えび研の話題からまたひとつ。
私は割りと安易に攻方王を置く作家だ。パラ10月号に載った作品は2作とも双玉だった。 形が綺麗になるなら逆王手が無くても積極的に双玉を視野に入れてつくるのが最近のトレンドではないかと勝手に思っている。
えび研でも馬屋原さんは双玉容認派だった双玉作を手掛ける作家だった。しかし久保さんと鈴川さんはほとんど攻方王を置かないらしい。
そこでお二人に見せていただいた珍しい双玉作品を紹介したい。なぜか二人とも実戦型だ。
2012年9月 高4 鈴川優希氏作
71角成、23玉、24香、32玉、34龍、41玉、43香、42歩、 同香成、同玉、43歩、41玉、31龍、同玉、53馬、32玉、 42馬、 まで17手詰
枠の外に飛び出す初手が狙いの一手。(解説で体言止め多用しがちというのも、えび研で出た詰将棋あるあるのひとつ)
意味付けは簡単で、4手目12玉と奥に逃げられたときに62龍で詰ませたいので、邪魔にならないところまで避けている。 初手53角成では54歩と中合されてやはり龍が2段目に突っ込めない。
馬のそっぽ移動のあとも歩の限定合(桂合が早く詰むのが当たり前とはいえ上手い)から龍も捨てて、信頼の鈴川印である。そっぽに行った馬がちゃんと帰ってくるのもいい。
双玉の理由は11手目44龍が強力すぎるということらしい。
角合が逆王手で逃れの図
7筋に駒を置けば双玉を使わなくても逃れにできるが、狙いが7筋へのそっぽなので6筋より外に駒を置きたくないのだそうだ。
まったく理解できる。
しかし作者は後にブログで攻方王を消した「改良図」を発表している。
2014年8月 改良図
双玉容認派の私の好みは当然発表図の方だ。
続いて久保さんの双玉。
2008年3月 デパ3 久保紀貴氏作
27香、24桂、23歩、32玉、43馬、31玉、22歩成、同玉、 24香、23桂、同香成、31玉、53馬、42銀、43桂、41玉、 63馬、52銀、53桂、同銀左、31桂成、同玉、53馬、同銀、 32銀、42玉、43と、51玉、41銀成、同玉、32成香、51玉、 42と、同銀、62桂成、 まで35手詰
配置がとっ散らかっているが、駆け出しの頃の作品なので大目に見てほしい。 と、勝手な想像で作者の言葉を代弁してしまうが、きっといまの久保さんなら28歩なんて置かないだろう。
作意は桂中合から、馬を寄せる6手を挟んで再度の桂捨合と、桂馬の時間差連続合。
この2度目の桂合が香に対する成生打診になっているのは、作者の後の活躍の片鱗であろう。 このあとも銀の限定合から馬を消して綺麗な収束。双玉の理由は最後の最後32手目。
作意はここで42とから62桂成で詰みだが、71王が例えば72とでは62桂成から42とという手順前後を超えた余詰が成立してしまう。
結果稿には作者の「双玉の必然性はなく」というコメントが紹介され、担当の岡村さんも「一寸笑える収束だ」と書いている。
本作発表から7年半後。えび研で久保さんの新しい双玉作を見せてもらったが、そちらは逆王手含みで双玉ならではの佳作に仕上がっていたので発表をお楽しみに。