だいぶ前に書いて放っておいたのを、このままでは出すタイミングが無くなりそうなので、公開しておく。1年前の看寿賞のときの話だ。
「成らせない連合」の括りでいえば馬屋原作の先行作で歴史的な意義も大ですが、やはり仕上がりかなと思います。taskを成立させるのにいっぱいいっぱいな感じです。同時期の後発作にだけ選考委員の言及があるのは不公平だとは思いますが…
— 相馬慎一 (@torus1968) 2016年7月2日
馬屋原さんの二飛連合が成らせないための連続合駒ではないかという指摘が相馬さんからあった。 指摘自体はその後撤回されたのだが、たしかに同じ系譜にあるかもしれないと思ったのでここで改めて広瀬さんの成らせない連合一号局を見てみよう。
2015年3月 広瀬稔氏作
23と、84銀、同飛、74銀、同飛、64銀、同飛、54銀、 同飛、同桂、13と、同玉、24銀、同香、12角成、14玉、 23銀、同と、同馬、同玉、34銀、32玉、33銀成、41玉、 51歩成、同玉、73馬、62銀、42銀打、同金、同成銀、同玉、 64馬、53銀、43歩、51玉、52歩、62玉、73金、52玉、 63金、41玉、42歩成、同銀、同馬、同玉、53銀、41玉、 52金、 まで49手詰
2手目、普通にしたら54歩合だろう。
しかしこれでは13と、同玉、93飛成と1回成るのが好手で、以下、43歩合、12角成、14玉、15馬、同玉、16香、26玉、96龍から詰む。
そこで2手目は84銀合。
これなら13と、同玉に93飛成とすることができない。仕方なく12角成、14玉、15馬、同玉、16香、26玉、96飛と進めてみるが、ここで96が生飛車なので詰まなくなっている。
そこで84銀合は素直に同飛と取る。3段目で飛車を成って、6段目に引く手が常にあるため、玉方は必ず飛車に接して銀を合駒しなければならない。
以下、同飛、64銀合、同飛、54銀合と四連続で銀合を放ち、同飛、同桂から収束である。
これが成らせない連合。では次に馬屋原さんの作品を見てみよう。
2015年11月 馬屋原剛氏作
93角、84飛、同角成、75飛、同馬、46玉、55銀、同玉、 54飛、同玉、44飛、63玉、64馬、62玉、73銀、71玉、 82銀不成、62玉、73馬、53玉、45桂、同角、64馬、62玉、 73銀不成、71玉、41飛成、61桂、同龍、同玉、62歩、71玉、 83桂、81玉、82銀成、 まで35手詰
2手目に66桂合や84歩合とすると、58歩、46玉、82角成とされ、この期に及んで72角が取られたくないと73金合しても
55銀打、36玉、72馬、同金、45角で詰んでしまう(まあ、73金合は取っても詰むけど)
82に馬を作られると、72角を取る筋を防ぐことができなくなるのだ。そこでそもそも82に馬を作らせないことが大事になってくる。2手目84飛合がそれだ。
これなら82角成とできない。しかしこの飛合、普通に同角成と取ると今度は73角成から72馬の筋で角が取れてしまう。そこで玉方の抵抗は続けざまに75飛合。
これで72角を取られずに済む。以下収束。
82や73に角の成駒が発生すると72角を取られてしまうので、成らせない連合のようでもある。しかしそもそも73は馬でいくし、初手が93馬でも作意は成立するはずだ。そこで本作は成らせないための連続合駒ではない。では何か。実はただの「駒を取らせないための連続合駒」なのだ。そしてこれがどうやら新構想らしい。言われてみると単純な話なのだが、シンプル過ぎて逆に誰も気付いてこなかった意味付けかもしれない。
玉の他にも取られてはいけない駒(72角)があるという点で、この意味付けには二玉詰のような雰囲気がある。連続合駒と二玉詰は相性がいいのだ。きっと。前もそんなことを考えていた。