「不利逃避」=「成らせ逃避」or「取らせ逃避」?
じゃあ「打診逃避」ってできる?
— 飼い鼠 (@ikiron) May 18, 2015
このツイートを見て、自分なりの解釈で「打診逃避」をつくろうと思い立った。
打診中合とは可成域にある大駒を中合によって不可成域に引っ張りだして成生を確定させる手だ。 それを逃避で行う。 まずは仮想作意として55玉に対して73角、66玉、84角成(成生の確定)、55玉、73馬という手順を考えた。
当然73馬には再度66玉と逃げる手があるはずで、これに84馬としていては千日手。 繰り返しを避けるために84に玉方の駒を置くことにした。 作家目線では安直だが、解答者目線ではわざわざ駒を取らせる不利逃避にもなるのでおいしい。
適当に駒を並べれば、なんとなくこんな感じだ。
ここから手順が成立して駒余りにならない配置を見つける。
43角、36玉、54角成、25玉、43馬、34桂、同馬、15玉、 14と、同香、25馬、同玉、37桂、15玉、16歩、同玉、 14飛、15歩、18香、17香、28桂、 まで21手詰
素材から原理図になったくらい。11手目25馬と捨てるところで、24馬から25馬とするほとんど余詰があるが、原理図なので気にしない。
この頃は2手目34桂合の割り切りを同角、24玉に23角成で行っているので23を抑える必要があった。 もともと2手目15玉のために14を抑える必要もあるので、駒効率的にここは13金が最適だろうと思っていた。
この図の気に食わないのは収束の緩みではなく、そもそも16歩の打歩詰がテーマなのに打開もせず、全く関係のない手順で詰むことである。
そこで打開させたのが次の図。
73角、66玉、84角成、55玉、73馬、64桂、同馬、45玉、 44と、35玉、47桂、同銀不成、34と、45玉、37桂、同龍、 46歩、同龍、54馬、 まで19手詰
さすがに右辺の駒が多いし、双玉にするほどの構想とも思えない。この図も余詰があるが修正するまでもなく没。
他によい配置が無いか考えていたら、はじめの図の全体を一段下げると打診中合と打診逃避の選択ができることに気付いた。
53角に44桂(48歩があって歩は打てない)と打診中合すれば作意同様だが、37玉、64角成、26玉と打診逃避すれば2手稼げるのだ。少し面白い(まあ、44桂は同角生でも詰んでしまうのだけど)。収束はあいかわらずパッとしないが、余詰は消えている。
ここで2手目35桂合の変化が24角ではなく13角成で詰みになっていることに気付く。13に質駒があれば、実は24を抑える必要は無いのではないか。24を抑えなくてよいなら、15を抑える駒は金である必要は無い。たとえば27桂。
この図は全然詰まないが、こういうイメージだ。
ところで今までの図は必ず持駒3枚を持って収束に入っていた。64桂、35桂合、初形の持ち歩。 駒が増えれば増えるほど収束が長引くのは自明で、特に桂や歩では切れ味も悪くなる。
そこで35桂合を歩合に変えて持ち歩を消す作戦に出た。 桂合限定は二歩禁で簡単だが、歩合限定をどうするかというと四桂配置である。
53角、37玉、64角成、26玉、53馬、35歩、同馬、16玉、 28桂、同龍、17歩、同龍、25馬、 まで13手詰
没にした図から桂捨てで取歩駒の龍を引き寄せる手順はもってきた。 2手目44歩、同角生、35歩は2手変長だが、44歩は無駄合と判断。
逆算は安直に44銀邪魔駒消去でよいだろう。いきなり銀を置くと詰まなくなってしまうので、角も盤上に置いて下図。
35銀、17玉、26銀、同玉、53角不成、37玉、64角成、26玉、 53馬、35歩、同馬、16玉、28桂、同龍、17歩、同龍、 25馬、 まで17手詰
17香は持ち歩にもできるが、19手で中編になってしまう。中身が軽いのでできれば短編で収めたいところだ。 (17が香なのは歩無し図式にするため)いったんはこれを完成図とした。
ところが直後の詰工房で石黒さんに見せたところ、短大手数なら即採用(在庫難)と言われてしまう。 採用が確約されてしまっては、開き直って短大手数でまとめるしかないだろう。
短大手数にするには17香を持ち歩にする必要があるが、その歩は見るからに合駒で出せそうな歩だ。なにせ桂は品切れている。せっかくなのでさらに逆算したい。
例えばこうして
34馬、25歩、同馬、17玉、26馬、同玉。もちろん15角成で潰れているが。
意外とこの逆算が難しく、例えば35馬を12角にしても初手から15飛、26玉、35銀、37玉、64角成、47玉、46馬で詰む。
何がいけないかというと、38に利かせたいだけの49銀が58まで抑えてしまっているのだ。
そこで再び全体を一段上げることにした。
そしてこの構図ならさっきの捨合が入る。
ところがこの図には問題があり、それは43角、36玉、54角成に45歩とする手が成立している。つまり後で43馬に34歩、同馬とするのも、先に54馬に45歩、同馬から34馬とさせるのも同じ。非限定というわけだ。
仕方ないので歩無し図式を諦めて41歩を置くことにしたが、捨合まで逆算したところ、この歩が初手の角の打ち場所を限定させていることに気付いた。
2015年7月 短4 自作
万事うまくいったと思い、これを発表図としたが、うまい話には裏があるもので、2手目の合駒が銀合非限定とは気付かなかった。銀合を消す方が難しいので、捨合で得た歩を16に打つ繰り返しの味は無くなってしまうものの、21歩を置いて修正図としたい。
作意を銀合にすると(歩合と違って)香合や金合を読み飛ばせなくなるので、出題図としても優りそうだ。
33角、24銀、同角成、16玉、25馬、同玉、34銀不成、15玉、 16銀、同玉、25銀、同玉、43角不成、36玉、54角成、25玉、 43馬、34歩、同馬、15玉、27桂、同龍、16歩、同龍、 24馬、 まで25手詰
創作のきっかけになったイキロンさんに見せたところ「38金が残るのが気に食わない」とのこと。厳しい。
38金が残るのが、というのは少し語弊があって、38金と39香の両方が残って重複感があるのが気になったのである。
— 飼い鼠 (@ikiron) 2015, 10月 13