書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

第2回 詰将棋サイコロトーク 私のバカせまい史編

前回の続きです。

いのてつさんの発想法について、せっかくなのでこの作品についても教えてください。


2011年3月 井上徹也

龍追いしながら受方の置き駒を剥がしていく作品。初形で62に歩があるが、龍追いを1周すると72に歩が移る。もう1周すると62に戻る。72歩のときしか駒が剥がせないので、駒を1枚剥がすのに2周必要となる。2分の1手龍追いとか微分龍追いとか呼ばれている構造。

8筋9筋の追い方がまず珍しいですよね。
そうですね。
さらに微分龍追いもしていて、どうやって思いつくんですか。
それは完全に駒の軌跡から思いついたんですよね。左側を龍鋸で追っていく部分が思いついて、回転龍追いで趣向作にできないかなっていうのが始まりでしたね。で、追っていくと72歩62歩の切り替えは必然というか、他に追い方があまりないんですよね。
72歩62歩が切り替わるようなのを作ろうと思って作ってるわけじゃないんだ。
これは全然そうじゃなくて、駒のイメージから作ってるんですよ。趣向作って2パターンあって、この構造を作ろうっていう言葉から作る場合と、駒のイメージから作る場合があって、この作品は龍鋸の軌跡から作りました。
後付け微分なんですね。
きょういち意外でした。実は72歩62歩みたいに歩の位置が切り替わるのは、最小公倍数作るとき最初に考えてたんです。でも龍追いがうまく繋がらなくて結局諦めたんです。切り替わるロジック自体は作ったんだけど、うまく龍追いに接続しなくて。


2016年11月 久保紀貴 LCM

龍追いを繰り返す意味付けは置き駒消去になるんですけど、単純に取っていくだけじゃつまんないなとも思ったんで、もっと回転たくさん増やせたら面白いよなあっていうので、ひねりだしたのが72歩62歩の違いで歩を取れる取れないの仕組みなんですよね。
でもあの作品のテーマはあそこですよね。そうはいっても。
テーマはあそこプラス新しい龍追いの手順。どっちかではない合わせ技です。
そこもあるんだ。
趣向作も構想作と同じで背景を知ってないとなかなか見えてこない部分もありますよね。龍追いを見たときにこれは新しいよねってなるのは背景を知ってるからなんですよね。そういう見え方がなかなかパンピーにはできない。詰将棋に限らずですけど。
知識もだし、作ったことがないと分からないこともありますね。添川さんの阿吽は龍追いの軌跡自体は普通なんですよ。


2008年11月 添川公司 阿吽

1周ごとに48歩と49歩の位置が切り替わる。49歩のときだけ桂が手に入るので、1枚の桂を手に入れるのに2周かかる。初の2分の1手龍追いとされる作品。

私なんかは2分の1持駒変換なんだなあとしか思わない。こういう作品では龍追いは手段だと思っていて、阿吽の龍追いが類型的なのは気にならないです。

長編も面白いっすね。
長編面白いとは思うんですけど、作るにも見るにもカロリー消費するんですよ。
見るのも?
詰パラがkifファイルで読めるならまだ読みやすいんだけど。頭のなかで並ばないし、盤に並べるにも駒が多いし。私が長編やらないのは、中高生の頃に頭の中でパラ読んでると大学院だけ並ばないから読まなかったんです。
え、読みもしないんんですか。
上っ面だけ読んでるというか。手順は1回も並べてないです。だから長編やってないんですけど、見ると面白いんですよ。
創作のカロリーも高いですけどね。
大崎さんは並べてました?
盤駒で並べてはないですけど、最初から結構好きでしたね。
頭の中で並べて?
そういう意味では並べきれてないんで、ロジックを読んでるんでしょうね。看寿賞作品集を初めて読んだときは赤兎馬でめちゃくちゃ感動しました。
私の知識レベルでは赤兎馬と言われてもどんな作品か分かりません。
え、ご存じない?
名前は知ってます。馬鋸関係ですよね。
赤兎馬っていうくらいだからね。複合馬鋸で超長編をつくった最初みたいな作品です。


1979年7月 山崎隆 赤兎馬

前に馬屋原さんにも言ったんですけど、超長編の歴史を紐解く本が欲しいです。2017年の全国大会の前夜祭で連続合の作品を過去から見ていったときに思ったんですよ。ああいう見方をするのが一番分かる。この作品はこういうところで歴史を前に進めたんだ。じゃあ次は何を作らないといけないんだ。っていう話になるんですよ。
それ面白いですね。
でもこれができる人って相当限られてるはずで、それこそいのてつさんとか馬屋原さんが書いてくれないと成立しない企画だとは思うんです。この本があったら私ももうちょっと長編いけると思います。
鑑賞する上でもそういう本があるといいよね
構想作って歴史が新しいというか、そんなに昔から段階的に進化していった感じでもないじゃないですか。今思えば。
んー?森田手筋の歴史とか長いは長いですよ。
森田手筋の歴史っていったときにそんないっぱいあるのかな。そんなバリエーションに飛んでる気しないですよ。
不利合の歴史も語ったら長いでしょう。
所詮昔やられてたのは普通の不利合じゃんって感じになりそうだけどなあ。
久保さんが不利合に詳しいからだいたい同じに見えてるっていうのもあるんじゃないですか。
詳しい方が細かい違いは分かりますよ。

それぞれどれくらいの分量になるか分からないけど長編の歴史もほしいし構想作の歴史もほしいな。
プロパラから著者いのてつさんで。
難しいのは例えば複合馬鋸も構造は同じだけど趣向は違うっていうのもあるし。
全部は触れなくてよくて、これは歴史にインパクトに与えたんだとか、これがあって次の作品に繋がってるんだみたいなのを、繋げたらそれでいいんじゃないですか。この作品はここが良くてとか言い始めると大変だけど、すべての作品にいいところがあるのは前提として、その中からかいつまんで。
ひとつ書いてみたいなと思ったのは、再帰趣向の歴史というか仕組みは一度どこかで整理したいなと思ってます。
そういう狭いので全然いいと思います。

いのてつさんが最近発表した飛車と歩の再帰連取り。あれはまだ系譜に乗ってるんで理解はしやすいんですけど、合駒を飛ではなく角にして馬で追って途中で歩を取ればいいって、こんこんと考えてたどり着くんですか?
最初に並び歩の再帰連取りを馬鋸で実現したらどんな手順になるんだろうなっていうのを言葉で思いついたんですよね。
じゃあ最初は天月舞型でもなかったんですか。
形は天月舞型でした。それで成立する条件を整理していくと、飛車に角合は出るんでしょう。で、馬鋸でいったら飛合をするんでしょうっていうのはなんとなく分かってくるんですけど、そのあとどういう趣向手順でいくのか、どこに馬鋸を置くのかっていうのが分からなくて悩んだんですよね。そもそも中合で連取りさせるっていうのが大変なんですよ。
アルカナ型の方が簡単ってことですか?
そうそう。
前提知識で語られるとついていけないんですけど。
有名作しか出てきてませんよ。
アルカナは分かるんだけど、アルカナを構造的に理解してないんです。アルカナの私の理解は再帰連取り。終わり。
1号局の天月舞を見てみますか。この趣向作るのいろいろ大変なんですよ。

まだ続きます。