書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

いまさら今月の詰パラの感想

11月12月と転職で慌ただしく過ごしていたせいで、詰将棋からも離れてしまっていたけれど、ようやく落ち着いた日々を取り戻してきました。 久々にブログを書いたせいで文体が敬体です。

今月の詰パラはなんといっても短コンの衝突でしょうか。

一ヶ月も前の話題なので何をいまさらという感じですが、しかしよく似ているとはいえ初形が違う以上は手順も違う可能性はあるので、解答募集期間中は「ほとんど同じ」という指摘すらタブーなのではないかとTwitterのタイムラインを見ながら内心思っていました。それにしてもまあほとんど同じですが。

聞くところによると作者の2人はどちらもシード権を持っているそうです。 しかし今回の作品で次回のシード権が取れるとも思えません。

それはおそらく作者も承知の上。 シード権を捨ててでも採用確定の場で発表しておきたかった小品なのでしょう。 この好形、早く発表しないと誰かに先を越されちゃいそうですもんね。

二歩のある風景

将棋連盟のサイトには二歩についてこう書かれている。

同じ筋に歩がある時に、もう一枚歩を打つことはできません。 下の図の左側のように同じ筋に歩が二枚ある状態を「二歩(にふ)」といいます。

同じ筋に歩が二枚ある状態を二歩と呼ぶのは異論の無いところだが、反則の内容については「歩を打つことはできません」と書いてあるのみで、駒を打たずに二歩に至った場合については言及されていない。

指将棋で二歩が発生するとしたら、打ったときしかないのでそれで問題ないのかもしれない。 しかし詰将棋では歩を打ってないのに二歩という局面がありえる。

2012年3月 中13 中出慶一氏作

初形二歩である。結果稿では「不正図」を理由に入選取り消しにされてしまっていた。

不正とはなんだろう。 将棋には必ず攻方王がいるので、単玉の作品ももしかしたら不正図なのかもしれない。 双玉の場合も不可能局面のことまで考えだすと闇は深い。

初形打歩詰はどうだろう

当然先手番である。14の歩は突いた歩ではないので、打歩詰局面だが、初形なので反則はとられないものとする(え?)

ここで例えば33歩成とすると、打った歩で詰んでいるので打歩詰の反則をとられる(え?)

そこで作意は16金と打歩詰を打開して14玉、25金右以下の9手詰である(え?)

しかし初形で反則をとられないとすると、後手玉が22あたりから13玉と突っ込んできた可能性もあるので、これを打歩詰局面と呼ぶのは難しそうだ。

閑話休題

二歩を打ってはいけないというのがルールだ。 初形で二歩の場合も、さかのぼればどこかで歩を打ったはずなので、不正図。 まあ、理解できる。わざわざ初形二歩の作品を手がけようとも思わない。

ところでフェアリーの一部ルールなら歩を打たずに(移動させて)二歩を発生させることができるはずだが、それは禁手扱いされているのだろうか。

将棋世界11月号付録詰め手筋サプリII No.26

えび研で将棋世界11月号付録の詰将棋が妙に解きづらいと話題になっていた。 書店にはもう12月号が並んでいるので図面を載せてしまおう。

2015年10月 児玉孝一氏作

答えを明かせばなんてことのない9手詰だが、詰将棋慣れしている人ほど解きにくいかもしれない。

答えを知りたい方はマイナビのサイトでバックナンバーをどうぞ。 アフィリエイトではないので、ここから買われても私は一銭の得にもなりません。 (私は買いました)

book.mynavi.jp

ちなみに何が一番の驚きだったかというと、某同人目前若手作家が作者を知らなかったことです。ジェネレーションギャップ。

私の創作法(2)

冬眠する前、盤面5x5以内の最長手数記録作は103手だった。

塩野入清一氏作

コンパクトな初形から歩香の持駒変換を4回繰り返す好作だが、これが5x5の最長と言われるとしっくりこない。 盤面にはまだ余裕があるし、持駒変換も歩香とくれば桂までいけそうなものだ。 作例は挙げられないが、四歩を四香を中継して四桂に変換する作品はどこかで見た記憶がある。近代将棋図式精選かもしれない。

そこで香桂の持駒変換を入れることを考えた。 何も考えず繰り返しても4枚のうち1枚は品切れで桂に変わるが、2枚目以降は戻ってきた香を合駒されて千日手になってしまう。 攻方が桂を1枚手に入れると、その後は桂合をし続けないといけない論理が必要だ。

その構図は意外と簡単に見つかった。 なにせ5x5の中でつくらないといけないので、できることも限られているのだ。

仮想図・仮想作意

香が品切れになり、やむなく桂合したところ。 ここから14香、同玉、12龍、13飛、26桂!、同銀、13龍、同玉、11飛としたときに

24への利きが無くなっているので香合に戻すと23歩成から詰んでしまう。 したがって玉方は24に利かせるために、ここからは桂合をし続けなければならない。 攻方に持駒がたくさんあると収束をつけるのが大変なので、ここで1枚消費できたのも作家的にはおいしいところだ。

とは言えここからが大変で、長手数記録のためにはこのあと桂3まで持駒変換を繰り返す必要がある。 香3、香2桂1、香1桂2では詰まず、桂3のときのみ詰む形を見つけなければならないのだ。 5x5の構図に収めたまま。しかも飛合限定のために金は4枚配置しなければならない気配が濃厚になってしまっている。

構図を上下左右に平行移動させたり配置駒を少し変えたりして、いろいろと模索したが余詰や早詰に悩まされ、完全作は一向に見つからないままついに詰将棋自体から離れてしまった。

数年後、久々に創作を再開すると、今度はあっけなく収束が見つかってしまうのだから不思議なものだ。

下図は収束の入口。

ここで作意は54桂だが、先に62飛成と突っ込むと52銀が限定合で、以下54桂、41玉、53桂、同銀で逃れている。

この二桂持った一間龍に銀合で逃れる図は、20年前くらい、将棋初心者の頃(今でも初心者みたいなもんだけど)に読んだ入門書にもたまたま載っていたことを覚えている。 こういう偶然に作図が助けられると、詰将棋の神様の存在を信じてみたくなるものだ。

当初は2手長い下記の図を完成としていたが、TETSUさんから完全石垣の方がよいとアドバイスをもらい削った。

手数の話は抜きにしても、こちらの図だと序盤の55龍が駒取りにならないので、作者としては地味ながらそこが気に入っている。 せめてそれを活かしたまま完全石垣にできたらよかったのだが。

11月1日の私的三大将棋まつり

今日はいろんなところで将棋まつりが開かれていたので巡ってきた。

ひとつめは筑駒の文化祭。

自分が在籍していた頃は中学将棋同好会しかなかったのだが、その後おそらく1回潰れたあとに再開して、どうやら今では中高で部にまで昇格したらしい。 潰れかけの同好会しか無かったおかげで、私は指将棋ではなく詰将棋(ひとり遊び)にのめり込むことになったのだ。 囲碁でははるか昔から強豪校なので、将棋にも頑張ってほしい。

黒板に詰将棋が掲示されていた。右図は有名な7手詰である。 作者不明とあるのでお節介にもチョークを取って「南倫夫氏作」と書いたら、部員に見つかり怒られた。

怒られたのは嘘で話しかけられただけだが、聞いたらその方も詰将棋をやるらしい。 スマホ詰パラに作品を出していると言うので、作家名を聞いたところ「鈴川が知ってますよ」とのこと。 筑駒OBで現東大将棋部の方らしい。将棋界は狭い。

部誌の最初の記事が「安南将棋超入門」なのはマニアックすぎると思った。

ふたつめは神田古本まつり

の、ついでにアカシヤ書店に行ってきた。 詰将棋デパートの設立号や久保さんの初入選号などを買おうと思っていたのだが、今は詰パラバックナンバーは1年ごとのまとめ売りしかしていないらしい。残念。

みっつめは天童将棋駒祭り。

定価2万5千円のわけあり駒(経年劣化でシミがついている)が1万円で売っていたので、どうせ自分で使ってても汚すわと思ってそれを買おうとしたら、 横から駒職人の方が出てきて「それよりこっちの方がよい」と言うので言われるがままに1万5千円のこれもわけありの駒を買った。

家に盤が無いので、今のところ使えていない。

詰パラ11月号の第一印象

2ヶ月前くらいに投稿した作品が高校で出題されていてびっくりした。採用が早い。 (同時に投稿した7手は先月の小学校で出題されていたのでもっと早いんだけど)

そのおかげで2015年下半期は毎月どこかのコーナーで自作が出題されていたことになる。 12月号も抽選に漏れなければ短コンに載るはずだがどうなることやら。

先日の詰工房の二次会で石黒さんから「いただき妥協作家」の称号を授かったが、今月の高校でも早速いただき妥協作が解説されている。いただいたのは若島さんの壁になる合駒、妥協したのは頭4手。

不可解なのは「全詰連の頁」。連絡が無いときは個人的な話が書かれるという驚きはさておき、「流石にD級からの挑戦はありえない」の部分がよく分からなかった。そもそも詰将棋順位戦のシステムを分かってないのだが、D級からの挑戦はなぜありえないのだろう。さらに提出締切が看寿賞と重なって大変というのもよく分からず。順位戦は短コンや握り詰めと違って1年前から準備できるような気が。(短コンも手数を予想すればできるけど)

大学院は安武さんが今月で退任。「後任は私が安心してお願いできる若手実力作家」とあるので、一瞬私のことかと思ったが依頼を受けていないのでどうやら違うらしい。引き受けていたら私が若手実力作家なことがばれるところだったのである。

ところで今月号とは関係ないが、たまたま読んだ2012年9月号で田口さんが「流石に4年後は担当は……」と書いているのを見つけた。もしかして大学院やデパートに続いて表紙も今年いっぱいで担当交代するのだろうか。

妙手感のある単なる手数延ばし

ツメガエルさんのブログで自作が取り上げられた。

「単なる手数伸ばしだと思われると、妙手感が薄れてしまうので、手数伸ばしと思われない対策が必要になる」と書いてある。

7月発表の自作は玉方の応手の結果、攻方に余計に駒が渡っているので、単なる手数延ばし以上の意味がある。つまり妙手性が高まっている。 と、好意的に評価していただいているのだが、詰将棋なんていうひねた趣味をもつ天邪鬼な私はこれを読んでこう思った。

単なる手数延ばしだと本当に妙手感が薄れるのか。

そこで単なる手数延ばしなのに妙手感のある手順というのを考えることにする。 すぐに思いついたのは次のパターン。

2015年7月 山路大輔氏作

34馬、11玉、61龍、21香、同龍、同玉、61龍、31飛、
25香、23桂、同香不成、12玉、22香成、同玉、33と、同飛、
14桂、32玉、52龍、42桂、22桂成、同玉、42龍、32飛、
12馬、同玉、32龍、22金、14飛、13桂、24桂、11玉、
13飛成、同金、23桂、同金、12龍、
まで37手詰

作品の本質と関係ない話で引用してしまって申し訳ない。取り上げたいのは9手目25香と打ったところ。

ここで22桂合とすると同香成、同玉で作意に2手早く短絡する。 23桂合と中合すれば、同香生、12玉、22香成で2手稼げるというわけだ。

桂をタダで渡すので、妙手感があるといえばある(かもしれない)。

ヤケクソ中合 - Wikipedia

19香、18桂成、同香、25玉、26金、24玉、36桂、
まで7手詰

2手目25玉と逃げると26金と桂を取られて作意に短絡するので、どうせ取られる26桂を18桂成と捨てることで2手稼いでいる。

ヤケクソ中合自体が陳腐な手筋(?)なので、今となっては妙手感はあまり感じられないが(新出当時は不明)ところがこれを繰り返すと途端に創意が出てくる。

それで思い出した作品が、偶然なのか必然なのかは分からないがツメガエルさんの作品だった。しかも初入選作! (はじめ手順だけ思い出して作者名が思い出せなかったのを岡村さんに教えていただいた)

2010年12月 やさ院1

99角、77歩成、同角、66歩、同角、55歩、同角、44歩、
同角、33歩、同角上成、同桂、同角成、21玉、43馬、11玉、
44馬、21玉、54馬、11玉、55馬、21玉、65馬、11玉、
66馬、21玉、76馬、11玉、77馬、21玉、87馬、11玉、
77馬、21玉、76馬、11玉、66馬、21玉、65馬、11玉、
55馬、21玉、54馬、11玉、44馬、21玉、33桂、31玉、
32歩、42玉、43歩、51玉、52歩、61玉、62歩、71玉、
72歩、81玉、82歩、91玉、92歩、同玉、93歩、同玉、
66馬、92玉、65馬、91玉、81歩成、同玉、82桂成、同玉、
83桂成、91玉、92成桂、
まで75手詰

初手99角に33歩合とすると、同角、同桂、同角成、21玉で以下作意同様の馬鋸に入り、43から87まで並んでいる歩を馬鋸が拾うことになる。

ところが、初手99角に77歩、同角、66歩、同角と1枚ずつ捨てていけば、それぞれがヤケクソ中合になっていて1枚につき2手、合計8手稼げるというわけだ。

加えてこの作品が面白いのは、87の歩はヤケクソ中合せずに残さないといけないところで、馬鋸から一番遠い歩だけは残しておかないと、馬鋸の手順をカットされてしまう。87の歩を残すこと自体が26手の手数延ばしになっているとも言えよう。

これを「妙手感がある」と言うと、また主観の問題になってしまうので難しいが、少なくともただの手数延ばしでも、まだまだ面白いことはできそうだ。