書きかけのブログ

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同人室の金子作の見どころを間違えていた

同人室首位の金子作の評判がよい。

2019年6月 同人室 金子清志作

25飛、36玉、26飛、同玉、48馬、35玉、26馬、同玉、
27馬、35玉、39香、24玉、33銀不成、23玉、38馬、29と、
24歩、34玉、56馬、まで19手。

33銀生に23玉としたところ。

ここで24歩が打歩詰なので、38馬と香の利きを自ら遮ってから歩を打ち、34玉、56馬までの作品だ。38馬と香筋を遮るためには39に香を打つ必要があり、そのため元々39にいる馬が途中で邪魔になるので捨てる作りになっている。

結果稿でこの作品を見たときは、ブルータス手筋の38馬のための39香遠打のための39馬消去という論理の繋がりが面白いんだなと理解した。ところが昨日のうま研で「そもそも38馬という手が面白いんですよ」と指摘され、なるほどと唸った。

どういうことかというと、やはり23玉のこの局面。

普通は攻方の駒は玉に近づいた方が有利だ。だからブルータス手筋で打歩詰を打開するにしても、自然に指すなら36馬とするはずである。ところがここで36馬では29と、24歩、34玉としたときに45馬と作意同様の両王手を仕掛けても同玉とあっけなく取り返されてしまう。つまり、あとで玉に取られないために、馬をあえて遠ざけているのが38馬というわけだ。39香遠打や39馬消去を一旦忘れて、36馬と38馬の対比を見るだけでも確かに面白い。

ここで「近づくと損をするので、あえて遠ざかる手」で思い出したい作品がある。

1986年 第68期塚田賞中編賞 若島正

55角成、33飛、同香不成、22玉、32香成、13玉、23角成、同香、
15飛、14角、22馬、24玉、33馬、13玉、25桂、同香、
14飛、同玉、23角、13玉、12角成、同玉、22馬、まで23手。

初手44角成は33金合と変化され、以下同香生、22玉、23金、11玉、32香成と進んだときに、44飛と初手に成った馬を取られてしまう。ところが初手が55角成ならそこで44歩合、同馬、同飛で1歩稼げるというわけだ。

若島作は馬を飛車でただ取りされないために、金子作は馬を玉で取り返されないために、あえて遠ざかっておくというところに共通点がある。一人で結果稿を漫然と読んでいるだけでは、ここまでの鑑賞には至れなかった。うま研に感謝である。