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書きかけのブログ

詰将棋について書くことがあれば書きます

テーマを浮かび上がらせよう(2)

kakikake.hateblo.jp

イキロンさんには前にも指摘されたのに、うっかり忘れていた。

狙いの取らせ合駒を打つ局面で、合駒を打つ場所は15から18までの4択になっている。 そこからよりによって唯一取られる18に打つ取らせ合駒。妙手姓が高い。

さらに自己ブロックでは74から34までの5択から44を選択している。

この場合、どこに合駒しても同じような未来が待ち受けていないとならないが、その点で84飛、94龍という構造は上手い。 どこに合駒しても同飛、同龍で取り返せる形だからだ。合駒の位置だけが問題になっており、44馬のときだけ、それが退路を塞いで打歩詰になる。

「この意味で移動合にしたのはマイナスですが」というイキロンさんの指摘も正鵠で、合駒の位置が問題なのに74や64には馬合ができないことを指摘している。 2手進んだ局面からであれば44角打合にできるので、はじめの2手の馬そっぽを入れておきたかったということだろうか。

http://kakikake.hateblo.jp/entry/2016/02/12/185204


テーマを浮かび上がらせよう

考えてみよう。当たり前だが以下に記することは個人の見解であり、絶対的正解や、若島さんや相馬さんの見解でもない。

2014年7月 短1 若島正氏作

19香、24玉、16桂、14玉、24桂、18歩、28飛、69香成、
18飛、24玉、25歩、同玉、15飛、24玉、35馬、同歩、
25歩、34玉、44と、
まで19手詰

まずは取らせ合駒。実はこの作品のテーマの浮かび上がらせ方はわかりやすい(と思っている)。若島さんの一号局は取らせ合駒を取らないのだ。一号局なのに。

6手目。受方が18歩とわざわざ取られる合駒を打った局面。ここで凡百の作家なら18飛から打歩詰に入り、それを打開して詰ますだろう。さらに打開を簡単にするために合駒を桂に変えてしまうかもしれない。(私だ)

ところが作意は28飛!「取らせ合駒」の一号局で、取らせを取らないというひねり。この作意設定によって、取る取らないが作品の争点になっている。

歩を2枚も持つと処理が面倒なところ、収束では再び打歩詰の局面を挟むことで捨駒を入れ、ほぼ最短の収束もテーマを浮かび上がらせるのに役立っているだろう。

2015年1月 中5 若島正氏作

12馬、24玉、53と、44馬、同飛、同龍、35角、同玉、
36歩、24玉、23馬、
まで11手詰

自己ブロック(壁駒発生)の合駒の方は少し難しい。

ひとつは12馬や53とといった攻方の打歩詰回避策が序に現れることだろうか。攻方の工夫があるからこそ、返し刀の自己ブロック合駒が映えるという見方だ。 しかし一番肝心なのは主眼手の移動中合(風)だと思う。53とで空けた44を塞ぐように飛び込んでくる馬。

自己ブロックの合駒を完全な中合で実現できるのかどうかは難しい。 取れない意味付けがあれば可能だとは思うが、その意味付けが自己ブロックの純粋さを濁らせる可能性は多いにありえる。

そこで移動中合風合駒。これはあとから見る一部の作家(私だ)にとってはただの合駒なのだが、解いてる人からすると何も利きがないところに突然捨てる中合に見えたことだろう。 このダイナミズムが肝心なのではないか。思えば取らせ合駒の28飛もダイナミックな途中下車だった。

ちなみに移動中合風も打合も紐付きなら同じことだろうと思って作った自作は、鈴川さん(だったかな?)に「龍を近づけるための桂合に見えて不利感がない」と言われた。たしかに。

狙いははっきり大きく示そう。

森田にするつもりじゃなかった

普通は初手54馬。45桂合、55香、76銀で打歩詰になる。

そこでひねって初手63馬。同様に45桂合なら54香!と馬筋を遮断するのが、いわゆるブルータス手筋。

76銀と飛車を取られたところで、37歩が打てるようになっている。以下は同桂、25龍までの詰み。

45桂合と打つと、それを取歩駒にされてしまう。そこで2手目は45桂合ではなく54桂合が正しい。

これを同馬では初手54馬に比べて桂馬1枚得するがそれでも詰まない。やむなく同香と取る。

この瞬間、ブルータスの局面では45にあった桂が攻方の持駒になっている。 桂を取らせることで取歩駒の発生を抑止する「取らせ合い」である。と作者は思っている。

取歩駒を取らせた効果で76銀に37歩は打歩詰。そこで53香成とすれば、今度は45桂合とするしかない(54桂合は同馬から55馬、56馬と活用する手がある)が、馬の利きが生きているのでやっぱり37歩は打てない。

ここまでが本作の狙いである。以下は収束というか、後片付けなのだが、構想作の収束はテーマになっている詰め上がりを実現するのが一般的な作り方だと思う。(最近は特に?)

どういうことかというと、ここからどうにかして37歩、同桂、25龍で詰め上がらせたいということだ。 となると45桂のピンを外すために、63馬を捨てるほかなく、必然的に森田手筋になってしまう。なってしまうのだ。

以下、48桂、47玉、74馬で馬筋をそらせて

65飛合(このための76銀生限定)、56桂、36玉で元の局面に戻すと、45桂のピンが外れており

37歩、同桂、63馬、同飛、25龍まで。

作者的には打歩詰打開の森田手筋ではなく、打歩詰誘致の、ブルータス回避の54桂取らせ合いが主眼なのだが、解説や短評ではあまり触れてもらえず。打歩詰は難しい。

私の創作法(3)

2015年1月 中5 若島正氏作

12馬、24玉、53と、44馬、同飛、同龍、35角、同玉、
36歩、24玉、23馬、
まで11手詰

4手目取れる飛車を取らずに、44馬!と移動合するのが主眼で、玉方自ら44の逃げ場を塞いで打歩詰に持ち込んでいる。

解説には「中合」と書かれていたが、私見では44には94龍のヒモが間接的についており、これは中合にはあたらないと思う。 そこで、44馬は派手な手だが、打合でコンパクトに同じことをやってみようと思い立った。

とりあえずの原理図がこれ。32馬に同金では15歩から詰むので、23合として逃れる。 そしてこの形で、15歩の打歩詰がテーマで、23合ときたら、桂合から森田手筋に持ち込むのはマナーのようなものだろう。 桂合からどうにかして馬を捨てて15歩を打つ収束にしたい。

それには配置がさすがに窮屈だし一間馬への合駒では妙手感も乏しいので、合駒発生時の馬と玉をひとつ離すことにした。 そうして最初に得た図が次。

11桂成、32桂、15歩、13玉、31馬、同飛、14香、23玉、
24歩、同桂、22角成、同玉、12成桂、23玉、13香成、
まで15手詰

馬をどこに置いても初手香打ちがあるので、やむなく初手が香取りになっている。 いかにも妥協案だが、それは実戦型と言い張るつもりで、それより気に食わないのは31馬の駒取りだ。 3手目15歩と1歩損しながら歩香重ね打ちに出たのに、31で歩を拾うんじゃつまらない。 2手目の変化で馬を取る駒と、32桂合を同馬と取ったときに取り返す駒が違うのもテーマから乖離している気がした。

2015年8月 高8 自作

15歩、同玉、12桂成、33桂、16歩、14玉、41馬、同龍、
15香、24玉、25歩、同桂、23角成、同玉、13成桂、24玉、
14成桂、
まで17手詰

1段上げて、1枚増やして、2手逆算した(のでさらに1枚増えた)。主張は左右対称だが、おそらく誰にも気付かれていない。 8手目32歩突きや32桂合が変同なのは解答者的にはすっきりしないところだろう。 取れる馬は取ってよと思うけど、馬を取る取らないがテーマなので、勘ぐりたくなる気持ちも分かる。

発表時、テーマの33桂合より、その後の打開の方に評が集中して、森田手筋の作品と思われてしまった。収束に森田手筋を入れると大駒捨てが入るので、つい使ってしまうのだけど、それが逆に悪目立ちするようだ。

森田手筋は用法用量を守って正しく使わなければならない。次回に続く。

位置エネルギーは落ちてくる(4)

のんびり会の忘年会で糟谷さんに教えてもらった間接打診の先行作は、実はウェブでも公開されている作品で、自分もおそらく15年前くらいに見ていたはずのものだった。 (だけど間接打診からこの作品は思い出せなかった)

発表年不明 青山雁氏作

22角、33歩、44角、46玉、13角成、37玉、38歩、36玉、
35馬、
まで9手詰

初手、普通に33角と打つと、46玉、13角に35歩合で詰まない。

先のページにはこれを打診中合と書いているが、13が馬でもどのみち35歩合とするしかないので、ただの捨合と見るのが一般的だろうか。 (先月の短コンの志賀作同様?

作意は初手22角。これに46玉と逃げると13角生と手持ちの角を温存する手があり、

先ほど同様に35歩合は同角生、37玉、38歩、36玉、47角で詰み。 ここで24歩合は文句なしの打診中合で、これを同角成なら35歩合で、同角生なら37玉で詰まない。

しかし24歩は二歩で打てない。ではどうするか。久保作、糟谷作、岡本作を見てきた今ならすぐに分かるだろう。初手22角の瞬間に33歩の間接打診中合だ。

これを同角生と取っても、46玉と逃げられ、24角で成るか成らないかを決めざるをえない。まさに間接打診である。

作意はこれを取らずに44角と重ね、46玉、13角(成生非限定)とした時に、35歩合が打てれば初手33角の紛れと同じように詰まないが、33歩を発生させたおかげでこの局面では35歩合が打てなくなっている。

この33歩の発生による二歩誘致が本作の狙いであり(その狙いの部分で作者自認の大きな欠陥があることは間接打診には関係ないので省略)間接打診はあくまで手段に過ぎない。間接打診のエッセンスを抽出してスポットライトを当てたのは久保作が初と見てよいだろう。

発表年が分からないが、忘年会では岡本さんの作品よりも前と聞いた気がする(記憶が曖昧)もしそうならこの作品が間接打診の一号局ということにはなるのかもしれない。

位置エネルギーは落ちてくる(3)

1984年8月 岡本眞一郎氏作 修正図

45と、56玉、46と、同玉、43桂成、64歩、同角不成、55歩、
同角、35玉、46銀、36玉、38飛、37歩、同飛、26玉、
44角、16玉、36飛、同角、17歩、25玉、14銀不成、同玉、
13と、25玉、26歩、34玉、35歩、43玉、53角成、
まで31手詰

73の角はあとで62から26のラインでも使いたいので、まず邪魔な44とを消すところから始まる。5手目43桂成の局面。

素直に35玉としてみよう。以下、46銀、36玉、38飛、37歩合、同飛、26玉、62角生。

これは打診中合の頻出形。35歩合は同角生なので、一度44に打診中合を放ち、同角生なら16玉で、同角成なら改めて35歩合を打って不詰だ。

しかしこの局面も例によって44歩が二歩で打てない。ここまでくるともう打診ができずに早く詰んでしまうので、戻って事前に打診しておく必要がありそうだ。再び5手目43桂成。

ここで55歩合という手が見える。これを同角成(または生)と取れば、以下、35玉、46銀、36玉、38飛、37歩合、同飛、26玉、44馬(または角)となり、

先ほどの二歩で打てなかった44歩をあたかも打った(そして先手が53の角でそれを取った)かのような局面に誘導されている。

55歩合を間接打診と呼ぶ人もいるだろう。44の代わりに55で間接的に打診した手になっている。たしかに間接打診だ。 しかし個人的にはこれは間接打診というよりは、効果が現れるまでに時間がかかるだけの直接的な打診中合といった方がしっくりくる。

糟谷作や久保作の間接打診合は三段目に放たれており、それを取った瞬間はまだ成生を確定しなくてよい。 にも関わらず、のちの局面の打診に効いてきているところに間接打診という印象を受けるのだ。

本作は55歩合を取った瞬間に成生が確定するために、間接的というよりは直接的に思えてならない。 (もちろん、55歩合を間接打診と呼ぶ人の感性を否定するものではなく、あくまで個人的な意見だ)

さて、本作、実はまだこれで終わりではない。 先ほどの手順には嘘があって、55歩合を同角成と取ると、以下、35玉、46銀、36玉としたときに、

作意同様の38飛ではなく45馬とする手があって、これは見るからに早い。受方はもうひとつ工夫する必要があるのだ。三度戻って5手目43桂成。

55歩合は同角成で馬をつくられて早詰。ところがその馬をどうにか35まで運べれば、16玉に17歩の打歩詰が解消できずに詰まなくなる。 そこで飛び出すのがもうひとつの打診中合6手目64歩。これは完全に直接的な打診中合だ。

同角成と取れば、55歩合とはせずにそのまま35玉と逃げ、以下作意をなぞって26玉、53馬のときに35歩合で打歩詰に持ち込める。

したがって攻方は64歩合を同角生と取り、のちの53角生を用意するほかないが、続いて55歩合とされると今度は角成では取れなくなっている。

二度の打診中合を直列で繋いだ64歩合、55歩合が、久保作「位置エネルギー」の63歩合、54歩合にリンクしていることに気付くのは容易いだろう。 「位置エネルギー」は岡本作の連続中合を(内容としても配置としても)一段上げた構想になっており、そのおかげで歩を取る手が二つとも角生になっている。 (岡本作の二枚目はただの同角で取るが、久保作は同角生で取る) 先行作に糟谷作があったとはいえ、連続打診中合の一枚目は三段目の可成域で行えると見抜いた久保さんはまさに慧眼。

間接打診の先行作に本作と糟谷作があることは久保さんも認識していた。 ところが年末の忘年会での糟谷さんの指摘により、間接打診を、しかも三段目でやった作品が過去に存在することが判明したのだ。次がたぶん最後。

位置エネルギーは落ちてくる(2)

2011年1月 糟谷祐介氏作

85金、同と、51角不成、62と、85銀、75玉、74飛、同桂、
42角不成、53と、76銀引、66玉、33角不成、44と、同角成、55歩、
同馬、57玉、49桂、同と、46馬、66玉、67銀、75玉、
76歩、84玉、85歩、93玉、94歩、同玉、95馬、同玉、
73馬、94玉、84馬、
まで35手詰

担当の利波さんをして「この作品は今年度の看寿賞、いや詰将棋史上に残る作品であり」と言わしめた力作であり、 にも関わらず看寿賞を取っていない悲運の名作だ。(この年の中編賞は該当なし)

作意は攻方の角生にと金の移動中合を3回繰り返すのだが、まずは最後の移動中合が出る13手目33角生の局面から見ていこう。

ここで素直に55歩合とすると同角生と取られ、以下57玉、49桂、同とに58歩が打てるので早い。 そこで44に打診中合を放ち、同角成と取れば改めて55歩合で打歩詰に持ち込むのが受方の習いある手筋だがあいにく4筋に歩は打てない。 そこで飛び出すのが44との打診移動中合というわけだ。

この局面で移動中合をするために、初形では71にあると金を運んでくるのが受方の責務である。 そこで戻って9手目42角生。

作意は53と。先述の通り、あとで44に移動中合するために受方にとっては必然の手だが、攻方がこれを取れないのは不思議だ。 なぜなら作意ではあとで44との移動中合を同角成と取って44馬の形から収束に入るが、ここで53とを同角成と取って64合から作意に合流して44馬と活用すればほとんど同じ形になるからだ。

当然のことながら53とは同角成でも生でも取れないようにできている。 取ると64金合とされ、64香合とは違って55に利くので作意には合流できず、勢いこれも取るしかないが、以下、同玉、37馬、53玉、43金で62が抜けている。

つまり9手目42角生にいきなり64金は62が塞がっていて詰むが、53と、同角とと金を消してから64金合なら詰まないのだ。 53と移動中合は(あとの打診中合に備えた手でもありながら)直接的には邪魔駒消去の意味付けになっている。

では最初の移動中合の意味付けはどうだったのか。3手目51角生とした局面。

作意は62とだ。しかしこの62とは、あとで邪魔駒になることを私たちは知っている。なぜわざわざ邪魔駒をつくる必要があるのだろう。

仮にここで73歩合としてみる。 すると以下、85銀、75玉、74飛、同桂、76銀上(ここで42角生は、62との邪魔駒が無いのですぐに64金合で詰まない)66玉、33角生で44に打診中合ができない!

戻って62とを同角生と取った場合は以下、73歩合、85銀、75玉、74飛、同桂、76銀上、66玉、44角(成もしくは生)で既に打診された形になっている。

62と移動中合は(53と移動中合と違って)紛れもなく間接打診合だ。

しかし改めてもう一度考えてみよう。62とが間接打診合で、44とが直接打診合だとするならば、攻方はどちらを取ってもいいはずである。 作意はあとで44とを同角成と取るので、であれば62とを同角成と先に態度を決めてしまって、作意に合流してもよいはずだ。

しかしこれも(53とが取れないのと同じように)やはり成立しない。62とを同角成と取ると、73歩合から以下作意同様に進むが最後にその73歩が邪魔になって詰まないのだ。 (私見だが間接打診や高木手筋は最初の合駒を取らないでつくる方が難しいと思う)

62とが取れないのは73歩が発生するから。53とが取れないのは邪魔駒が消えて64金合が成立するから。 そこに44の打診合に向けたと金の連続移動中合が絡み、ただの間接打診の一作品とはいえない複雑な仕上がりになっている。

作者は「王から遠く離れたところで、角がと金と戯れるイメージを具現化しました」と書いており、 手順の具現化のために選んだ手段が、たまたま間接打診だったということのようだ。

間接打診が主題であれば、移動中合を二度も繰り返さず、もっと単純化した図を選んでいただろう。 それに当時はまだ「間接打診」という言葉すらない。

次回は本作よりさらに前の、本作に比べればいくらか素朴な岡本さんの作品を見てみる。