。と言いたかったんだけど、調べたら武島さんが2017年に達成していた。厳密には将棋世界が武島宏明で、看寿賞が武島広秋。


【問題】藤井聡太の発表作で、打った合駒が作意で動く作品はひとつしかない。○か✗か。

これは作問時には正答が分かってなかった。たぶん✗なんだろうとは思いながら、ちゃんと答えを確定させるのに苦労した。

まず誰でも思いつくのが11角遠打の名作。

www.youtube.com

それ以外でようやく見つけたのが将棋世界2018年1月号付録「7棋士が競演!若手棋士詰将棋」の第37番。

と、第38番。

権利を買い取って自分の作品集に載せたい作品 2025年4月

2025年4月 中14 芹田修

59香、58歩、同香、57桂、65馬、46玉、49龍、同桂成、
47歩、同龍、55馬、まで11手。

初形歩無しから中合の歩を取って打歩詰。龍まわりを阻止して桂合が出るが、それでも龍を捨てることで打歩が打開される。この合駒の有機的な繋がりが美しい。44は駒種を揃えるためにわざと香にしてあるわけではなく、歩にすると初手65馬で余詰んでしまう。様式美に配置の絶対性。完璧かよ。最終手非限定を気にする人は作者以外に1人もいない。

権利を買い取って自分の作品集に載せたい作品 2025年3月

2025年3月 幼2 井上貴裕

31金、22玉、32金打、同銀、21金、同銀、23金、まで7手。

上部に逃げられそうだけど、実は逃がしても角の後ろの利きで捕まるので気にせず尻金でよい。そしてそれを2回繰り返す。打った金を21金とすり寄る味が良いでしょう。

2025年3月 短13 井上徹

41角、21玉、29香、23桂、同香不成、31玉、42銀成、同玉、
52角成、32玉、24桂、23玉、41馬、22玉、32馬、13玉、
12桂成、同玉、13歩、同玉、14飛、まで21手。

1段玉に香を9段目に打つ最長最遠打。ロジックは山程あるけど、作意で9段目まで追うのはできれば避けたいもの。すると応手の限定と作意設定が存外難しい。使用駒8枚から清涼詰。創作でもあり発見でもあり、うらやま。

権利を買い取って自分の作品集に載せたい作品 2025年2月

2025年2月 山田康平

39香、26玉、36馬、17玉、47飛成、28玉、55角、39玉、
66角、28玉、17龍、同玉、39角、同龍、27馬、まで15手。

収束5手からの逆算だろうか。邪魔駒の39香を置いて、原型消去の4手を追加。さらに香を打つ序をつけた。詰め上がりに残る攻方の駒も増えてないし、完璧では。

この作品が発表された月の高校は、なぜか邪魔駒の原型消去作品が並んでいて、そのどれもいい作品だった。

2025年2月 齋藤光寿

26銀引、同と、27桂、同と、16歩、14玉、15歩、同玉、
26馬、同と、27桂、同と、16歩、25玉、34龍、まで15手。

35銀を直接消去、14銀を間接消去、44馬を直接消去。間に挟まる桂捨てがいいリズムを作っている。消す順番の限定も上手い。自分なら33はと金にしそう。

2025年2月 芹田修

32銀、34玉、25銀、同飛、26桂、同飛、23銀不成、43玉、
35桂、同角、44角成、同玉、36桂、同飛、34銀成、同玉、
33龍、まで17手。

収束で36桂を打ちたいので、36銀が邪魔ということなんだけど、この銀が邪魔駒ヅラしてないところが良い。

ただ、山田作に比べると齋藤作、芹田作は作家性が出ていて天然物というよりは創作物の印象がある。今回の買い取りは山田作のみ。

権利を買い取って自分の作品集に載せたい作品 2025年1月

詰パラを読んでいると、たまに「同じアイデアさえあれば、誰が作ってもこうなっただろう」と言いたくなるほど高い完成度の、お手本のような詰将棋に出会うことがある。もちろんそのアイデアを思いついて図化した作者がすごいのだけど、誰が作ってもこうなるのに作者が自分じゃないのが悔しい。そんな気持ちにもなる。天然の大粒真珠ならお金で買い取ることもできるが、詰将棋ではそうもいかないので、せめてここで我が物顔で紹介したい。

2025年1月 原田清実

32銀、同玉、33歩成、21玉、24香、23角、31桂成、同玉、
23と、33金、22角、41玉、32と、同金、同香成、同玉、
33金、41玉、31角成、同玉、22香成、41玉、32金、まで23手。

1段目の玉に香で王手して、3段目に中合するのは「よくある手」だろう。それが角合でも金合でも既視感の塊だけど、2回繰り返すことで一躍新作と化した。これを趣向的に何回も繰り返した大作も過去にあったと思うけど、2回に留めて角捨てでさっぱり収束させたところも潔い。使用駒9枚、小駒図式。快調。