2015年7月 中21 千葉豊幸氏作
23角、同龍、57桂、46玉、47銀、同と、24角、同龍、 58桂、同と、37飛成、 まで11手詰
この作品が前期の最高点2.85。 自分も結果稿を見た瞬間に面白いと思ったので、半期賞と予想する。
遠くから打てる角を、あえて一路近づけた限定打2回で玉方龍を1マスずつ運ぶ手順のユーモラスさ。 担当が「高評価を得る作品とも思えなかった」と書いたことには驚いた。
23角、同龍、57桂、46玉、47銀、同と、24角、同龍、 58桂、同と、37飛成、 まで11手詰
この作品が前期の最高点2.85。 自分も結果稿を見た瞬間に面白いと思ったので、半期賞と予想する。
遠くから打てる角を、あえて一路近づけた限定打2回で玉方龍を1マスずつ運ぶ手順のユーモラスさ。 担当が「高評価を得る作品とも思えなかった」と書いたことには驚いた。
前期の小学校で2.7を超えたのは5手詰の作品2つだけ。
34馬、43飛、73桂成、同飛、61馬、 まで5手詰
55香、62玉、66香、同馬、26馬、 まで5手詰
鈴川作が2.74で、石川作が2.73。
奇しくもこの2作は3手5手特集(と担当が書いたわけではないが)の号で同時に出題された。 7手と並ぶと5手はどうしても見劣りするので、そういった形で出題された方が点数も伸びやすいのかもしれない。
しかし鈴川作には90度回転させた岡村作が、佐藤作にはほとんど同じ5手の先行作があり、それで半期賞というのも個人的には違和感がある。
見返すと小学校は豊作だったように思う。
69角、24玉、28龍、同馬、44龍、同銀、34銀成、 まで7手詰
邪魔にならないところに遠開き。何よりその後の大駒捨てが手馴れている。2.48。
47銀、同桂成、37銀、同成桂、27銀、同成桂、47銀、 まで7手詰
初手27銀は同桂生が逆王手。そこで47銀から遠回りして27成桂を実現する。これもある意味「成らせ」だろうか。2.40。
39角、55玉、45飛、 まで3手詰
なんとなく左上に飛び出したくなるところ。17角を狙っての39角は気付かない。2.41。
54馬、26玉、35龍、同玉、36金、 まで5手詰
どうやっても逃げられそうなところ、馬そっぽでぴったりつかまっている。盲点に入ったのは実は3手目かもしれない。2.56。
いい加減引用しすぎだが、いい作品だらけなので仕方ない。
49飛、56玉、45角、同龍、66馬、 まで5手詰
この手の飛車の遠開きはよく見る筋ではあるが、この駒数と手数でまとめて、角の短打も入れたところに価値がある。 歴史に残すために本作が半期賞でどうだろう。2.53。
39香、24玉、27龍、14玉、47角、同龍、32馬、 まで7手詰
邪魔にならないという点で小3武島作の遠開きと通ずるところがある。 遠打は遠開きと違って中合の変化処理をしなければならないが、本作はうまく処理してある。2.63。
@sasikake それから、距離も重要な要素かと思います。
— べろ出しイキロン (@ikiron) February 12, 2016
例えば一号局では18の他に16、17の2箇所の選択肢があり、3つからあえてこの位置を選ぶ構成になっています。中学のはもっと多い選択肢からあえて44地点を。この意味で移動合にしたのはマイナスですが、前後との兼ね合い?
イキロンさんには前にも指摘されたのに、うっかり忘れていた。
狙いの取らせ合駒を打つ局面で、合駒を打つ場所は15から18までの4択になっている。 そこからよりによって唯一取られる18に打つ取らせ合駒。妙手姓が高い。
さらに自己ブロックでは74から34までの5択から44を選択している。
この場合、どこに合駒しても同じような未来が待ち受けていないとならないが、その点で84飛、94龍という構造は上手い。 どこに合駒しても同飛、同龍で取り返せる形だからだ。合駒の位置だけが問題になっており、44馬のときだけ、それが退路を塞いで打歩詰になる。
「この意味で移動合にしたのはマイナスですが」というイキロンさんの指摘も正鵠で、合駒の位置が問題なのに74や64には馬合ができないことを指摘している。 2手進んだ局面からであれば44角打合にできるので、はじめの2手の馬そっぽを入れておきたかったということだろうか。
@ikiron @sasikake ほかの選択肢が一箇所だけの場合、消極的な意味付けになりやすいです。「取らせる」という目的をより強調するために選択肢を多くしていますが、これは「大きく見せる」という表現上の効果をも生んでいると考えています。
— 相馬慎一 (@torus1968) February 12, 2016
http://kakikake.hateblo.jp/entry/2016/02/12/185204
@ikiron @sasikake もちろん移動合にする必要はなかったのですが、純粋に序の付け方の問題でそうしています(つまり、12馬がやりたかった)。
— Problem Paradise (@propara) 2016, 2月 14
大崎さんのブログを読んで。「壁駒発生」や「取らせ合」のテーマが浮かび上がるよう、若島さんはどう表現したかを考えてみて欲しい。
— 相馬慎一 (@torus1968) February 10, 2016
考えてみよう。当たり前だが以下に記することは個人の見解であり、絶対的正解や、若島さんや相馬さんの見解でもない。
19香、24玉、16桂、14玉、24桂、18歩、28飛、69香成、 18飛、24玉、25歩、同玉、15飛、24玉、35馬、同歩、 25歩、34玉、44と、 まで19手詰
まずは取らせ合駒。実はこの作品のテーマの浮かび上がらせ方はわかりやすい(と思っている)。若島さんの一号局は取らせ合駒を取らないのだ。一号局なのに。
6手目。受方が18歩とわざわざ取られる合駒を打った局面。ここで凡百の作家なら18飛から打歩詰に入り、それを打開して詰ますだろう。さらに打開を簡単にするために合駒を桂に変えてしまうかもしれない。(私だ)
ところが作意は28飛!「取らせ合駒」の一号局で、取らせを取らないというひねり。この作意設定によって、取る取らないが作品の争点になっている。
歩を2枚も持つと処理が面倒なところ、収束では再び打歩詰の局面を挟むことで捨駒を入れ、ほぼ最短の収束もテーマを浮かび上がらせるのに役立っているだろう。
12馬、24玉、53と、44馬、同飛、同龍、35角、同玉、 36歩、24玉、23馬、 まで11手詰
自己ブロック(壁駒発生)の合駒の方は少し難しい。
ひとつは12馬や53とといった攻方の打歩詰回避策が序に現れることだろうか。攻方の工夫があるからこそ、返し刀の自己ブロック合駒が映えるという見方だ。 しかし一番肝心なのは主眼手の移動中合(風)だと思う。53とで空けた44を塞ぐように飛び込んでくる馬。
自己ブロックの合駒を完全な中合で実現できるのかどうかは難しい。 取れない意味付けがあれば可能だとは思うが、その意味付けが自己ブロックの純粋さを濁らせる可能性は多いにありえる。
そこで移動中合風合駒。これはあとから見る一部の作家(私だ)にとってはただの合駒なのだが、解いてる人からすると何も利きがないところに突然捨てる中合に見えたことだろう。 このダイナミズムが肝心なのではないか。思えば取らせ合駒の28飛もダイナミックな途中下車だった。
ちなみに移動中合風も打合も紐付きなら同じことだろうと思って作った自作は、鈴川さん(だったかな?)に「龍を近づけるための桂合に見えて不利感がない」と言われた。たしかに。
狙いははっきり大きく示そう。
普通は初手54馬。45桂合、55香、76銀で打歩詰になる。
そこでひねって初手63馬。同様に45桂合なら54香!と馬筋を遮断するのが、いわゆるブルータス手筋。
76銀と飛車を取られたところで、37歩が打てるようになっている。以下は同桂、25龍までの詰み。
45桂合と打つと、それを取歩駒にされてしまう。そこで2手目は45桂合ではなく54桂合が正しい。
これを同馬では初手54馬に比べて桂馬1枚得するがそれでも詰まない。やむなく同香と取る。
この瞬間、ブルータスの局面では45にあった桂が攻方の持駒になっている。 桂を取らせることで取歩駒の発生を抑止する「取らせ合い」である。と作者は思っている。
取歩駒を取らせた効果で76銀に37歩は打歩詰。そこで53香成とすれば、今度は45桂合とするしかない(54桂合は同馬から55馬、56馬と活用する手がある)が、馬の利きが生きているのでやっぱり37歩は打てない。
ここまでが本作の狙いである。以下は収束というか、後片付けなのだが、構想作の収束はテーマになっている詰め上がりを実現するのが一般的な作り方だと思う。(最近は特に?)
どういうことかというと、ここからどうにかして37歩、同桂、25龍で詰め上がらせたいということだ。 となると45桂のピンを外すために、63馬を捨てるほかなく、必然的に森田手筋になってしまう。なってしまうのだ。
以下、48桂、47玉、74馬で馬筋をそらせて
65飛合(このための76銀生限定)、56桂、36玉で元の局面に戻すと、45桂のピンが外れており
37歩、同桂、63馬、同飛、25龍まで。
作者的には打歩詰打開の森田手筋ではなく、打歩詰誘致の、ブルータス回避の54桂取らせ合いが主眼なのだが、解説や短評ではあまり触れてもらえず。打歩詰は難しい。
12馬、24玉、53と、44馬、同飛、同龍、35角、同玉、 36歩、24玉、23馬、 まで11手詰
4手目取れる飛車を取らずに、44馬!と移動合するのが主眼で、玉方自ら44の逃げ場を塞いで打歩詰に持ち込んでいる。
解説には「中合」と書かれていたが、私見では44には94龍のヒモが間接的についており、これは中合にはあたらないと思う。 そこで、44馬は派手な手だが、打合でコンパクトに同じことをやってみようと思い立った。
とりあえずの原理図がこれ。32馬に同金では15歩から詰むので、23合として逃れる。 そしてこの形で、15歩の打歩詰がテーマで、23合ときたら、桂合から森田手筋に持ち込むのはマナーのようなものだろう。 桂合からどうにかして馬を捨てて15歩を打つ収束にしたい。
それには配置がさすがに窮屈だし一間馬への合駒では妙手感も乏しいので、合駒発生時の馬と玉をひとつ離すことにした。 そうして最初に得た図が次。
11桂成、32桂、15歩、13玉、31馬、同飛、14香、23玉、 24歩、同桂、22角成、同玉、12成桂、23玉、13香成、 まで15手詰
馬をどこに置いても初手香打ちがあるので、やむなく初手が香取りになっている。 いかにも妥協案だが、それは実戦型と言い張るつもりで、それより気に食わないのは31馬の駒取りだ。 3手目15歩と1歩損しながら歩香重ね打ちに出たのに、31で歩を拾うんじゃつまらない。 2手目の変化で馬を取る駒と、32桂合を同馬と取ったときに取り返す駒が違うのもテーマから乖離している気がした。
15歩、同玉、12桂成、33桂、16歩、14玉、41馬、同龍、 15香、24玉、25歩、同桂、23角成、同玉、13成桂、24玉、 14成桂、 まで17手詰
1段上げて、1枚増やして、2手逆算した(のでさらに1枚増えた)。主張は左右対称だが、おそらく誰にも気付かれていない。 8手目32歩突きや32桂合が変同なのは解答者的にはすっきりしないところだろう。 取れる馬は取ってよと思うけど、馬を取る取らないがテーマなので、勘ぐりたくなる気持ちも分かる。
発表時、テーマの33桂合より、その後の打開の方に評が集中して、森田手筋の作品と思われてしまった。収束に森田手筋を入れると大駒捨てが入るので、つい使ってしまうのだけど、それが逆に悪目立ちするようだ。
森田手筋は用法用量を守って正しく使わなければならない。次回に続く。
のんびり会の忘年会で糟谷さんに教えてもらった間接打診の先行作は、実はウェブでも公開されている作品で、自分もおそらく15年前くらいに見ていたはずのものだった。 (だけど間接打診からこの作品は思い出せなかった)
22角、33歩、44角、46玉、13角成、37玉、38歩、36玉、 35馬、 まで9手詰
初手、普通に33角と打つと、46玉、13角に35歩合で詰まない。
先のページにはこれを打診中合と書いているが、13が馬でもどのみち35歩合とするしかないので、ただの捨合と見るのが一般的だろうか。 (先月の短コンの志賀作同様?)
作意は初手22角。これに46玉と逃げると13角生と手持ちの角を温存する手があり、
先ほど同様に35歩合は同角生、37玉、38歩、36玉、47角で詰み。 ここで24歩合は文句なしの打診中合で、これを同角成なら35歩合で、同角生なら37玉で詰まない。
しかし24歩は二歩で打てない。ではどうするか。久保作、糟谷作、岡本作を見てきた今ならすぐに分かるだろう。初手22角の瞬間に33歩の間接打診中合だ。
これを同角生と取っても、46玉と逃げられ、24角で成るか成らないかを決めざるをえない。まさに間接打診である。
作意はこれを取らずに44角と重ね、46玉、13角(成生非限定)とした時に、35歩合が打てれば初手33角の紛れと同じように詰まないが、33歩を発生させたおかげでこの局面では35歩合が打てなくなっている。
この33歩の発生による二歩誘致が本作の狙いであり(その狙いの部分で作者自認の大きな欠陥があることは間接打診には関係ないので省略)間接打診はあくまで手段に過ぎない。間接打診のエッセンスを抽出してスポットライトを当てたのは久保作が初と見てよいだろう。
発表年が分からないが、忘年会では岡本さんの作品よりも前と聞いた気がする(記憶が曖昧)もしそうならこの作品が間接打診の一号局ということにはなるのかもしれない。