書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

為せば成る短編コンクール

のんびり会で久保さんに面白いことを教えてもらった。 深和さんと香の成らせが衝突することは想定内だったというのだ。(ほぼ同一図で衝突するとは、さすがに思ってなかったらしいけど)

久保さんによれば深和さんは過去にも短コンで成らせをテーマにした作品を何度か発表したことがあるのだそうだ。

確認してみよう。手元にある2008年以降の詰パラで、深和さんが短コンに出品したのは以下の4作。

2009年12月 短コン8位 深和敬斗氏作

17香、16飛、15歩、13玉、46馬、同飛、14歩、
まで7手詰

時系列に並べたら、のっけから7手の合駒動かしで話が違うのだが、これはこれでいい作品。

あとで取られないためのひも付き移動合という、ただそれだけでは地味な狙いにアンピンを混ぜ、詰め上がり突歩で軽やかにまとめたところがおしゃれだ。飛車を取ると打歩詰で逃れる作意との対比にも注目したい。これが入選4作目。まじすか。

2011年12月 短コン10位 深和敬斗氏作

37金、同桂成、47銀、同成桂、46金、同成桂、45銀、同成桂、
37金、
まで9手詰

お待たせしました桂の成らせ。 作意だけ見れば絶対手の連続なんだけど、雑味や嫌味が無いところがいい。 ストレート。原型成らせのお手本みたいな作品で七色図式のおまけつき。

2013年12月 短コン22位 深和敬斗氏作

86銀、87桂、同飛、36玉、48桂、35玉、37飛、同桂成、
24銀不成、
まで9手詰

合駒動かしでも、成らせでもない。そのせいか順位も少し落ちてしまった。 構想としては、どこに動いても中合されて邪魔になる77銀を、せめて使いみちのある桂合と刺し違えるために86に限定移動する初手。 さすがにそっぽとは言わないかな。 飛車も捨てて悪くない仕上げのはずだけど、短編で合駒を取る展開は評点が伸びづらいのかもしれない。 48桂が28からは打てないのも地味ながら上手い。

2014年12月 短コン6位 深和敬斗氏作

38銀、同銀不成、27金、同銀不成、36金、同銀成、27金、同成銀、
38金、同成銀、27飛、
まで11手詰

銀の成らせ。 28飛がぶらなので、桂の成らせとは違って綱渡り的な手順になっている。 9手の素材に短コンに合わせて2手逆算だろうか。しかしこの逆算も秀逸。 不成の回数が増えたのはもちろん、2手目と6手目で28玉の変化が別の詰め手順になるのは気が利いている。

2015年12月 短コン 深和敬斗氏作

28金、同香成、27金、同成香、26銀、同成香、28金、
まで7手詰

桂、銀ときたので、ついに香の成らせ。これを久保さんは予想していたというわけ。

予想した上で、そこに同じ香の成らせをぶつけていったら、ほぼ完全衝突してしまったということらしい。 かすかに配置が違うので、点数も変わるのではないかと見ているが、はたしてどちらの作品が評価されるのか。

ちなみに久保さんの作品はこちら。

2015年12月 短コン 久保紀貴氏作

こちらの図には初手18金の紛れがある。 以下同玉、29金、同香成、27銀、19玉、18金、同香で逃れるために、この図の16は香でないといけないのだが、実は深和さんの図では初手18金の紛れが無いので16は歩でもよい。

作家的には見た目の統一感のために香を並べたいので、18金の紛れを残して16が香である必然性を用意した久保さんの図の方が妥当に思える。

ただ、実は2011年の深和さんの桂成らせの作品も、歩でいいところを香にしての七色図式だったので、今回も配置に何か意図があったのかもしれない。はたして深和さんの思惑とは。次回に続く。かも。