イメージと読みの詰棋観 #2
【問】第6回詰将棋創作キッズチャレンジA部門の課題「両王手が登場する3~9手詰」の最優秀賞に輝いた鈴木蒼大作をどう見ますか。

柳原 最初から持駒に桂があれば29桂~57龍の手順は真っ先に浮かぶような構図である。2手目同香には13龍の残像を見せておき、作意では桂合。よく計算されている。
久保 初手の龍に対して取る変化は金を捨てて角と龍の両王手、作意は龍を捨てて角と金の両王手なんです。作意と変化で2種類の両王手が出てくる。切り分けとして14桂は洒落てますし、手順は満点なんじゃないですか。パラの中学校に出てても、いいっすねってなると思いますよ。作者が武島宏明って書いてあったら、配置はもうちょっと整理できたんじゃないのって言うかもしれないけど。
香の品切れは惜しいですね。自分だったら72金を81馬にして、14合が前に利く駒だったら18に打って、同馬と取っちゃうと71への利きが外れて詰むという感じで作るかな。81馬が27に利いてるから23香も無くせるかも。とはいえ本作は良すぎるんでいじり甲斐がないですね。基本、褒めるところしかないですよ。
藤原 超短編を両王手という課題で作るとき、両王手は何手目にすべきか分かりますか?最終手です。この作品はまずそこをクリアしているのが偉い。どういうことかというと、例えば両王手が初手に来ちゃうと、2手目は玉を動かす手しか無理なんですよ。それは変化を削って1手無駄にしてるようなものなので、応手が存在しない最終手で両王手しないと超短編としての凝縮力に欠けます。
角と玉の間に3枚並んでる形をプロブレムではサードバッテリーと言うんですけど、3枚の駒をどの順番で動かすかで6パターン出せるんですよね。それを全部変化や紛れで出すのがサードバッテリーの究極の目標になります。この作品は初手の捨て方が2択になってて53龍を動かす手がないのが厳しく言うとウィークポイントですね。ただ、初手27金としたときに作意とは違うハーフバッテリーが出てくる。作意と紛れでハーフバッテリーを2通り出したのは良いなと思いました。サードバッテリーの前例には若島さんのフロンティア3番があります。

14桂は相当ひねってますよね。同香では応手を無駄にするだけなので、これは素晴らしいです。ただそれを同龍と取るのは違うような気がしますね。1桁手数で攻方の駒取りは普通やりません。全然無理な話をすると12龍を06に捨てて14桂を動かして13龍の両王手で決めると作意の一貫性は出ますね。9手じゃ収まらないけど。
もう一つ良い点を挙げると、14同龍は俗手で、29桂も捨て駒とはいえ俗手で、連続俗手になっちゃってるんですけど、29桂に26玉と逃げる変化があって、それは23龍という新たな開き方が出てくるんですよ。さらに36玉には34龍がぴったりだし、15玉には26角成がぴったり。この変化の作り方は好きですね。この作品は作意だけを見るんじゃなくて、変化紛れの絡み、作意との対比、全体像を見るべきなんです。
馬屋原 2手目同香には53龍を13に使って、作意は57に使うのが面白いですね。変化にまで気を使うのは意識的にやらないとできないですからね。はじめからサードバッテリーを知っていて作ったのか、間に龍を挟むと龍捨てが出るからやってみたのか。間に挟まってるのをどの駒から移動するのかっていうところで紛れが生まれるんだけど、作者としては余詰との戦いになるから大変ですよ。
配置はもう1枚くらい減りそうな感覚はありますね。開き王手はいろんな可能性がある中で一番意外な場所に移動したいっていうのがあるから、23香の過剰防衛はできれば外したい。とはいえ推敲どうこうよりも龍を縦横無尽に使う発想が非凡なので、そこを評価したいですね。
井上 14桂は面白い狙いだと思うんですけど、ちょっと惜しいなと思うのは、13龍を先に捨てると同香、12龍が両王手にならないという紛れは、作意とも関連してるので入れてほしかったですね。あとは龍を縦に動かす紛れが無いので、それができるとさらに面白くなるんじゃないかなとは思いました。14桂合も角の利きが無い方が疑似中合になって印象が良くなる気がします。